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終わらない疑問 短い短い物語。

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ちょっとした物語。誰にもこの疑問を未だに聞けない。
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#小説

走っても、正しいとは限らない。16/20

走っても、正しいとは限らない。16/20

前に進んでいた大人の背中。ずっと追いかけていたはずなのに、気づけば私は全く違う場所にいた。乗る船を間違えたように、別の場所に私の体は向かっていく。言い訳がひしめき合う中で、作り笑顔。なぜかそんなことができるようになっていた。嫌われないように。好かれるように。「あざとさ」が混じった笑顔。昨日まで追っていたはずの大人は、前よりも距離が大きく出来ていた。……………こんなつもりは無かったのに……どうして、

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夕日は静かに影を作った 15/20

夕日は静かに影を作った 15/20

夕焼けが眩しい時間に散歩をした。風が私の背中を押すが、歩く速度はいつもより遅い。どの道も知っているのに、私の心は迷子だった。頭の中で絡み合った言葉。一直線にならない進む道。歩くことで気を紛らわせた。ふと顔をあげると、子供達とすれ違った。上る坂道の途中で。おもちゃを片手に無邪気に走る子供。その姿を振り向きながら見続けた。離れていく無邪気な声が、私を遠い記憶にいざなう。あの頃知らなかった大人の心。無計

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川はただ冷たかった。14/20

川はただ冷たかった。14/20

帰りの道、川と共に帰った。寂しさを埋めるために、どこかで葉を川の流れに乗せた。立ち止まって、じっと見つめる。流れの頼りはいつも水の量で決まる。時には急ぎ、時には緩やかに。どこかの枝に引っかかっては止まり、流れに負けては沈んでいく。いくつも流した葉を私は全て見失ってしまった。まるで人の感情のようだ。次にどうなるのかは、誰も教えてはくれない。奪われていく自由。誘われていく思い。溺れていく自身。私と葉は

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トンネルの向こう側 13/20

トンネルの向こう側 13/20

目を閉じ見える光景はいつも同じ。記憶の中に、いつも後ろ姿の人が現れる。距離は遠く、時間が経てばまた離れていく。その大きな背中を私はだた見ていた。手には遊び道具を持っていた、無邪気な頃の記憶。距離は変わらず離れていく。その感覚を、その距離を、私はどう感じたらよかったのだろうか。聞きたかった事も、話して欲しかったことも、その光景が私の言葉を奪っていく。あ…手から何かが落ちて、割れた。それはたしか大切な

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指切りの約束。 12/20

指切りの約束。 12/20

「また遊ぼう」「また会おう」「またいつか」…守れない約束ばかり。会いたい時に限って、状況が言い訳を作る。押し迫って来る責任と「理想の自分」像に耳を傾けたら、私の時間はどんどん削られていく。何が大切か…考えないように自分の直感で走る。走る速度が上がっても、これだと確信するものは未だ見えてこない。止まることが必要だったのか。こけて傷を作った方が良かったのか。疑問が多い過去を振り返る時は決まって、これで

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囲まれた、冷たい時間 11/20

囲まれた、冷たい時間 11/20

白いキャンパスに色を塗っても塗っても私の色は霞むばかり。意識は飛んで、自分が何をしているのかわからなくなる。何のためにやっているのか、どうしてこの道を選んだのか。しかるべき、目的を私はまだ知らない。目線をゆっくり上げて、目があった鏡の自分に手を近づけても頭の声は消えない。冷たい感覚が鏡に触れるのを拒んできた。机に頬杖をついて考えても、あざ笑うかのように強い風が邪魔をしてくる。書いて見たの文字に異質

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終わらない疑問《終わり》10⁺/10

終わらない疑問《終わり》10⁺/10

本日で『短い短い物語』一旦終わり。毎回コメントやスキ頂けて嬉しかったです…!ここだけの話、コメントは画面写真?を撮っていました。つい嬉しくて…(笑)

今回の内容は、恋した時の迷い、無力な叫び。誰かの声にカッコつけたくなったり、素直になれなかったり…。主に「若さ」「未熟さ」「耳障りの声」が大きなテーマでした。個人的には、「繰り返して、僕は…繰り返して。」が印象的。https://note.mu/a

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変えたいのは、なんだったかな。10/10

変えたいのは、なんだったかな。10/10

気分がグッと下がる瞬間がある。僕を無理にある型の箱に詰めようとする時だ。その型でなければならない、と。どんどん押しつけてくる。僕はキャリーバックではないのに、こぼれた気持ちを箱に詰め込もうとする。どうしようもない状況に逃げ出した。景色を見たくなるんだ。この感情が早く流れていきますように、と。ほとんどの事は流れないけど。どんなどん底だと思える状況で苦しんでいても、世界は冷たく回っている。どんなに泣き

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考える時間なんていらない。9/10

考える時間なんていらない。9/10

風があっちから、そっちから私の髪を揺らす。好き勝手に動く風は誰のせいにもならない。風はどう動こうと自由を許させている。いったりきたり…。風は私で遊ぼうとしている。そんな独り言を言って、押しつける向かい風の中、自転車をこいだ。真っすぐ続く道。風から守ってくれる建物や、乗り物はここにはない。ただ自転車のペダルを漕ぐことだけが私を前に進めてくれる。進んだ先に何があるのか、なんて考えなかった。努力したらい

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手で耳を強く塞いだ 8/10

手で耳を強く塞いだ 8/10

そんなことしたら、嫌われるよ?そう言って私との距離を詰める。さっきまであれだけ広がっていた視界が何人かの人に囲まれていく。気づけば私はしゃがんでいて、たくさんの言葉を投げられていた。私は自由だったはずなのに、私は手を伸ばしてもその外から出られなくなっていた。1つの行動に多くの監視の目と、批判の口先。…………え、違う!違うッ!!そんなつもりじゃないのに、笑顔も涙も否定される。感情を表現しただけなのに

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波だけ私の隣に 7/10

波だけ私の隣に 7/10

感情の波が押し寄せて来たら、ずっとその波に飲み込まれていた気がする。全身を覆いかぶさって私を波の中に引きずり込む。その波のせいで、人に伝え方を間違えたり、横暴になったりしていた。だって、仕方ないじゃん。感情の波が来るんだもん。私のせいじゃないよ。といいわけをして。自分の行動も感情も否定を続けていた。でもわかったんだ。波に飲み込まれていたんじゃなくて、自分から飲み込まれに行っていたことに。大きい波が

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僕を捉えてやまない 6/10

僕を捉えてやまない 6/10

大勢の人が歩く道で私は止まって振り向く。振り向いても誰もいないなのに。いつも後ろばっかり見てしまう。道には一定に流れる皆の速度を乱さないように同じスピードで歩く人達。振り向いた瞬間にぶつかってしまうんだ。そして、後ろに気を取られている僕を異物を見るように、にらんでまた流れに戻っていく。まだそんなところに居るんですか?早く進んでもらわないと困りますよ。上の方から誰かが怒鳴って来る。いつもならその怒鳴

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グラつく感情、カッコ悪い自分。5/10

グラつく感情、カッコ悪い自分。5/10

毎日の流れの中で君が突然現れた。流れが大きく変わって、いつもの平坦な感情がぐらつくようになった。自分の気持ちを上手く表現することが難しんだ。ただのメールの待つ時間を何回も確認したり、会う時間はギリギリに行ってたのに、なぜか30分前に来てしまう。キミと関わる時間にどうしてもなさけない自分になってしまう…。そんな嫌いな自分でもいつも隣で笑ってくれる。その笑い声でやっと安心するよ。時々、擦れ違った時にカ

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掻き分けて掻き分けて、見つけたい答え。4/10

掻き分けて掻き分けて、見つけたい答え。4/10

紙にいくら自分の気持ちを書いても、自分はどんどん遠くにいく。自分で書いた気持ちでさえも、自分じゃない気がしてくる。目の前に広がる白いノートに綴った思いは誰かのつまらない話に見えてきた。何時間もかけて書いた紙を、手で捻り潰して部屋に投げ捨てた。

そんなに考えなくてもいいじゃん、もうやめなよ、意味ないんだし、バカして忘れなよって言われる…。そんな人を睨み続けた。僕は答えを知りたいんだ。貼り付けた笑顔

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