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海外セラピストの目

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海外で活動する日本人心理セラピスト達による、創作物のストーリーの裏に隠される心理現象を様々な視点から読み解いていくリレーブログです。
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記事一覧

『日本人の心と社会の成り立ち 〜「甘えの構造」から見えること〜』【#2】

『日本人の心と社会の成り立ち 〜「甘えの構造」から見えること〜』【#2】

前回までの内容

第一回目はやすのさんからのエントリーで、土居健郎の著書「甘えの構造」の第一章「甘え」の着想から第二章「甘え」の世界までの内容を踏まながら、アニメ「鬼滅の刃」の社会的大ブームを解き明かしてくださいました。なぜ日本では、アベンジャーズよりも鬼滅の刃」が社会的な大ブームを起こしたのか?やすのさんの記事を読むと、ハリウッドのアベンジャーズに比べると「鬼滅の刃」には、日本人にはお馴染みの感

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『日本人の心と社会の成り立ち 〜「甘えの構造」から見えること〜』【#1】

『日本人の心と社会の成り立ち 〜「甘えの構造」から見えること〜』【#1】

日本人の心に響く?鬼滅の刃の人気の理由から振り返る日本的·日本らしさの根底に流れるもの『 THIS IS US/ディス·イズ·アス 』の物語考察では、ある一つの家族の姿を心理学の視点を交えながら振り返ってみました。

その中で描かれるのは、人間なら誰もが何かしらの形で経験する自己成長までの葛藤や、他者との関わりの中で見えてくる様々な愛の形や人の想い。ドラマが語るストーリーには、人類の普遍的な営みが

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『 THIS IS US/ディス・イズ・アス 』の物語考察【#4】

『 THIS IS US/ディス・イズ・アス 』の物語考察【#4】

「世代間に紡がれる希望の光」〜ケイトの物語〜前回やすのさんの記事では、ランドル自身が、育ての親であるジャック・レベッカ、そしてランドルの産みの親であるウィリアムとローレルという4人の人生を知り、それぞれの人生を理解をしてゆく過程が描かれていました。その過程で、自分と親たちへの「許し」が起こり、それにより「不完全な存在であることこそが完全な人間性である」という自己受容という癒しをもたらしたことが書か

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『 THIS IS US/ディス・イズ・アス 』の物語考察【#3】

『 THIS IS US/ディス・イズ・アス 』の物語考察【#3】

「不完全な存在であることが完全なる人間性」〜ランドルの物語〜

前回の記事では、ゆうきさんが、レベッカとジャックという一組みの夫婦の形から見えてくる人間性についてを考察してくださいました。そこで紹介される「不完全な存在であることが完全なる人間性である」という捉え方は、わたしたちが日々生活する社会に目を向けてみると、かなり相反する真逆の感性であると言えるかもしれません。

機械化が進み、ささいな間違

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『 THIS IS US/ディス・イズ・アス 』の物語考察【#2】

『 THIS IS US/ディス・イズ・アス 』の物語考察【#2】

『 THIS IS US/ディス・イズ・アス 』の考察がスタートしました。1回目の前回は、やすのさんが、ケヴィンの人生に焦点を当てながら、関係性を通しての成熟プロセスを考察してくれています。ケヴィンの迷っていた心が、様々な出会いとその関係性によって統合へ向かうプロセスがとてもよく理解することができました。

今回は、物語の始まりとも言えるカップル、ジャックとレベッカに焦点を当て、人間性とは何かにつ

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『 THIS IS US/ディス・イズ・アス 』の物語考察【#1】

『 THIS IS US/ディス・イズ・アス 』の物語考察【#1】

ケヴィンから見えてくる世代間トラウマ前回のゆうきさんの記事では、ハンドメイズテイルの主人公であるジューンと宿敵セリーナから見えてくる個人の成長の過程を、彼女と母親たちとの親子関係や、母親たちが生きた社会背景や当時のジェンダー観によって生み出された世代間トラウマを振り返りながら考察してくださいました。

そしてゆうきさんから受け取った次のバトンのテーマは、世代間トラウマ。このトラウマが、どう親から子

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ジェンダーとメンタルヘルスのこと~ハンドメイズテイルの考察~【#12】

ジェンダーとメンタルヘルスのこと~ハンドメイズテイルの考察~【#12】

前回のやすのさんの記事で、ハンドメイズテイルで重要な役である、ギレアド国の高官の妻・セリーナに焦点に当て、喪失感と、その喪失の「哀しみ」に対しては、その現実を見ることへの恐れやアンビバレントな気持ちの間で揺れ動く姿も書かれ、そんな彼女に訪れる変化も書かれています。そしてセリーナのように、哀しむことがでいない状態が、個人の精神にどのように現れ、またそれが人間関係や社会にどのような影響を与えるのか、個

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ジェンダーとメンタルヘルスのこと~ハンドメイズテイルの考察~【#11】

ジェンダーとメンタルヘルスのこと~ハンドメイズテイルの考察~【#11】

セリーナから読み解く、ハンドメイズテイルに描かれる希望の在処(※ドラマのネタバレがかなり含まれる記事です)

前回の記事でゆうきさんは、「その人にとっての救いとは何か?」というテーマから、ハンドメイズテイルに描かれる様々なエピソードを通じて見えてくる人物たちの生き方、そしてそこに映し出される「尊厳」と「希望」と、彼らの「生きる力」の源になるものについてを考察してくださいました。

次の第6シーズン

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ジェンダーとメンタルヘルスのこと~ハンドメイズテイルの考察〜【#10】

ジェンダーとメンタルヘルスのこと~ハンドメイズテイルの考察〜【#10】

人は何を持って救われるのか?

(※ドラマのネタバレも含まれる記事です)

前回のやすのさんの記事では、「ハンドメイズテイル〜侍女の物語〜」に出てくる「召使」という役割を与えられたマーサに焦点をあて、性別役割分業や客体化が招く女性と女性の関係性、また共感から生まれる繋がりと団結について書いてくださいました。

Huluで放送されているハンドメイズテイルは、北米では2022年秋からシーズン5に入って

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ジェンダーとメンタルヘルスのこと~ハンドメイズテイルの考察〜【#9】

ジェンダーとメンタルヘルスのこと~ハンドメイズテイルの考察〜【#9】

ハンドメイズテイルのマーサから学ぶ人間愛ゆうきさんから受け取った次のバトンのテーマは、ハンドメイズテイル(侍女の物語)の中で描かれる女同士の関係性についての考察。

前回の記事でゆうきさんは、男女の関係性、特に、ギリアドのようなセクシャリティや恋愛要素が強く抑圧された社会の中で起きる性を巡るドラマについて、男女の思惑や感情が絡み合う関係性がどのような心の動きを起こすのかを説明してくださいました。

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ジェンダーとメンタルヘルスのこと〜ハンドメイズテイルの考察〜【#8】 

ジェンダーとメンタルヘルスのこと〜ハンドメイズテイルの考察〜【#8】 

抑圧された社会構造と恋愛・セクシャリティ

前回のやすのさんのブログには、個人的にとても心が揺さぶられました。「ハンドメイズ・テイル〜侍女の物語〜」の登場人物としては欠かすことのできない、ギリアドという国を作った一人であるフレッド・ウォーターフォードを通して見える、家父長制、ジェンダー問題、また個人の強硬な行動の裏にある心の脆弱さなども見え、社会全体だけではなく、個人の内側で起こっている分離と抑圧

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ジェンダーとメンタルヘルスのこと~ハンドメイズテイルの考察〜【#7】

ジェンダーとメンタルヘルスのこと~ハンドメイズテイルの考察〜【#7】

フレッドから見えるジェンダーとメンタルヘルス前回の記事でゆうきさんは、ハンドメイズテイル(侍女の物語)で強烈なインパクトを持つリディア叔母の視点を通じて、彼女の心の揺れ動きと、正義の名の下、彼女を暴力に突き動かす力を与えてしまうギリアド(全体主義&家父長制)社会の、暴力の構造を洞察してくださいました。

ゆうきさんのリディア叔母の考察で印象的だったのが、リディアが抱えるスプリッティング(聖母と娼婦

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ジェンダーとメンタルヘルスのこと〜ハンドメイズテイルの考察〜【#6】 

ジェンダーとメンタルヘルスのこと〜ハンドメイズテイルの考察〜【#6】 

リディア叔母から見えるジェンダーとメンタルヘルス

前回の記事でやすのさんは、ハンドメイズテイル(侍女の物語)に登場する、性的マイノリティであり、ハンドメイドでもあるエミリーに焦点を当てながら、ギリアドの目指す「家族」という枠組みの中で生まれる暴力と、その世界で生きる性的マイノリティについて書いてくださいました。

ハンドメイズテイルには、デストピアで生きる様々なキャラクターが、実に生き生きを描か

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ジェンダーとメンタルヘルスのこと〜ハンドメイズテイルの考察〜【#5】

ジェンダーとメンタルヘルスのこと〜ハンドメイズテイルの考察〜【#5】

なぜ、今、「ハンドメイズテイル」を話すべきなのか?ゆうきさんは前回の記事で、客体化に焦点を当て、ドラマ「ハンドメイズテイル」の世界で描かれる階層的構造の中で生まれる役割と客体化、そして暴力の関係を考察してくださいました。

その中で、ゆうきさんは、主人公ジューンが、自分の人間性と、与えられた役割・客体の間で揺れ動く心情に触れていました。

「ハンドメイズテイル」はフィクション物語であるものの、キャ

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