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観光を再考!日常は最高!

中島:1992年生まれ福島県出身。日本大学工学部建築学科卒業後、地元市役所に建築技術職として入庁。紆余曲折を経て一念発起、2021年にブルースタジオに入社。元公務員としての経験を活かし、bpm事業部シニアコンサルタントとして人生爆走中。三度の飯より酒が好き。

藤森:1996年生まれ長野県出身。雑誌編集部員の時に見たブルースタジオの「まちを編集する」のフレーズにグッと来て2022年入社。クリエイティブディレクター大島芳彦のアシスタント、またコンサルタントとして日々奮闘しながら今年からbpm事業部に配属された公共1年生。得意技は野沢菜を漬けること。

藤:公共事変、第5回です!
前回は行政と市民の関係性が「与える人」と「与えられる人」という構造になってしまっていないか、もっとまちへの関わりしろを増やしていくことが大切なんじゃないかというお話をしました。

中:関わりしろのグラデーションがあってもいいのでは?というお話をしましたね〜。
前回はまちに住んでいる人の視点から話したけど、外からの視点で”まちへの関わり方”っていうのを捉えることも必要かなと思いまして。
そこで今回は、代表的な「観光」という視点で話していこうと思います!

藤:観光ですか。少し意外な感じがするんですが、なんで観光なんですか?

中:そうだよね。観光とまちづくり的なものって結びつきにくいよね。
なんで結びつきにくいかというと、観光の話と一緒に語られるのって「地域経済の活性化」で、自治体も観光にその役割を期待していることが多いからかな、と。
一般的な「観光」というと、旅行代理店が組んだツアーでその地域の観光名所を回って「地域の魅力を知ってもらう」みたいなイメージが強いよね。

藤:「〇〇で行く、めくるめく△△3日間の旅」みたいな広告ありますね!

中:そうそう。でもパッケージ化されたツアーはマスマーケットを狙ってるから、観光商材になるようなもの、例えば「インスタ映えする場所ですよ!」とか、どうしたら万人受けするか?っていう視点になってしまうというか。

例えば私の地元は小峰城っていうお城があって、そこは一応観光名所になってるんだけど、地元にお城とか分かりやすい観光名所がない友達に「私の地元は持たざる者だから...」って言われたことがあって(笑)

これって、地域に何か名所とか観光商品になれる場所があるかどうかの基準、いわゆる一般的な「観光業」という視点でそのまちが語られちゃってるからだと思ってて。

藤:うちの地元も、諏訪湖以外他に何もなさそうだからわざわざ行ってもねえ、みたいに思われてたら泣いちゃう...

中:大丈夫、諏訪には御柱もあるじゃない!
まあ、マスマーケットを狙った観光業も、地域経済を活性化させるという視点では必要なものだよね。
でも、自治体が「観光」を一生懸命やりたい理由は、単純に地域経済を活性化させたいだけじゃないんだよ。

観光の本当の狙い

中:まずはフジモリくん、地方創生って言葉があるけど、そもそも何のためにやってるのかわかる?

藤:地方を...創生するため....ですか......(滝汗)

中:ちょっと!!!!出直してきなさい!!(笑)
耳タコだと思うけど、まずはこれから地方都市が直面する課題が前提ね。
高齢者が増えて子供が減って、
商圏が小さくなって地域経済が回らなくなって、
若い人も大都市圏に行っちゃって、
自治体は税収が減って、公共サービスが維持できない、という役満フルコンボなわけです。私たちだって無視できない死活問題だよね。

藤:悲しき社会課題麻雀、早々に上がりたいです...

中:だから地方創生の大きなテーマとしては「若い子たちは地元に戻ってきて!」とか「東京の人、うちのまちに住んで!」とか、定住人口を増やしたいのがベースにあるんだよね。

そのための施策として、大きく分けると2つあって
1つめは、今住んでる人が消極的な理由で他の地域に出ていかないようにするための施策だね。例えば子育て支援を充実させて子育てしやすいまちにするとか、学校教育の中に地域学習の時間を盛り込むとか。

2つめは、他の地域に住んでる人に移住してきてもらうこと。
でも移住の判断はかなりハードルが高いから、その前に地域外の人に地域のことを知ってもらうとか、好きになってもらうとかの「関係」を作る=関係人口を増やすことが大切って言われてるの。

その「関係」を作る上で一番分かりやすく・とっつきやすく地域の魅力を伝えられる要素として「観光」が出てくるわけです。

旅行先から住んでみたいまちへ

藤:確かに観光に行った場所がとても良くて移住したきっかけになった、ってエピソードはよく目にしますよね。

中:そうそう。でも最終的に定住人口を増やしたい行政の思惑と、マスマーケットを狙った観光って、本当にマッチしてるのかな?って思うんだよね。
例えばツアーになると、基本は代理店が組んだスケジュールで動くから「観光名所」を回るようになるよね。
そういうツアーに参加する人って、家族や友達との旅行みたいに「誰と」行くのかが大切だったりするから、どちらかというと旅行先で感じる「綺麗」「美味しい」「面白い」っていうのは付加価値的な要素だと思ってて。
魅力を感じるのはもちろんそうだけど、あくまで付加価値だから写真に納めることで満足しちゃうんじゃないのかなって思うんだよね。

藤:確かに振り返った時って誰と行ったかがまず思い出されそうです。

中:非日常だからこそ最大瞬間風速的に「たのしい〜〜〜!!!」みたいなテンションになるけど、日常に帰ったら「あ〜たのしかった〜!次はどこ行こうかな〜」ってなるのが大半だと思うし、それってリピーターが生まれにくくて、ましてや「この場所に暮らす」ってイメージは湧きづらいと思うんだよね。

藤:「旅行」っていう予定を過ごしてその日を終えたら自分の生活に戻っていく感じですね

中:そういう「観光」の方法だと、行くのは楽しいし思い出もできるけど、その場所に「住みたい」って思えるほどの愛着はなかなか持ってもらいにくいんだよね。

中:日常生活圏での買い物のしやすさとか、通勤距離とか子どもの学校のこととか「暮らす」ためには色んな要素が必要にはなるけど、今の時代、ネットで色んなものが手に入るじゃない?仕事だって職種によってはどこでも働けるようになってきたし。
そんな中で「観光地」っていう認識から一歩踏み込んで、その土地に「住みたい」って思えるようになるのに必要な要素って、他に何があると思う?

藤:う〜ん。例えば、旦那さんの転勤で全然知らない土地に引越すことになった奥さんが「知り合いが全然いない」ことがすごく不安だっていうのはよく聞きますよね。旦那さんは会社の繋がりがあるけど、奥さんにとっては何も繋がりがないっていう不安。
そう思うと、友達とか知人がいることって大切なんじゃないかな?って思います...!

中:そう!だれも知り合いがいない場所に住むのって、かなりハードルが高いと思うんだよね。
私はブルースタジオに入る前から、友達に会いに行く旅が多くて。まあ一人旅でもスタンスは同じなんだけど、旅行に行ったら友達に教えてもらった地元の人が集まるディープな居酒屋のカウンター席に座るようにしてるの。
「ねえちゃん、観光か?ここは初めて?」なんて聞かれて
「そうなんですよ〜!!◯◯が美味しいおすすめのお店とかあります〜?(へべれけ)」
なんて言って、話してるうちに仲良くなってお酒奢ってもらったり、地元の人しか知らない穴場のお店を教えてもらったりするのがすごく好きで。
酔っ払ってるから名前忘れちゃうけど、友達できた〜!って思う(笑)

藤:忘れちゃうんだ。笑 でもいいですよね、自分も地域の銭湯に行って地元の人が話しているのを聞いたり、混ぜてもらったりするのが好きです。

中:楽しいよね!私はブルースタジオに入った今も、地方出張ではありがたいことに地元の人にまちを案内してもらって、そこにしかない魅力を教えてもらっていて。

そうやって人に出会えたまちは「このまちならこの辺に住んで、毎週末このお店であの人と飲んで〜」とか妄想できるから、私はどこでも「住んでみたいな〜!!」ってなっちゃうんだよね。住みたいまち、いっぱいある(笑)

藤:そのまちに住む想像ができるほどそのまちが気に入ったっていうのは、もう関係人口の1人を超えて移住候補者になっちゃっているってことですね

中:その地域の暮らしに魅力を感じて、そこで暮らす自分を想像させるためには、地域の日常を魅力的だと感じてもらえるか?ってことが大切で。
「暮らすように旅する」っていうスローツーリズムとか滞在型観光の考え方があるけど、まさにそれなんだよね。

一般的な旅行商品としてパッケージ化されたツアーじゃなくて、自分で選んだ地域の飲食店でご飯を食べたり買い物をしたり、その地域ならではの日常を観光資源と捉える考え方。

藤:まち宿にも通ずる考え方ですね。まちを一つの宿と見立てて、宿泊施設と地域の日常をネットワークさせていく、ブルースタジオで手掛けたユクサも同じですね。

消費されてしまう観光地

中:そうだね。話は変わるけど、観光と地域の日常という視点では無視できない問題もあるね。
観光公害って言葉が有名観光地でニュースになったりしてるのを見たことある?観光名所になって観光客が押し寄せて、日常の暮らしに支障が出てるっていう話。そんなまちに住みたいと思える人って、少ないんじゃないかなって思ってて。

藤:オーバーツーリズムですね。周辺に住んでいたり働いている人の日常が脅かされているのはよくないですね。

中:そうそう。話題になって経済が活性化されても、日常生活に支障が出るのって元も子もないよね。それに観光地として消費されるだけのまちになると、消費には流行り廃りがあるから飽きられる可能性だってあるし、コロナ禍みたいに「そもそも人が来れない」ってなった時に地域経済が回らなくなっちゃうんだよね。
そうならないために頑張ってる人たちもたくさんいるけど、そもそも論で、消費される観光地ではない方向に観光の考え方をシフトしていくこともありだと思ってて。

藤:観光もツアーとか観光名所にいくだけじゃなくて、地元の喫茶店に行ったり、街歩きをしたり、地域に潜るみたいな楽しみ方にも広がってきていますよね。

中:そうそう。それに地域の日常を魅力的にするってことは、今いる人たちが「暮らしやすい」まちにしなきゃいけないから、まちづくりの観点でもとっても大切なことだよね。

藤:人をどう呼び込むかだけに注力するのってもちろん重要ですけど際限がないですもんね...

わたしが見つける、このまちの”〇〇”

中:地方創生って言葉が主流になって、シティプロモーションが大切という考え方が全国どの自治体にも浸透しているんだけど、その一因って情報社会になったことかなと思ってて。
自分次第で色んな情報を自分で選んで手に入れることができるようになったからこそ、「選ばれるまち」にならないきゃいけないっていう意識が生まれてるのかなと。

藤:SNSとか見ていても、”街歩き界隈”ってコンテンツになってますよね。提供されなくても自分だけのその場所の地域性みたいなのを見つけて、それを楽しんでいる人ってたくさんいるように思います。

中:そうそう。「選ばれるまち」になれるかどうか?って語られることが多いけど、私は個人の選択の自由・幅が増えたからこそ「どんな人に来てほしいのか・住んで欲しいのか」ってことは、自治体を含めた地域の人たちが考えて選ぶべきだと思うんだよね。

藤:地域の方が選ぶ、その発想はなかったかもです...

中:ブランディングとかプロモーションは、「魅力を伝える」ことも大切だけど、主語は発信する側にあると思っていて。
単に「尖ったプロモーションを!」とか「他にはないものを!」とか表面的なことを考えるんじゃなくて、『「私たち」は「誰に」来て「何を」感じて欲しい』のか発信する必要があるんだと思う。

藤:強気な...とか思っちゃったんですけど、選ばれるにはどうするか、っていう相手本位の姿勢じゃなくて、このまちをどんな風に住んで欲しいか、街を自分ごとに考えることにも繋がる気がします。

中:そうなの。
自分たちのまちの在り方をマスマーケットの判断に委ねないことって、観光だけじゃなくて「まちづくり」の話をする上ではとても大切だなと思ってて。
もちろんマスマーケットを含めた経済活動の上に社会は成り立っているから、そういうものを排除しようって話ではなく、両立させるためのバランス感覚が一番大切で難しいところではあるんだけど。
でも、だからこそ量ではなくて質を大切にするためのシティプロモーションをしていくことって、これからの「観光」を考える上で重要だなって思うんだよね。

藤:シティプロモーションってどんなまちにしていきたいか地域外に向けて発信するだけじゃなくて、住んでいる人にも自分のまちに誇りを持てるいい機会になりますね!

中:あと個人的には、地方創生って言葉聞くたびに、お言葉ですけど元々地方は最高ですから!と思ってて。
ナンバーワンよりオンリーワンって言うじゃない(笑)
千客万来目指さない人がいたって良いのよ。

藤:千客万来の逆張りを目指していくのはいかがでしょうか!というのか今回のまとめとなりますかね。と言いつつ公共事変はどんどん読んでもらえますように!(強欲)

中:そうだね!bpmはまだまだスタートアップの黎明期ですから、共感してくれる人を大切にしながらもどんどん発信して仲間を増やしていけるよう、良いバランス感覚を持ってやっていきましょう!
というわけで、今夜は居酒屋カウンターで知らない人と朝までハシゴ酒でもしてこようかな!(笑)

藤:酔っ払ってバランス感覚崩さないようにお気をつけて!
では次回も、お楽しみに〜!!


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