見出し画像

使う、使わない、だけじゃない!公共の『グラデーション』

中島:1992年生まれ福島県出身。日本大学工学部建築学科卒業後、地元市役所に建築技術職として入庁。紆余曲折を経て一念発起、2021年にブルースタジオに入社。元公務員としての経験を活かし、bpm事業部シニアコンサルタントとして人生爆走中。三度の飯より酒が好き。

藤森:1996年生まれ長野県出身。雑誌編集部員の時に見たブルースタジオの「まちを編集する」のフレーズにグッと来て2022年入社。クリエイティブディレクター大島芳彦のアシスタント、またコンサルタントとして日々奮闘しながら今年からbpm事業部に配属された公共1年生。得意技は野沢菜を漬けること。

藤:公共事変、第4回です!

中:よろしくお願いしまーす!

藤:前回は、小学校の通学路を切り口に、「ついつい見落とされてしまいがちな公共施設の社会的役割」などお話ししましたね!

中:いや〜〜〜〜良い記事だったね(笑)
前回しっぽり真面目に話したせいか、ちょっとアルコール足りてないというか、疲れちゃったな〜というか...(笑)

藤:そんなことおっしゃらず。回を重ねるごとに公共の色々な側面を知れるのでありがたいですよ、部長!今回も何卒!🥋
さて、前回のお話の中で、社会的役割が見落とされてしまう原因は、結局「縦割り」に行き着くと言われて、フジモリ的に「またかよ!」って思ったんですけど、本当に他には原因ないんですか!?

中:いや前回は割愛しちゃったけど、他にもいっぱいあるよ(笑)

藤:いっぱいあるのか...お聞かせ願います(ゴクリ)

中:まあ政治もあるし、個々人の問題、教育委員会の考え方とか挙げればキリがないんだけど、「社会的役割」に絞って言うなら、「まちに対する当事者性の欠如」かなと思いますね。

藤:当事者性!弊社クリエイティブディレクター大島さんの講演などでも良く取り上げられる言葉ですね。
それにブルースタジオでは民間の事業者様・オーナー様とお仕事をさせていただく時に、その建物に住まう人に限らず、その周辺の方々を巻き込んでいくか、いかに当事者になってもらうかという考え方を大切にしていますよね!
なんとなくイメージは浮かびつつ、「まちに対する当事者性の欠如」ってどういうことでしょう?

広報誌が市民の心に刺さらないワケ

中:では今回は、どこの自治体も出している「広報誌」を例に話をしてみよっか〜。フジモリくんは、自分の地元とか今住んでいるまちの広報誌、読んだことある?

藤:郵便受けに入っているのはよく見かけるのですが、隅々まで読んでいるかと言われると...という感じです、お察しください...

中:そうだよね。私も自分が公務員じゃなかったら触れたことすらなかったかもしれない(笑)まあよく言われることだけど、情報発信って自治体の苦手分野なんだよね。

藤:なんででしょう?

中:理由はこれまた色々あるんだけど、まず広報誌は「出来るだけ多くの人に平等に情報が行き渡ること」が大切だから、民間みたいにターゲットを絞った「刺さる」プロモーションができないんだよね。

藤:確かに自分にはあまり関係なさそう、みたいな印象があります。

中:それに「こんな補助金出してます」とか「こんなイベントやります」とか、ジャンルの違う情報を1つの広報誌にまとめなきゃいけないのに、広報誌の担当者はプロのグラフィックデザイナーでもないし、なんなら部署移動で3年くらいで新しい人が来るから、ある程度マニュアル化されててデザインするのも難しいという。

藤:「出来るだけ多くの人に平等に」を目指した結果、役に立つ情報や知っていれば参加できたかもしれない機会があっても、市民が情報にリーチしづらい、そもそも、そういう情報を発信していることすら知らない、という悲しき状況が起こってしまっているのですね...

中:でも単体の事業、例えば「農産物のプロモーションします!」とか「子育て支援に特化したアプリ作ります!」とかなら、プロに委託して良いプロモーションできたりもするんだけど、いかんせん縦割りなので他の事業との連携が難しいとなったりもするんだよね〜

藤:ここでも出るか縦割り...!しぶといですね。

中:油汚れみたいに言わないで(笑)
まあそんなわけで、情報発信ひとつ取っても、行政と市民の関係性が「与える人」と「与えられる人」の構造になってて。その構造が、「まちに対する当事者性の欠如」ということかなと。

だから当事者性のないまちって、サブスクみたいだなと思っていて。
与えられた物で満足して、それが得られた時点でハイ終わり!って状態。

藤:サブスク、例えば動画サービスなら観れば観るほど、自分の好みに合った「オススメ」は表示されるけど、だんだん食傷気味になる感じはありますよね。夜、何観ようかな〜と探している内にご飯食べ終わっちゃってることあります。笑
レンタルビデオショップとかが無くなって、なんとなくジャケ買いしてみたらめっちゃよかった、みたいな偶然の出会いは、少なくなっているかも知れないですね。

中:レコードとかカセットが回帰してきているのも、未知との遭遇というか、ディグる楽しさがあるからかもね。まちに置き換えてもそうで、あるものをただ消費するだけだとその先がないから飽きがきて、「隣りのまちにはアレがあるのに、うちのまちには何もない」っていう、ないものねだりな意見が溢れちゃうんだよね。
自分たちのまちの価値とか、本当に必要なものは何か?を熟考できるようにならないと、今までと何も変わらないただ消費されるだけのまちにしかなれないと思うんだよね〜。
私は地方こそ、ディグる楽しみがたくさんあるな〜と出張に行くたびに楽しんでます!

「使う」と「使わない」の間

藤:一方で、関わりたいと思っている市民からすると、行政の広報が十分じゃないと関わりしろを与えられてないと思ってしまうような。それも、与える・与えられるの構造ゆえに生じているジレンマなのかもしれませんね。

中:そうなの。例えば、公共施設を新たに作る時も、発信がうまくいかなくて(だけじゃないけど)起きてる弊害もあるんだよね。

公共施設の利用って「使う?使わない?」っていう2択しかないように見えちゃうんだけど、その2択の間にはもっとファジーな部分がたくさんあるべきだと思ってて。

2択しかないから「私はこの施設は使わない!いらない!反対!」みたいな、極端な意見が出たりしちゃうと思うんだよね。
口コミと同じで、賛成してる人はわざわざ声を上げないし。

藤:賛成している人はわざわざ声上げない、確かに...。

中:特に文化施設、図書館とか文化ホールとかは頻繁に利用する人としない人がハッキリ分かれることが多いから、「たくさん税金使って無駄なもの作って!!そんなことよりこっちにお金使ってよ!!!」とか言われちゃうことも比較的多いんだよね。

藤:その施設を自分が利用することがない、自分の生活に関係のないことに自分の税金が使われている、と思うと反対したくなる気持ちもわかるような...

中:そうなんだよね。でも公共とかまちに関わるときって、本当は「参加する」「参加しない」の間に、グラデーションがあるんだよね。
「ちょっと興味ある」とか「気になるけど遠くから見てるくらいが良い」とか、「自分は使わないけど、孫がよく行くのよ〜」なんて人もいるよね。

藤:家族・友達・職場とかにも目を向ければ、色んなベクトルでの関わり方がありますね。
白黒はっきり分けるんじゃなくて、遊びの部分というか関係性の余白みたいなものがあるからこそ面白いことが生まれるような気がします。

関わり方のグラデーションを可視化する

中:だから前回の小学校の時の話と同じで、社会の中でどういう役割を果たす施設なのか?ってところを掘り下げれば「誰がどう関われるか?」って部分のグラデーションが見えてくるし、そのグラデーションがあることがちゃんと可視化されれば、「あ、こういう関わり方もありなんだ!」ってイメージしやすくなる人が増えると思うんだよね。

藤:100人いて100人全員が納得できるものは正直できないけど、
自分に関係ないと思っていた人の意識を少しでも変えられればいいかもですね〜!

中:そうだね!賛成じゃなくても、なんのためにその施設が必要なのか市民が理解ができている状況が大切で、理解してもらうプロセスの中で関わり方のグラデーションがあることを示していけると良いよね。

藤:ブルースタジオで手掛けたプロジェクトだと、hoccoはそうした考えが表現されている事例でしょうか。
hoccoって、バスを利用する人にとっては停留所だけど、店舗に買い物に来た人にとっては商店街でもあって。マルシェで出店する人にとっては、地域の人と顔を合わせる機会だったり、公園として散歩に来ている人もいるかもですね。
その場所に対して、各々が自分の望む形で関わることができているような気がします!

中:そうそう!今までずっと行政の話ばっかりしちゃってたけど、「公共交通機関」も重要な「公共」の要素だよね。

藤:hoccoでは、毎月第4日曜日に日曜市として開催されていますが、今月の24日に行われる日曜市では「桜堤おてせいなりわい市」と題してマーケットイベントが開催されるので、ぜひお越しいただきたいですね!

中:そうだね!そういえばhoccoまでの道は桜並木が綺麗だよね〜。
桜を見ながら花見酒といきますか!
というわけで今回はここまで、また次回もおたのしみに〜!!


「場をつくること」だけでなく、「場を使いこなして“居場所をつくる”こと」も大切にするブルースタジオ。愛着がわく、当事者として関わりたくなるような場づくりのプロセスをこちらの記事でご紹介しています。

昨年の「桜堤おてせいなりわい市」の様子はこちら。


最後まで読んで頂きありがとうございます! もしよろしければ「スキ」や「フォロー」いただけると嬉しいです。 最新情報はHPで発信でもしています。ぜひあわせてご覧下さい→ https://www.bluestudio.jp