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僕を捉えてやまない 6/10

大勢の人が歩く道で私は止まって振り向く。振り向いても誰もいないなのに。いつも後ろばっかり見てしまう。道には一定に流れる皆の速度を乱さないように同じスピードで歩く人達。振り向いた瞬間にぶつかってしまうんだ。そして、後ろに気を取られている僕を異物を見るように、にらんでまた流れに戻っていく。まだそんなところに居るんですか?早く進んでもらわないと困りますよ。上の方から誰かが怒鳴って来る。いつもならその怒鳴り声に耳を傾けていたけど、僕は後ろに走った。人にどんどんぶつかって進みにくい。けど、走りたかった。みんなと同じ、みんなの流れに従うなんて、僕じゃないと思たから。前に広がる世界よりも後ろで何かが僕を待っている感じがした。走ってそれが見つかるわけじゃないけど、走っていたかった。