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走っても、正しいとは限らない。16/20

前に進んでいた大人の背中。ずっと追いかけていたはずなのに、気づけば私は全く違う場所にいた。乗る船を間違えたように、別の場所に私の体は向かっていく。言い訳がひしめき合う中で、作り笑顔。なぜかそんなことができるようになっていた。嫌われないように。好かれるように。「あざとさ」が混じった笑顔。昨日まで追っていたはずの大人は、前よりも距離が大きく出来ていた。……………こんなつもりは無かったのに……どうして、……私は、ここにいるのだろう…。下を向いて口から出た言葉。その言葉は無残にも、耳障りな陰口と共に消えた。まるでビー玉が床に散らばるかのように、儚く誰にも届かない。泣き崩れても、とうに失ったしまった時間は戻ってこなかった。