cafe boneko & boneko books

2019年句集「むずかしい平凡」を自費出版しました。 どうそよろしくお願いします。俳人…

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2019年句集「むずかしい平凡」を自費出版しました。 どうそよろしくお願いします。俳人。金子兜太に師事。 http://boneko.jugem.jp/ 句集の問い合わせは bonekobooks@gmail.com フォロー&スキ歓迎 第23回自費出版文化賞詩歌部門入選

マガジン

  • むずかしい平凡 自句自解 第二章「春の牛」

    主に福島原発事故に関わる俳句を解説していきます。よろしく。

  • むずかしい平凡 自句自解 第一章「むずかしい平凡」

    拙句集「むずかしい平凡」の自解を行っています。もしよければ俳句を楽しみつつ、お付き合いください。

  • ぼくの好きな俳句たち

    別のマガジンで拙句集「むずかしい平凡」の自句解説をしているのですが、それだけでは何か心が寂しくなってきたので、今までの自分の俳句体験の中で印象に残った俳句作品を紹介したいなと思います。こちらもあせらずゆっくりマラソン感覚で。どうぞよろしくお願いします。

  • 閑話休題

    句集「むずかしい平凡」の自句自解に伴って、つれづれなるままに、こぼれ話書いています。もしよろしければ。

記事一覧

固定された記事

1 植田百枚水をこぼさぬ水の星

 2019年12月に拙句集「むずかしい平凡」を上梓いたしました。  おかげさまで、いろいろな方に丁寧に読んでいただき、各種メディアにも取り上げられるなど、少なか…

マガジン9 連載2回目

マガジン9 連載2回目となりました。 もしょろしければご覧ください。 春の牛空気を食べて被曝した この句をもとに、いろいろ語っています。 聞き手は、ウネリウネラ…

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2 春の牛空気を食べて被曝した

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1 被曝避け得ず土に雨土は春

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62 ぽつんと菫除染三年目のある日

 句集「むずかしい平凡」自解その62。  しばらくお休みしていました自句自解。ぼちぼち再開します。  この句は、句集第一章「むずかしい平凡」の最後の一句。この章…

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60 鳥は卵石ころは影抱いて春

 句集「むずかしい平凡」自解その60。  この句の読み方をまずは文法的に。  「鳥は卵」「石ころは影」はそれぞれ「抱いて」にかかってゆく文法構造です。散文的に言…

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 句集「むずかしい平凡」自解その57。  遠足風景。  春の山にみんなで登って、おーい、ここがいい景色だから、ここで昼飯にしよう、なんて先生がけっこう張り切りっ…

56 川と本屋のゆたかな町よ夕燕

 句集「むずかしい平凡」自解その56。  鳥の中で一番好きなものは、と聞かれたら「燕」って答えるでしょうね。  なぜといわれてもうまく答えられないけれど。  小…

55 草書ってきっとつばめの暗号です

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1 植田百枚水をこぼさぬ水の星

1 植田百枚水をこぼさぬ水の星

 2019年12月に拙句集「むずかしい平凡」を上梓いたしました。

 おかげさまで、いろいろな方に丁寧に読んでいただき、各種メディアにも取り上げられるなど、少なからず反響があり、作者として大いに感謝しています。

 そういうわけで、これから少しずつ時間をかけて、この中の句を自分で解説していければと思っています。自分の句を自分で解説することは、どちらかといえば邪道なことですが、しかし、読者フレンドリ

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マガジン9 連載2回目

マガジン9 連載2回目

マガジン9 連載2回目となりました。
もしょろしければご覧ください。

春の牛空気を食べて被曝した

この句をもとに、いろいろ語っています。

聞き手は、ウネリウネラのウネラさん。

ぐいぐい突っ込んで聞かれるので、ついこっちも語ってしまうのでした。

https://maga9.jp/220706-5/

本年最後の年に、宣伝。

本年最後の年に、宣伝。

こんなテレビ番組に出演しました。

まじめなドキュメンタリーです。

TBS「ザ・フォーカス」

震災10年福島 非日常を撮り続けて

主役は、赤城修司さんなのですが、それに関連して、

小生、俳句の授業をしています。

フクシマはまだ続いていて、そのことを心に秘めながら生活することの難しさ。それをみんなで、俳句で、分かち合いたい。

そんな取り組みをしています。

もしよければ見てやってください

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2 春の牛空気を食べて被曝した

2 春の牛空気を食べて被曝した

 句集「むずかしい平凡」第二章「春の牛」より自句自解。

 原発が爆発し、放射性物質が飛散した。人々は避難する。しかし、牛たちは逃げることができない。その牛たちを放置して逃げることができない人たちもいる。放射性物質は、それがどんな生き物であれ、容赦なく汚染する。

 ある牧場経営者が、専門家にこんな質問をしていた。

「牛たちは牛舎の中にいました。そして餌も外国産のものを食べていました。しかし、牛

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1 被曝避け得ず土に雨土は春

1 被曝避け得ず土に雨土は春

句集「むずかしい平凡」自句自解。第2章「春の牛」から。

ここからは、2011年以降の福島を舞台にした俳句がしばらく続きます。

2011年3月、原発が事故を起こした。もう、人間にはコントロール不可能な状態になり、爆発するしかなかった。

爆発し、放射性物質を大量に含んだ空気は、福島県をはじめ各地に飛散した。その被害がもっとも大きかった地域は、雨に降られたところだった。雨雲が被曝した空気を運び、雨

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句集 むずかしい平凡 自費出版文化賞詩歌部門 入選

句集 むずかしい平凡 自費出版文化賞詩歌部門 入選

拙句集「むずかしい平凡」が、このたび第23回日本自費出版文化賞詩歌部門で入賞いたしました。報告いたします。

全体では、7部門があり、603点の応募。

その中で、最終審査に進んだのが70点。

詩歌部門は、81点の応募中、10点の最終審査。拙著はこの最終10点の中に入れてもらえたという次第。最後の部門賞と特別賞には及びませんでしたが、あまたの著作の中から最終審査まで行けたこと、大変感謝しておりま

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62 ぽつんと菫除染三年目のある日

62 ぽつんと菫除染三年目のある日

 句集「むずかしい平凡」自解その62。

 しばらくお休みしていました自句自解。ぼちぼち再開します。

 この句は、句集第一章「むずかしい平凡」の最後の一句。この章には、震災関係の句を入れるつもりはなかったのですが、つい入ってしまいました。次の章「春の牛」が震災句を中心にするつもりだったので、その雰囲気を出したかったのか、自分でも定かじゃないのですが、なんとなくこの句を置きたかったんですね、要する

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61 花の昼大河も死者も仰向きに

61 花の昼大河も死者も仰向きに

 句集「むずかしい平凡」自解その」61。

 この句を東日本大震災と関連付けて読んでもらったことがあります。それはそれでありがたいのだけれど、そして、そういう想いも決してないわけじゃないけれど、それよりも即物的な、即興的なかたちで生まれてきた句です。そのうえで、深い読みをしてもらえればありがたいですね。

 ふだん夜間定時制勤務なので、ちょうどお昼ごろ家を出て、通勤することになります。通勤時間は4

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60 鳥は卵石ころは影抱いて春

60 鳥は卵石ころは影抱いて春

 句集「むずかしい平凡」自解その60。

 この句の読み方をまずは文法的に。

 「鳥は卵」「石ころは影」はそれぞれ「抱いて」にかかってゆく文法構造です。散文的に言えば、「鳥は卵を抱いていて、いっぽう石ころは影を抱いていて」というふうに、「抱いて」にふたつの部分が同時につながっている、そういう形です。

 鳥は卵を抱いているし、石ころは影を抱いているし、うん、なんだか春だなあ。

 そんな読みです

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59 鳥の巣指す木漏れ日を来て子も木漏れ日

59 鳥の巣指す木漏れ日を来て子も木漏れ日

 句集「むずかしい平凡」自解その59。

 ちょっとした遊歩道を子どもと一緒に散歩していた時の光景。先を歩いていた息子が木の上のほうを指さす。鳥の巣があるみたいだ。

 こちらからはよく見えない。

 どこ?

 ここ、ここ。

 子どもがこちらにやってくる。遊歩道は木漏れ日が揺れていて、その木漏れ日の中をやってくる。

 あっ、と思う。子ども自体がもう木漏れ日そのもの。

 その木漏れ日が私の手

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58 春はあけぼの家族にそれぞれの寝息

58 春はあけぼの家族にそれぞれの寝息

 句集「むずかしい平凡」自解その58。

 東日本大震災、福島第一原発の事故で自主避難した妻子。

 自主避難して二年目か三年目のころだろうか。

 当初は生活の変化についてゆくのが精いっぱい。とにかく初めてのことばかりだった。少し慣れてきて、いくらか不安はあるものの、我々はなんとか生き延びてきたんだなという思いがわいてきた。

 自分一人だけ早く目が覚めて、妻子はぐっすり寝入っている。妻子それぞ

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57 春山でおにぎり先生のおなら

57 春山でおにぎり先生のおなら

 句集「むずかしい平凡」自解その57。

 遠足風景。

 春の山にみんなで登って、おーい、ここがいい景色だから、ここで昼飯にしよう、なんて先生がけっこう張り切りっている。

 みんなも、いいねえ、いい景色だ、などとちょっとしたいい気分。

 さて、おべんとうを取り出して、おにぎりをぱくり。

 すると、どこかからおならの音。あれ、このおならはあんなに張り切っていた先生のおなら。張り切っていた緊張

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56 川と本屋のゆたかな町よ夕燕

56 川と本屋のゆたかな町よ夕燕

 句集「むずかしい平凡」自解その56。

 鳥の中で一番好きなものは、と聞かれたら「燕」って答えるでしょうね。

 なぜといわれてもうまく答えられないけれど。

 小さくても力強く、自由自在に飛ぶ姿。気がついたら好きな鳥になっていました。

 中学のころ、自宅に巣を作った燕の卵を蛇が狙っていた。その燕も危険を感じ、近くの仲間を呼び寄せ、必死に蛇の気をそらそうとしていた。人間もも蛇を追い払ったりして

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55 草書ってきっとつばめの暗号です

55 草書ってきっとつばめの暗号です

 句集「むずかしい平凡」自解その55。

 口語俳句ですね。最近は口語文語にこだわらず、できるだけ自由に俳句を作りたいと思うようになってきた。

 基本的な型というのはたしかにあるし、それに従っていけば打率も上がる。でも、それだけではなかなか自分自身の深い部分を書き留めきれない、そんな思いも出てきて、つねに試行錯誤ですね。

 これは即興的な句です。

 最近、必要に迫られて書道に親しむようになっ

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54 燕の空仰ぐこと店畳むこと

 句集「むずかしい平凡」自解その54。

 近所の小さなお菓子屋さんや八百屋さん、洋服屋さんなどが次から次に店を畳んでいる。郊外に大きなスーパーマーケットができてしまった影響でもあるし、そもそももう店を継ぐ人がいないという事情もあるかもしれない。

 ただ、ここ数年どっと店を畳む傾向が強くなっているのは、やっぱり大震災の影響もあるのかなと思う。私の住む近辺は避難者がそのまま生活の拠点にしているケー

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53 すうっと蝶ふうっと吐いて解く黙禱

53 すうっと蝶ふうっと吐いて解く黙禱

 句集「むずかしい平凡」自解その53。

 これは師・金子兜太先生が亡くなって、ひと月ほど経った頃の作。

 秩父長瀞で最後の「海程・俳句道場」が催され、金子先生の墓参に赴いき、そのときに生まれてきた句。

 お墓の前に立ち、黙禱をし、ひとしきり心の中で会話をした後、黙禱を解く。そこをすうーっと蝶が横切って行った。

 このすうっと横切っていったときの呼吸が、なんだか自分が黙禱を解いたときの息遣い

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