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#読書

女性は全裸で寝ることを誓わされていた中世 * ベッドの文化史

女性は全裸で寝ることを誓わされていた中世 * ベッドの文化史

欧米のドラマや映画を見ていると、男女ともに下着だけ(女性はキャミソール含む)で寝ているのをよく見かける。
特に深く考えず、エンターテイメントに於ける単なるサービスショットだと思っていたのだが。

アメリカのドラマの中で、キャミソールのことを寝間着と和訳されていたのを見て、疑問が生じたのだ。

彼らにとって、下着は寝間着なのか?

この疑問を解消すべく、私は本を手に取った。

■結論
欧米人にとって

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読書感想文*幸せなひとりぼっち

読書感想文*幸せなひとりぼっち

ものすごく頑固で実直、そして死ぬのが下手な爺が、隣に越してきた朗らかなイラン人の妊婦とその家族に巻き込まれることで徐々に心を開き、自殺を諦める話。

こう単純化して書いてしまうには少しもったいない。
この作品を個人的に気に入った最たるポイントは、リアリティ。
決して運命や偶然で感動を誘わないところが素晴らしい。

映画版の爺の方は笑ったり子どもをあやしたりといったシーンがあるけれど、小説版では、感

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読書感想文*オリーブ・キタリッジの生活

読書感想文*オリーブ・キタリッジの生活

オリーブ・キタリッジという名の女性が住む町の、一見普通に見えるが少しずつ毒のある人々を描いた短編集。

街の住人は他人の不幸な噂話に飢えており、誰かに秘密が漏れれば立ちどころに町中に広がる。

町の住民も悲喜交々だが、家族の関係性の話でもある。

私の母は、オリーブ・キタリッジのような人だ。
ネガティブ思考で皮肉屋。場の空気を悪くする達人。
そんな私もそうかもしれない。

作品全編を通してオリーブ

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読書感想文*旅立つ君へ贈りたい ― 若き詩人への手紙 ―

読書感想文*旅立つ君へ贈りたい ― 若き詩人への手紙 ―

春はお別れの季節。
新しい環境へ旅立ってゆく仲間たちに贈っても良いかもしれない内容だった。
何より、私が一番励まされた。

概要は以下のとおり。

・自分の承認欲求のために詩を書かないこと。
・格好つけずありのままの自分の心のありようを書くこと。
・『無難』に逃げず、オリジナリティを追求すること。
・孤独を恐れず自らを見つめ、書かずにいられない気持ちを大切にすること。
・心の中の未解決な問いに性急

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読書傾向 2021年1月の本棚

読書傾向 2021年1月の本棚

asasuoの本棚 (浅蘇芳) - ブクログ

ものすごく統一感がない。
1月だけ見ても雑食感満載の本棚。
興味が定まらないというか、幅広いというか。

これから私は、どんなことに興味を持つのだろう。
自分でもワクワクする。

読書感想文*アンナ・カレーニナという名のメンヘラ不倫女

読書感想文*アンナ・カレーニナという名のメンヘラ不倫女

ロシアの文豪トルストイが書く小説は小難しいかと思いきや、リョービンという名の登場人物が笑えるキャラとして描かれており、主役のアンナよりも好きになってしまった。

これは読んでもらった方が面白さが伝わるのだが、リョービンの恋愛話に始まり、失恋、身近な生と死、政治的な係り、社交界での振る舞い、至る所で天然を発揮するのである。

表題のアンナという夫人による若いイケメン将校との不倫恋愛は、突き詰めれば自

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『椿姫』の『乾杯の歌』を結婚式で採用する是非を問う

『椿姫』の『乾杯の歌』を結婚式で採用する是非を問う

椿姫と言えば娼婦の悲恋小説であり、ヴェルディの歌劇、とりわけ豪華絢爛な『乾杯の歌』が有名である。

この曲は、娼婦であるマルグリット(劇中ではヴィオレッタ)が、治らぬ病の苦しみを紛らわせるため、なかば自暴自棄で開催した徹夜の乱痴気パーティを表現したものだ。
※上の動画は、最も小説のイメージを再現しているものをチョイスした。

当時のパリでは貴族社会にあって、平民と一度でも体の関係を持ってしまった女

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読書感想文『人間の運命』

読書感想文『人間の運命』

第二次世界大戦中と、その後の話。
本が古すぎるので、ブクログにリンクを貼っておく。

■表題作『人間の運命』第二次世界大戦で家族を失ったヴォロネジ人(ソビエト兵)のソコロフは、身寄りのない孤児の少年に、自分が父親であると名乗り一緒に旅をする。
少年はソコロフに懐き、彼のことを父親だと信じている態度を貫くが、実は疑念をもっている風でもあった。
少年ヴァーニュシカは、幼いながらもソコロフの親切心を無下

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比較書評 『11分間』,『七つの人形の恋物語』

比較書評 『11分間』,『七つの人形の恋物語』

セックスは正味11分間。
―― その11分間に至るまでの会話と、服を脱いだり着たりシャワーを浴びるといったことを除けば ――。
マリーアはそうして『11分間のために付随する時間』を売っている娼婦である。

愛とは何か。
セックスとは何か。
事の最中にオーガズムを得られない自分は異常なのか。
彼女が赤裸々に綴る日記を織り交ぜながら、進行するストーリー。

巻末のあとがきによると、ソニアという仮名の娼

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ウィリアム・トレバーという作家とアイルランド

ウィリアム・トレバーという作家とアイルランド

先日読了した小説『密会』 から派生して、アイルランドの歴史に興味を持ち、入手した歴史本に目をとおしてみたところ、思った以上に味わい深い作品だったのだと気づいた。

図説 ケルトの歴史: 文化・美術・神話をよむ という本で少しは予備知識を得ていたが、全体を捉えるには情報不足だった。

アイルランドは、イギリスのガキ大将に搾取されている歴史が垣間見え、政治的、宗教的な理由による生活のあらゆるパラドック

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読書感想文『密会』

読書感想文『密会』

初めて ウィリアム・トレバー の作品を読んだ。
この作家の作品はスルメみたいで、噛めば噛むほど味が出る。
全編2度読みして何かしら浮き出てくるものがあった。
特に、アイルランドとイギリスの時代的背景を知っていると、さらに奥行きが出てくるはず。

収録作品は12作品。
気に入った作品をピックアップして感想を書こうと思う。

01. 死者とともに
02. 伝統
03. ジャスティーナの神父
04. 夜

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