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詩集

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詩を綴っていくマガジンです。
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2022年2月の記事一覧

揺れる光。

揺れる光。



ゆらゆらと、揺れる光。
届きそうで、届かない。

わたしの心を、もっと軽くして。もう一度、手を伸ばす。

Shaking light.
It seems to be reachable, but it cannot be reached.
Lighten my heart and reach out again.

冬の枯れ木(詩画集)

冬の枯れ木(詩画集)

アトリエから見える枯れ木
ふと
Björkの歌声に涙して
夕暮れと冬の空気
そろそろ
子供が帰ってくる
あと何年
生きられて
あと何枚
描けるの
私の光は
まだ見つからず
・・・
Dead tree seen from the atelier.
Suddenly I cry at Björk's singing voice.
Dusk and winter air.
The child is

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嵐は過ぎ去った(詩画集)

嵐は過ぎ去った(詩画集)



嵐は過ぎ去った。
後には大きな爪痕が残った。
そこに、二人の小さな兄妹が佇んでいた。

嵐は、
兄の大切にしていた名誉を奪い、
妹の大切にしていた聖書を燃やした。

優しかったおじいさんは、戦地に赴いて、
仕立て屋の友人に銃を向けた。

おばあさんは、天に召される前に、
虚空に向かって、そっと不義を告白した。

猫は、誰かのそばにいることを諦めて、
大きな伸びをした後、屋根から飛び去っ

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下地塗り(詩画集)

下地塗り(詩画集)



静寂の青を
塗り重ねている

下地塗り
絵画は産声をあげた
地の底から
響き渡る
声に耳を傾ける
そして
運命の儚さを知る

記憶を失って
生まれてくる色
それは盲目の色
塗り重ねる
溶けて
重なり合って
光を
取り戻す
影と引き換えに
世界の揺らぎを知る

10回重ねれば恋を知り
20回で自立を知る
30回、40回、50回
まだまだ輝ける色
60回、もう遠くへ来てしまった
70回、80回

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霧(詩画集)

霧(詩画集)




霧の中
愛犬との散歩道


ぼんやりと
光る霧
幻想的
というより
怪しさすら感じる
乳白色


一番新しい
霧の記憶
クロアチアの早朝
宿から出て
霜の芝生を歩いた
シャカシャカと
小気味良く
潰れる音
どこかで
朝食の香り
深い霧で
先は見えずとも
確かに感じた
温もり


一番古い
霧の記憶
父と
石を探しにいった
河原
庭園を支える
石の正面というものを
はじめて知った

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夜の爪痕(詩画集)

夜の爪痕(詩画集)



朝起きてアトリエに入ると
何者かの爪痕が残ってた


それも深い夜の仕業だ

引きずるような
かきむしるような
断末魔の叫びような
壮絶な気配を
色濃く残しながら
それでも
朝の光に包まれて
静謐な存在として
そこにあった

爪痕
純粋なまでに
形になりたいという
エネルギー
生きてきた証
意義を持ちたい
色を持ちたい
たとえ狂えども
真理を知りたい

生きたい
ありのままに
生きた

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雪の残した余白(詩画集)

雪の残した余白(詩画集)

一夜明けて
東京は晴天
雪景色と水たまり
雪かきに勤しむ人

強くなる日差し
空気の質量が軽くなる
見上げれば
薄青い空

ここは東京
小さな雪は
ハラハラと落ちて
儚く消えた
そして
手のひらほどの
空白が残った
その重さは
21グラム
魂の質量と同じ

薄青い空
宇宙一軽い水素と
生命を育む酸素の
美しいリズム

みずみずしいほどの
現象が
目の前にある
これが
命というものかしら

溢れる色。(詩画集)

溢れる色。(詩画集)

つま先から
細胞の1つ1つが
生まれ変わる

その衝動は
やがて
全身に伝わり
溢れ出る色

急激な変化に
己を保ちながら
じっと
見据える
その細胞は
話が通じる相手なのか
何を求めているのか

変わりゆくもの
作られるもの
はじけて
消えていくもの

底の底から
うねるように
湧き上がる色

目が覚めれば
いつもの日常
ただ漠然と
存在する
慈しみ
覚悟
向き合う姿勢

これはなん

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ある兄妹の物語。(詩画集)

ある兄妹の物語。(詩画集)



(物語とは事実に基づいたメタファーである)

ある村に、二人の小さな兄弟がいた。
とても貧しい暮らしゆえに、兄は街に出稼ぎに行き、妹は家に残った。


ーーーーーーーーー
<妹の物語>
彼女は、一人で家を切り盛りしなければならなかった。
両親は農作業で家を空けることが多かったので、朝、ヤギに餌を与えることから始まり、晩御飯の後片付けまですると、夜も更け、クタクタになって寝床に着くのであった

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奇怪な生き物(詩画集)

奇怪な生き物(詩画集)

「奇怪な生き物」

品川駅。冷たく硬い道に、突如現れた奇怪な生き物。
目の前を素早く横切った姿にゾッとして足を止める。カマキリの変種系。巨大なアメンボ。自身の吐く糸に絡まったタランチュラ。なぜこんな生き物がここに。人工物と有機物の間に存在する違和感。
隅っこで動かなくなった彼奴に恐る恐る近づくと、何重にも絡まった埃の綿だった。

ひとしきり失笑した後、彼奴を動かしていた風が、私の体に触れてきた。台

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暗闇の8ビート(詩集)

暗闇の8ビート(詩集)



雪の降る車窓をぼぉと見ていたら、向かいの隅に座る一人の女学生に目が止まった。
彼女は目を閉じうつむいて、膝に置いたポシェットに、小さくリズムを刻んでいた。
イヤホンから流れる音に合わせて、ドラムの練習をしているのだろう。

最初は、シンプルな8ビート。しかしだんだんとリズムは複雑化していき、ペダルの動きまで加わってくる。
相変わらず微動だにしない身体のほんの一部が、まるでムクドリが必死に羽ばた

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稀有の雨音(詩画集)

稀有の雨音(詩画集)

独り 
聴きて
落ちたる雨音に
ただ
筆を動かして

突然
静を切り裂く
来訪者に抗えず 
乱れ波立ち
湧き上がる
漆黒の熱

遠のいた雨音が
再び
脆弱な魂を
何事も無く
包み込み

もはや
気力失せ
この白紙に
穢れを残す
罪深き所業

後に残るは
鈴虫の音

いつだって心は自由(詩集)

いつだって心は自由(詩集)

大好きなスナフキンの
キーホルダーをカバンにつけて
「自由」にそっと寄り添う

愛しの彼は
森の奥深く
焚き火をしながら
ひとり
アコーディオンを奏でて
遠くの故郷を想う

帰る場所があるから
孤独は
自由に昇華する

アトリエの棚の上に
アコーディオンが
置いてある

その昔
長野の骨董屋で
衝動買いをした
その楽器の音色を
わたしは
数えるばかりしか
聴いていない

しがない部屋で
吐く息も白

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