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#小説
『天使の翼』第12章(14)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~
少しは冷静さを取り戻したわたしの視界に、SSIPのエアカーから放り出されたと思しい機材などが、あちこちと見えてきた。パニックに陥っていてさっきまでは見えなったのだが、どうやら、この大雑把な『掃除』、SSIPのメンタリティーそのものの表れのようだ。
シャルルはおろか動くもの、生き物の姿は何も見えない。……シャルルが偵察に出たのなら、付近に民家はないか、今夜をどこでやり過ごすかを探りに行ったとしか
『天使の翼』第12章(12)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~
空と遠くの山々に視線をやった。陽の光が弱ってきている……
――このまま無為に過ごしていては、この文字通り人里離れた僻地で、無防備に夜を迎えることになる。
わたしは、何か大きな手でぐいと現実に引き戻された。
――陽が落ちると相当に冷え込むのではないか?
――いくら乾きやすいハイテク繊維だとはいえ、このまま濡れていては……
――今夜、どこで寝る?
――食べ物は?……水は!
まず、シャル
『天使の翼』第12章(11)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~
動揺していたので射撃……いや、標的の数は分からない……七つ?八つ?……あのデビル・ハンターの襲撃で大混乱に陥ったSSIP部隊は、ほんの2、3機しか生き残れなかったのか……
突然轟音が止み、わたしの見える範囲からは二本、白煙の上がっているのが分かった。
大掃除をした哨戒艇は、まだ『ちり』が残ってないか確認するように旋回した後、悠然と去って行った。
冷静に考えれば、もうこれでSSIPにとっては
『天使の翼』第12章(8)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~
……この状況からして、前席にいた二人、フラージュ少佐とその副官は、死んだか、相当の重傷……いずれにしても、シャルルにこの二人を助け出す余力も時間も、さらに言うなら理由もなかったはずで……だとしたら……無事だったSSIPの隊員が二人の体を持ち去ったか、既にSSIPの救援隊が一度来ている!
わたしの頭は、ようやく回りだした。
(SSIPが、この墜落機を放置する訳がない!)
わたしは、身震いとと
『天使の翼』第12章(7)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~
こんな時なのに、わたしの五感は、水がとても冷たく、そして、とてもきれいに透き通っているのを意識した。水底の茶褐色の砂利がはっきりと見える。薄い茶褐色、濃い茶褐色が斑になって、どこまでも遠浅に続いている……靴底に感じる砂利の感触……
わたしは、息絶え絶えとなって、ガラスのないエアカーのドア枠に取り付いた。……機体番号から、わたしの思い込み通り、乗ってきたSSIP機と知れる……
じゃぶじゃぶと湖
『天使の翼』第12章(6)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~
他に人工物、人影は見当たらない。空を見渡す。何も飛んでない……
わたしは、もうしばらく待ってから、矢も楯もたまらず、エアカーに向かって走り出していた。わたしは、狭まった視界の中で、全身、自分自身の荒い息遣いと地面を蹴る靴音に包まれた。
わたしは、どうかしていた。死を連想させる不安がパニックを起こしたのか……。わたしがシャルルに助けられたのだとしたら、あの沈みかけたエアカーにシャルルが乗ってる
『天使の翼』第12章(5)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~
窪地の縁の少し手前まで来て、遥か遠く万年雪を頂いた連山が視界に入ってきた。記憶通り。
風の音しか聞こえない。
わたしは、思い切って縁の上に頭半分目から上だけ出した。
…………
一つだけ、墜落前の記憶と違う。
50メートルほど先に、かなり大きな湖が広がっている。波が立っているのか、連山の上の太陽の光がまばゆく乱反射している。
わたしは身を乗り出した。
――逆光の中、湖岸からさほど遠く
『天使の翼』第12章(4)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~
そして、歓喜がわたしをおそった。――シャルルだ!シャルルに違いない。わたしを助けた彼は、わたしを茂みに隠して、周囲の偵察に行っているのだ!
(シャルルの配慮を無にしてはいけない)
わたしは、用心深く行動することにした。SSIPの連中は相当やられていたけれども、全滅とまではいってないだろうし、増援部隊が来るに違いない――いや、もう来ているかも知れない。デビル・ハンター達だって、わたし達のような
『天使の翼』第12章(3)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~
一陣の風が砂埃を舞い上げた。夕方というほどではないが、陽がだいぶ傾いてきたようだ。とにかく寒い。
わたしは、改めて自分の身なりを見直した――その時のわたしはとても混乱していて、物事の優先順位を主体的に考えられるような状態ではなかった――。わたしのヘビー・ローテーション、お気に入りの黒のコート、旅人の頼もしい味方、全天候型のごつい黒のブーツ……そして、ラプラスの宇宙港にあったジーンズ屋さんで買っ
『天使の翼』第12章(2)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~
わたしが最初に考えたのは、近くに誰かいないかということ――敵であるSSIP,シャルル、ローラ……そしてデビル・ハンター……
わたしのいる低木の茂み――半径3標準メートル程のごく小さいもの――は、砂地の窪地にあった。窪地のふちは、風化した砂岩で……つまり、わたしは、あそこまで這い出していかなくては、周囲を観察することはできない。少なくとも今見える範囲には誰もいないし、倒れてもいない……エアカーの