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都築郷夫(つゞき·くにを)の詩と歌と句ii

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ザ·裸形の魂、マガジンも二冊め。どんな言葉の飛び出すか、開けてみてのお楽しみ。さーあ、ゐらつさい!
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#俳句

都築郷夫 ちよつとはみだ詩・❲十三❳ 附・詩人の為のワードローブ集

都築郷夫 ちよつとはみだ詩・❲十三❳ 附・詩人の為のワードローブ集

東洋は東洋 西洋は西洋
この二つはけつして出会うことはない
(ラドヤード·キプリング)

私(筆者)にはさうとは思へないのだが。



わが師には即天去私ぞ眞葛(さねかづら)
(©芥川龍之介こと都築郷夫)俳句 kigo

【或る夜のTsudsuki, Kunio】

鬱陶しい長髪と髭
だな。と言ふと
自嘲になつてしまふ。
詩の世界、自嘲的なるもの、全て
陳腐だ。例へば
俗説の、マスターベーショ

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都築郷夫 ちよつとはみだ詩・❲拾❳ 附・詩人の為のワードローブ集

都築郷夫 ちよつとはみだ詩・❲拾❳ 附・詩人の為のワードローブ集

無力をごまかさないがいい。/ いっさいのプチブル的通行人根性をめあての客引き根性を洗い流すがいい。(中野重治・転向前)



雲あり方問ふよ秋なら理想どんな?
(©都築郷夫)俳句 kigo

【ラヴレターα】

疲れが引いて、Lustも治まりつゝ
ある でも如何にも助平さうな
薬剤師の姐さん、
いつかA感覚セックスしませう
子供ごゝろに帰つて。

はゝ、夜遊びした後の
あんたと出くはした事

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都築郷夫 ちよつとはみだ詩・❲九❳ 附・詩人の為のワードローブ集

都築郷夫 ちよつとはみだ詩・❲九❳ 附・詩人の為のワードローブ集

草庵を表徴する愛翫の芭蕉も、近くの地に移植して、その世話を隣人達にたのんだ。
こゝをまた我が住憂くて浮かれなば松は独りとならんとすらん(「山家集」) - 中山義秀『芭蕉庵桃青』より



なうなうと呼びかける秋夜の聲
(©都築郷夫)俳句 kigo

【α】

よーしと云ふとき腕まくり
大雨降るなら裾まくり
空腹二日で食ひまくり
嘗て三枝の坊主めくり

そ・し・て・期待のかゝる
スカートめくり

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都築郷夫 ちよつとはみだ詩・❲六❳ 附・詩人の為のワードローブ集

都築郷夫 ちよつとはみだ詩・❲六❳ 附・詩人の為のワードローブ集

みんなみんないなくなつた、と云う昔読んだ詩の一行を想い出したりした (小沼丹「タロオ」より)

【オタスケ】

レノン、彼が
「ヘルプ!」と歌つたのは
1965年、25歳の年で
(エプスタインからの要請
もあつたらうが)私には

なんとなく
分かつた

四半世紀も生きれば
まともな人間なら 弱音も漏れる
特に造化のシステム障害は
レノンを(根は孤讀な)天才に

産み墜としてしまつた!

もう君の手

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都築郷夫 ちよつとはみだ詩・❲伍❳ 附・詩人の為のワードローブ集

都築郷夫 ちよつとはみだ詩・❲伍❳ 附・詩人の為のワードローブ集

【題未定】

友達まるで爽やかな日の男女かな
(©都築郷夫)俳句 kigo

 《i》
 男女のこと、私は勘がすつかり鈍つてしまつてさ。なんせこの20年ほど「童貞」である。私むかーしから所謂フーゾクつて苦手で。たまに、男の躰の或る部分が、妙に重苦しくなつてしまふのだが(それは生理的な事なので致し方ない)、ツツイ先生の書かれたマスター·オブ·ベーションにでも成れたらなあ、と。そつちの手も苦手なので

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都築郷夫(つゞき·くにを)の詩と歌と句 act 29 by Tsudsuki, Kunio 附・詩人の為のワードローブ集

都築郷夫(つゞき·くにを)の詩と歌と句 act 29 by Tsudsuki, Kunio 附・詩人の為のワードローブ集

DERBY! なんとその名の伝統的で、かつ派手(ゲイ)な精神に満ちみちていることよ! (谷譲次『踊る地平線』より)

【巻頭の一行から】
 
 文人で「馬好き」な者は多い。いちいち名前を列挙して行くと切りがないので、それは避け、私と馬、とはどういふ関係なのかごく短く語る(谷譲次についても別稿で。彼はtrue giantだ!)。
 實を云ふと、私は競馬つてやつた事ないんで..何せギャンブル音痴である

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都築郷夫(つゞき·くにを)の詩と歌と句 act 28 by Tsudsuki, Kunio 附・詩人の為のワードローブ集

都築郷夫(つゞき·くにを)の詩と歌と句 act 28 by Tsudsuki, Kunio 附・詩人の為のワードローブ集

妹と二人曉露(あかときつゆ)に立ち濡れて向峰(むかつを)の上のつきを見るかも 平賀元義

【引用歌から】

 平賀元義は江戸後期、備前岡山の人。浪人し、獨學でこの萬葉調の歌を打ち立てた。或る意味絶唱とも言へる、

五番町石橋のうへに我が魔羅を手草にとりし吾妹子あはれ

 で令名髙い。浪漫的で、特に(主に遊女だらう)「吾妹子」が出て來る相聞歌が本領。正岡子規は「吾妹子先生」と呼び愛唱した、と言ふ。

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都築郷夫(つゞき·くにを)の詩と歌と句 act 27 by Tsudsuki, Kunio 附・詩人の為のワードローブ集

都築郷夫(つゞき·くにを)の詩と歌と句 act 27 by Tsudsuki, Kunio 附・詩人の為のワードローブ集

それは見るだに気味の悪い死人の肖像画だった。大道絵師が蛇や龍の絵を描くような筆づかいで描かれ、どことなく線香臭く、田舎の葬連の暗い匂いが滲みついていた。生きた人を目の前にしながら、その人の死顔を透かし視ながら描いたのではないかと思われるような絵である。(車谷長吉「なんまんだあ絵」より)

【詩①】

寺山修司に。

詩が書けて困つたことはないが
詩を書くと言ふのに喉が詰まつたことなら
何度でも。

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都築郷夫(つゞき·くにを)の詩と歌と句 act 26 by Tsudsuki, Kunio 附・詩人の為のワードローブ集

都築郷夫(つゞき·くにを)の詩と歌と句 act 26 by Tsudsuki, Kunio 附・詩人の為のワードローブ集

(太山寺)
石の指さすままに花野のみちはまよはず來た 種田山頭火

【つぶやき】

 いきなり呟く。これ語感ちよつと變だな。
 ところで私のいつもの詩だが、私の兄のやうに詩の作法に喧しい人は散文詩だと言ふだらう。たゞ適当に行わけした、随想のやうなもの、だと。
 私としてはそんな事かまやしない。例へばランボオの作品の一部は散文詩だが、立派なものである。文脈外れるやも知れぬが、巻頭を飾つてゐる山頭火の

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都築郷夫(つゞき·くにを)の詩と歌と句 act 25 by Tsudsuki, Kunio 附・詩人の為のワードローブ集

都築郷夫(つゞき·くにを)の詩と歌と句 act 25 by Tsudsuki, Kunio 附・詩人の為のワードローブ集

わたしは傍観しているきりで、あえて手出ししなかった。というのは、二、三度手伝って見ようかという殊勝な心をおこして、巣箱に近づいたとたん、一ぴきの蜂がまっしぐらにわたしに飛びついて上唇の縁を刺す..(杉浦明平『養蜂記』より)

【雑詠・前】

刻んだら錦糸玉子になると云ふ甘い薄焼き不味かつたこと
(©都築郷夫)短歌 tanka

今はない猫が亡霊めいてくる彼女は巷に帰つたゞけだ
(©都築郷夫)短歌

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都築郷夫(つゞき·くにを)の詩と歌と句 act 24 by Tsudsuki, Kunio 附・詩人の為のワードローブ集

都築郷夫(つゞき·くにを)の詩と歌と句 act 24 by Tsudsuki, Kunio 附・詩人の為のワードローブ集

白露やあらゆる罪の消ゆるほど 小林一茶

【雑詠・前】

玉の露みづさかづきに混ぜたれや
(©都築郷夫)俳句 kigo

磊落なる人の立つたるたぎちかな
(©都築郷夫)川柳 senryu

温め酒九月暑きよ風流よ
(©都築郷夫)俳句 kigo

皆文句がありさうに並ぶ朝のホームいづれ詰め込み式の車両だ
(©都築郷夫)短歌 tanka

戯画の中コオロギ唄うが聴こゆるか
(©都築郷夫)俳句

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都築郷夫(つゞき·くにを)の詩と歌と句 act 23 by Tsudsuki, Kunio 附・詩人の為のワードローブ集

都築郷夫(つゞき·くにを)の詩と歌と句 act 23 by Tsudsuki, Kunio 附・詩人の為のワードローブ集

九月一日
羽を伏せ蜻蛉杭に無き如く 髙濱虚子
(星野立子·編『虚子一日一句』より)

【詩①】

氣圧めが下がりをる頭皮の硬さ
(©都築郷夫)川柳 senryu

頭痛から何かを引き出すは容易い
案外な さう云ふもんです
生活の邪魔になるものが
ふと ゲージツの本領を吐いたり

ねえMXXXちやん
女の子に藝を贈ると
まるで「いやげ物」だつたりする?
もし、違ふのなら

私は痛む頭に付いてゐる

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都築郷夫(つゞき·くにを)の詩と歌と句 act 22 by Tsudsuki, Kunio 附・詩人の為のワードローブ集

都築郷夫(つゞき·くにを)の詩と歌と句 act 22 by Tsudsuki, Kunio 附・詩人の為のワードローブ集

梅の木をみづにたてかへよ   海
(『中世なぞなぞ集』より)
字の謎かけ。梅、の木偏を水(さんずい)に入れかへよ - 編者・鈴木棠三氏の解説に拠る。或ひは「見ずに建て替へよ」と掛けたか。

【詩①】
❲Women❳

女性がた、

私はI wanna be adored上等
自分から行くのはな、
こないだ(四半世紀前)で懲りた
何年引きずつたのだ
今はもう..
(混濁してゐる)
ビキニ着れないやう

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都築郷夫(つゞき·くにを)の詩と歌と句 act 21 by Tsudsuki, Kunio 附・詩人の為のワードローブ集

都築郷夫(つゞき·くにを)の詩と歌と句 act 21 by Tsudsuki, Kunio 附・詩人の為のワードローブ集

その爆弾の製造計画には、はじめ俺も荷担していたのだが、中途で除外された。暗殺の仲間から俺や砂馬ははずされた。俺は特に若かったから、ここで死なないで、生きのびて、消えがちのテロリスト精神の火を守れと言われたのだ。(高見順『いやな感じ』より)

【雑詠・十吟】

ノンカフェインで臨む執筆時間には恐らくは蛇が出るイヴ抜きで
(©都築郷夫)短歌 tanka
※これは孤獨感に関する断章であり、女性差別の歌

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