54 燕の空仰ぐこと店畳むこと

 句集「むずかしい平凡」自解その54。

 近所の小さなお菓子屋さんや八百屋さん、洋服屋さんなどが次から次に店を畳んでいる。郊外に大きなスーパーマーケットができてしまった影響でもあるし、そもそももう店を継ぐ人がいないという事情もあるかもしれない。

 ただ、ここ数年どっと店を畳む傾向が強くなっているのは、やっぱり大震災の影響もあるのかなと思う。私の住む近辺は避難者がそのまま生活の拠点にしているケースも多く、じわじわ住民の層が変わってきているという側面もある。いたしかたないことではある。

 とはいえ、ああ、また店を畳んでしまうのか、と思うのは残念なこと。

 ついこのあいだまで燕がやってきて店先に巣を作っていたものを。

 また、今年も燕がやってきた。巣作りの物色をしている。今年はこの店は開かないけれど、どうするんだい。

 そんな気持ちで空を仰ぐ。

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