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なんでもない。

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記したつもりが消えていくもの。
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#思春期

多面体。(父の夢をみたから固定)

多面体。(父の夢をみたから固定)

 夏が過ぎ、秋へ向かう。

 季節の変わり目は、いつも高校2年の夏休みを思い出す。
精神は湖のように深くゆれ揺らぎ、全身を浸した水面で手足を掻き続けて底が濁る。濁らせたい訳ではないが動けば動くほど濁りは広がってゆく。同時にいつ沈むのか推測不能な不気味さに体が冷え切る。常に水の中に浸っているからか手先足先が痺れる。一歩進み出したら一瞬で溺れてしまうかもしれない恐怖と緊張と裏腹に、陸に上がり自分の体温

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始まりは、赤。

始まりは、赤。

 「どうしたい…?」彼が、ポツリと言った。
暗闇の空間が色づく。欲望の色は、"赤"だ。

 お互いに友人と訪れていた"wanna dance?"という六本木にあるクラブで、声を掛けて来たのが彼だった。ソムリエというだけで、何故、こんなにも格好良く小慣れているのだろう?大人への憧れが、そのままが実在する人物として、目の前に現れたのだから夢のようだ。夢で終わらせたくない。

 「これから、どうしたい…

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剥離・脱落・収縮

剥離・脱落・収縮

今月も、「あの日」が来てしまった…
また女の性を、否応無く、
静かに受け止めなくてはならない、
そんな時。

中学生の頃、「初潮」を迎えたわたしに、継母は、
忌々しい汚れたものを見たように、冷たい目で、
「あら…そう…」
と、面倒くさそうに紙袋を渡した。

浴室で、汚れた下着を洗いながら、内側で思いの抑揚する感情を抑え切れずに、泣きながら、身体までも必死に洗った。
洗っても洗っても、わずかな腹部の

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