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終わらない疑問 短い短い物語。

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ちょっとした物語。誰にもこの疑問を未だに聞けない。
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終わらない疑問《6月分終わり》20⁺/20

終わらない疑問《6月分終わり》20⁺/20

本日で2回目の連載終わり。この作品を書いていた頃(5月末)身体中に蚊に刺されて、絆創膏だらけだったでした。

毎年蚊にはモテます。片手4つ、片足5つ刺されてしまうので、隠すために絆創膏を…。日差しが強いなか、暑いのに長袖を着ていました…。

さて、今回のテーマは『通り過ぎた時間に、また私たちは想いを馳せる』前回よりも大きな時の中で感じる想い…。後悔と共に交わした言葉。作品は風景を見て作ったものが多

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もう来なくていいよ、こんな毎日。20/20

もう来なくていいよ、こんな毎日。20/20

駅に降りた瞬間、体のだるさに吸い込まれた。面倒臭そうな顔が隠せず、髪を無造作にぐしゃぐしゃと触った。通り過ぎる人たちはどこに行くのだろう…。

階段を目指す足、ぶつかった合った肩、疲れを隠せない同じように呪われた顔。みんな同じ紙袋を被っているように見えきた…。気味が悪い。酷く気分が悪くなりながら、会社に向かう。この時流れを私はあと何年も続けるのだろうか…。そう自分に聞くとさっきまで聞こえていた

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音のない世界。19/20

音のない世界。19/20

食器を洗う音、ミシンをかける音…。寝る前に暗い部屋から見える光の先で、いつもなる音。私より寝るのが遅かったはずなのに、早く起きてご飯を作りながら笑顔で迎えてくれた…。

優しさ音の夜。あの音が私の子守唄だった。が、幼い頃から聞いていた音は今はもう無い。時と共に奪われてしまった。あの頃もっと感謝すべきだったのに、私の未熟さから伝えることが出来なかった。音を思い出せば、懐かしい優しさと罪悪感が絡み

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水しぶきは、たった一瞬。18/20

水しぶきは、たった一瞬。18/20

一定に流れる水をぶち壊したくなった。目に入った川の近くまで降りて、どこにでもある石を拾い投げた。投げた石は水しぶきを上げて、私に歓喜と達成感を与えてくれた。投げ始め何分経っただろうか、私は無意識に石を投げ続けていた。それは投げなければいけないような…そんな義務感があった。投げるたびに後ろから誰かが迫ってくる。分かっていた。いつもこうなることは……でも、そんなことはどうでもよかった。迫った奴の手が肩

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帰る場所。17/20

帰る場所。17/20

電車から見える景色が銀色から、緑色になっていく。鼓動は緩やかになり、優しいため息をする。故郷から帰る時はいつもこうだ。忘れていた心の安堵に肩の力は簡単に抜け、緊急の日々はもはや嘘のように感じる。電車を降りて大きく吸った息で瞳を閉じれば、包み込まれた気分になった。実家に帰ればいつも食べられない手料理が私を待ち、頬いっぱいに、ほうばっりながら、日々の生活についてああだこうだ言って食卓を囲む。あの時、交

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走っても、正しいとは限らない。16/20

走っても、正しいとは限らない。16/20

前に進んでいた大人の背中。ずっと追いかけていたはずなのに、気づけば私は全く違う場所にいた。乗る船を間違えたように、別の場所に私の体は向かっていく。言い訳がひしめき合う中で、作り笑顔。なぜかそんなことができるようになっていた。嫌われないように。好かれるように。「あざとさ」が混じった笑顔。昨日まで追っていたはずの大人は、前よりも距離が大きく出来ていた。……………こんなつもりは無かったのに……どうして、

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夕日は静かに影を作った 15/20

夕日は静かに影を作った 15/20

夕焼けが眩しい時間に散歩をした。風が私の背中を押すが、歩く速度はいつもより遅い。どの道も知っているのに、私の心は迷子だった。頭の中で絡み合った言葉。一直線にならない進む道。歩くことで気を紛らわせた。ふと顔をあげると、子供達とすれ違った。上る坂道の途中で。おもちゃを片手に無邪気に走る子供。その姿を振り向きながら見続けた。離れていく無邪気な声が、私を遠い記憶にいざなう。あの頃知らなかった大人の心。無計

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川はただ冷たかった。14/20

川はただ冷たかった。14/20

帰りの道、川と共に帰った。寂しさを埋めるために、どこかで葉を川の流れに乗せた。立ち止まって、じっと見つめる。流れの頼りはいつも水の量で決まる。時には急ぎ、時には緩やかに。どこかの枝に引っかかっては止まり、流れに負けては沈んでいく。いくつも流した葉を私は全て見失ってしまった。まるで人の感情のようだ。次にどうなるのかは、誰も教えてはくれない。奪われていく自由。誘われていく思い。溺れていく自身。私と葉は

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トンネルの向こう側 13/20

トンネルの向こう側 13/20

目を閉じ見える光景はいつも同じ。記憶の中に、いつも後ろ姿の人が現れる。距離は遠く、時間が経てばまた離れていく。その大きな背中を私はだた見ていた。手には遊び道具を持っていた、無邪気な頃の記憶。距離は変わらず離れていく。その感覚を、その距離を、私はどう感じたらよかったのだろうか。聞きたかった事も、話して欲しかったことも、その光景が私の言葉を奪っていく。あ…手から何かが落ちて、割れた。それはたしか大切な

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指切りの約束。 12/20

指切りの約束。 12/20

「また遊ぼう」「また会おう」「またいつか」…守れない約束ばかり。会いたい時に限って、状況が言い訳を作る。押し迫って来る責任と「理想の自分」像に耳を傾けたら、私の時間はどんどん削られていく。何が大切か…考えないように自分の直感で走る。走る速度が上がっても、これだと確信するものは未だ見えてこない。止まることが必要だったのか。こけて傷を作った方が良かったのか。疑問が多い過去を振り返る時は決まって、これで

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囲まれた、冷たい時間 11/20

囲まれた、冷たい時間 11/20

白いキャンパスに色を塗っても塗っても私の色は霞むばかり。意識は飛んで、自分が何をしているのかわからなくなる。何のためにやっているのか、どうしてこの道を選んだのか。しかるべき、目的を私はまだ知らない。目線をゆっくり上げて、目があった鏡の自分に手を近づけても頭の声は消えない。冷たい感覚が鏡に触れるのを拒んできた。机に頬杖をついて考えても、あざ笑うかのように強い風が邪魔をしてくる。書いて見たの文字に異質

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耳の波長。

耳の波長。

駅に行くといつも通り人は行き交っていた。ギターを抱えた男が、世界は俺を呼んでいる、と大声で歌い始めた。絞り出した声は、嫌なぐらい響いていた。イヤフォンをつけて、耳から流れる音に集中した。駅にはたくさんの音が鳴る。が、好きな音はイヤフォンの中だけ。

明日から『終わらない疑問、短い短い物語』再開。ーー耳から流れる音が頭を震動してくる。鳴るたびに自分を孤独にされる。ーー(繰り返して、僕は…繰り返して。

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終わらない疑問《終わり》10⁺/10

終わらない疑問《終わり》10⁺/10

本日で『短い短い物語』一旦終わり。毎回コメントやスキ頂けて嬉しかったです…!ここだけの話、コメントは画面写真?を撮っていました。つい嬉しくて…(笑)

今回の内容は、恋した時の迷い、無力な叫び。誰かの声にカッコつけたくなったり、素直になれなかったり…。主に「若さ」「未熟さ」「耳障りの声」が大きなテーマでした。個人的には、「繰り返して、僕は…繰り返して。」が印象的。https://note.mu/a

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変えたいのは、なんだったかな。10/10

変えたいのは、なんだったかな。10/10

気分がグッと下がる瞬間がある。僕を無理にある型の箱に詰めようとする時だ。その型でなければならない、と。どんどん押しつけてくる。僕はキャリーバックではないのに、こぼれた気持ちを箱に詰め込もうとする。どうしようもない状況に逃げ出した。景色を見たくなるんだ。この感情が早く流れていきますように、と。ほとんどの事は流れないけど。どんなどん底だと思える状況で苦しんでいても、世界は冷たく回っている。どんなに泣き

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