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50 花辛夷からだの芯にとどく光

 句集「むずかしい平凡」自解その50。

 「辛夷」は「こぶし」と読みます。「花辛夷」とは「こぶしの花」のこと。気候もだんだんに暖かかくなり、梢にぽっと点るように咲き出す春の木の花。好きだなあ、この花。なんともいえない楚々としたたたずまい。しかし、きっぱりとした意思のようなものを、あの白さの中にしっかり抱えている。

 この花を見ると、自分自身の中で、しっかりしなくちゃ、って思ってしまう。

 「からだの芯にとどく光」というのは、そんな気分を言いたかったわけですが、内心、こんな独断的な言い方ではそんなに伝わらないだろうなと思っていました。ところが、句会では意外に好評。わからないもんです。というか、けっこうみんな辛夷の花に、似たような印象を持っていたんだなあという発見がありました。

 辛夷の花と青い空。

 なんだか体の芯まで明るくなってくるような、小さくとも確かな感触。

 今の世の中、希望だ、絆だ、と騒がしいけれど、そんなことを一言も言わずにきちんと花を咲かせる植物たち。

 「良い仕事をせよ」と励まされる思い。

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