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目目、耳耳

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2021年3月の記事一覧

NOT BECAUSE(I'M HERE/スパイク・ジョーンズ)

あるカットに惹かれたのがきっかけだった。

(『THERE ARE MANY OF US』の表紙)

左斜め上から差す西日に逆光になっている二人がいる。人間じゃない二人。『I'M HERE』のワンシーン。



シェル・シルヴァスタインの『おおきな木』をご存知だろうか。

これは、ある子どもと『おおきな木』のお話。子どもは『おおきな木』を愛し、『おおきな木』もまた子どもを愛していました。しかし、

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「お勉強しといてよ」(天才による凡人のための短歌教室/木下 龍也)

引き返すならいまである。

短歌でいいのか。

ほんとうに短歌でいいのか?

――本文より引用

と、3回引き止められたところで本編が始まる。

木下 龍也さんの『天才による凡人のための短歌教室』

僕は、1月1日から短歌を始めた。

1日3首、新潮文庫の『マイブック』に書き付けている。

きっかけは、何だったっけ。

あるとき、Amazonから歌集をいくつもおすすめされるようになった。

どうし

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生きを擦って、(猿上がりシティーポップ/秋山 黄色)

辛うじて息を吸って吐いている
青酸なんとかだったら終わりって
笑えるね

「息を吸って」と変換しようとしたら、「生きを擦って」とまったく使ったことのないことばになった。

「擦り減りながら生きている」ってこと? PCにまで、そんなことを言われるようになったのか。

「笑えないな」と思いながら、笑っている。

好きが高じて 儚さって知っている
檻の中
俺によく似た奴が笑う

一生なんて言えるほど生き

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I am(,was)sad.(悲しい本/マイケル・ローゼン)

いろいろなことが、前と同じではなくなったせいで
私の心のどこかに、悲しみがすみついてしまったということなのだ。

――本文より引用

明日。

明日だ。

3月11日14時46分。

『もう』10年なのか、『まだ』10年なのか。

あの日、自分は東日本にいなかった。気付いたときには、世界は一変していた。翌日の新聞の番組表がまっ白だったことが、事の重大さを訴えていた。

関東には兄がいた。「ここで死

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少女は卒業しない?([少女庭国]/矢部 嵩)

「そういうのどう思う。私は好きだったな。自分が当事者になったらどうしようってずっと思ってた。あなたもそうなのかな?」

――p239より引用

Q.あなたにとって、庭とは?

A1.手入れするものです。

A2.鑑賞するものです。

『[少女庭国]』において、A1は作中に登場する少女達。A2は彼女達に“卒業試験”を課した者、および読者である。

(“卒業試験”の概要)

卒業式を迎えるはずだった少

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