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水しぶきは、たった一瞬。18/20

一定に流れる水をぶち壊したくなった。目に入った川の近くまで降りて、どこにでもある石を拾い投げた。投げた石は水しぶきを上げて、私に歓喜と達成感を与えてくれた。投げ始め何分経っただろうか、私は無意識に石を投げ続けていた。それは投げなければいけないような…そんな義務感があった。投げるたびに後ろから誰かが迫ってくる。分かっていた。いつもこうなることは……でも、そんなことはどうでもよかった。迫った奴の手が肩に掛かり呟く。『今の喜びは一時的さ、また君は川に流れる葉のように無力に流されるだけ。……可哀想に』いつも聞こえる幻聴。分かっていたが、この気味の悪さと恐怖で手から石を落とし、目が彷徨った。動揺をごまかすように叫び、頭をくしゃくしゃにする。私は可哀想ではない、無力ではないと言い聞かせても、幻聴の囁きは止まらず、私はまた人間から離れていく。