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神々の山嶺

 夏の映画館の効きすぎた冷房が好きだ。外の世界から別の世界に迷い込んだような気がして。一歩踏み込んだ瞬間、ふわっと私を包みこむ。その時、私は世の中の嫌なこと何も…

静葉茜
1年前
1

魔女の壺

 料理をした。私にしては珍しい、ただの天津飯。半熟に蕩けて黄色く照り輝く卵にかける餡を作ろうとして、私は鍋を火にかけた。  そこに調味料を垂らしていてふと思う。 …

静葉茜
2年前

本が読めない

 所謂私は発達障害グレーゾーンというやつである。  いや正直なところよく分からないが、心理検査の結果に多少の得意不得意が見られたらしい。  その中に、注意欠如が…

静葉茜
2年前
9

遺伝

 私の父ほど醜い人間は居ない。  知らないことも知らないと言えない、愚かなペダントリー。  そんな人間の血が、私にも流れていると思うと吐き気がする。  言葉の端…

静葉茜
2年前
1

SNS、勝手に期待されて勝手に失望されるだけ。疲れた。

静葉茜
2年前

境界の上

年が明けようとしている。 最近、死にたい気持ちを通り越した感覚がある。 だから生きたくなったとか生きやすくなったとかそういうことではない。 だって、いくら死を望…

静葉茜
2年前
1

死に方

 相変わらず生きたくない毎日を送っている。  だったら死ねばいいのにと思うけれど、  ゆとりと言われた私は死に方まで甘やかされないとどうにも死ねないらしい。  …

静葉茜
2年前
5

醜態

ただ高いだけの醜いプライドを抱えて生きている。 私は他の人を見下しがちな人間である。他人より優れている部分を見つけては優越感に浸る。自分は何も出来ないクズだとい…

静葉茜
2年前
1

ミリグラム

 このnoteをつけはじめて一年が経ったらしい。  通院を始めてから一年以上が経ったらしい。  それなのに私は相変わらず、数ミリグラムの白い粒の中にしか拠り所がない…

静葉茜
2年前
6

『青い春を数えて』(武田綾乃)

※本書のネタバレを含みます ※少しネガティブな話も含みます 青い春の眩しさにあてられた私は、もう大人になってしまったのだと自覚した。 この本はあまりにも瑞々しく…

静葉茜
2年前

Date

私の感性が死んで何年になっただろう。 早く葬式をあげてくれと泣いている。

静葉茜
2年前
1

『ののはな通信』三浦しをん

※本書のネタバレを含みます  こういった想いを抱いたことがあるという人は多いのではないだろうか。 『私があの人の一番なのに』  勿論恋愛感情が多いのだろうが、思…

静葉茜
2年前
2

2021/7/19

 私が腐る前に、どうか余さず食べて欲しいのです。  こんな季節では、私は指や足の先から蕩けていってしまうのです。もしそうなって、あなたに嫌われてしまったら、私は…

静葉茜
2年前
1

HOKUSAI

「絵は世の中を変えられる」  この映画にカタルシスは無い。けれど、静かに人の心を揺れ動かす。  かの世界的に有名な浮世絵師「葛飾北斎」の一生を描いた作品。この作…

静葉茜
3年前
1

2021/5/17

 何もかもが嫌になる時がある。駄々をこねる子供みたいだ。どうしようもなく、下らない。  泣きたい。  死んでしまいたい。  そう思っては何もできずにただ時間が過…

静葉茜
3年前

宮沢賢治『注文の多い料理店』

『わたしたちは、氷砂糖をほしいくらいもたないでも、きれいにすきとおった風をたべ、桃いろのうつくしい朝の日光をのむことができます』  頁を捲った一行目の言葉で、読…

静葉茜
3年前
2

神々の山嶺

 夏の映画館の効きすぎた冷房が好きだ。外の世界から別の世界に迷い込んだような気がして。一歩踏み込んだ瞬間、ふわっと私を包みこむ。その時、私は世の中の嫌なこと何もかもから逃れられるのだ。
 けど、この映画は少し違う。恐ろしくなる程、この映画には冷気が似合いすぎている。

 神々の山嶺を見てきた。

 私は登山なんて高尾山に数回上った程度の人間だ。きっと羽生の気持ちも深町の気持ちもこれっぽっちも理解で

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魔女の壺

 料理をした。私にしては珍しい、ただの天津飯。半熟に蕩けて黄色く照り輝く卵にかける餡を作ろうとして、私は鍋を火にかけた。
 そこに調味料を垂らしていてふと思う。
 魔女みたいだ。
 丁度オイスターソースの瓶がガラス製だったから、よくわからない液体を注いで薬を作る魔女みたいだと、そう思った。少し楽しい。母に正直にそう打ち明けたら、ただ笑ってくれた。
 案外物語の魔女もそんな感覚で毒薬を作っているのか

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本が読めない

 所謂私は発達障害グレーゾーンというやつである。

 いや正直なところよく分からないが、心理検査の結果に多少の得意不得意が見られたらしい。

 その中に、注意欠如が挙げられる。勿論不得意の方だ。

 それは仕事をしていて如実に現れたが、最近また気が付いたことがある。

 本が読めないのだ。

 小説はまだ読める。どちらかと言うと映画を見ている感覚だから。文章を脳内で再生することに注視すれば、思考が

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遺伝

 私の父ほど醜い人間は居ない。

 知らないことも知らないと言えない、愚かなペダントリー。

 そんな人間の血が、私にも流れていると思うと吐き気がする。

 言葉の端から、行動の端から、父の血肉が覗いている。

 昔は、父の子だからという理由だけで自殺を望んだものだった。

 今は死のうとまでは思わないけれど、そう望んでいた過去は後を引いている。

 私は子を残すことを望んでいない。

 所謂非出

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SNS、勝手に期待されて勝手に失望されるだけ。疲れた。

境界の上

年が明けようとしている。

最近、死にたい気持ちを通り越した感覚がある。

だから生きたくなったとか生きやすくなったとかそういうことではない。

だって、いくら死を望んだところで私は死ねないのだ。

不意に理不尽な暴力で死ぬ可能性はあれど、私が私を殺すことなんて出来ないことは20年ちょっと生きてきて嫌というほどわかっている。

出来たとしたら、私はとっくのとうに向こう側だ。

だから、もう、私は諦

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死に方

 相変わらず生きたくない毎日を送っている。

 だったら死ねばいいのにと思うけれど、

 ゆとりと言われた私は死に方まで甘やかされないとどうにも死ねないらしい。

 最近は体調は悪くないが希死念慮優位の日々だ。

 死に方についていろいろと考えるけれど、やはり恐怖心が勝ってしまい、空想だけで終わってしまう。

 縊死、致死率は高いが死にぞこなったら脳へ障害が残る。

 中毒死、OD。今の手持ちの薬

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醜態

ただ高いだけの醜いプライドを抱えて生きている。

私は他の人を見下しがちな人間である。他人より優れている部分を見つけては優越感に浸る。自分は何も出来ないクズだというのに。

無論、友人知人にはその様に振る舞わないよう気を付けているが、本当のところ他人からどう見えているかなんてわからない。

ただただ怖い。

私という外面を1枚剥いだその下に、醜いぶよぶよとした怪物が蠢いている。

昔は己を正当化す

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ミリグラム

 このnoteをつけはじめて一年が経ったらしい。

 通院を始めてから一年以上が経ったらしい。

 それなのに私は相変わらず、数ミリグラムの白い粒の中にしか拠り所がない。

 ままならない人生を送っている。

 最近病状のことをなにも書いていなかったので記録がわりに記す。

 8月終わり頃にかけていよいよもって不眠と頭痛が悪化したため休職を余儀無くされる。薬は炭酸リチウム×2、ロゼレム、ルネスタ、

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『青い春を数えて』(武田綾乃)

『青い春を数えて』(武田綾乃)

※本書のネタバレを含みます

※少しネガティブな話も含みます

青い春の眩しさにあてられた私は、もう大人になってしまったのだと自覚した。

この本はあまりにも瑞々しくて青い。

その青臭さは、大人にとってあまりにも毒だった。

思春期の悩みを抱えた少女たちの短編集。

『失敗して友達に負けたくない』

『効率の悪い生き方はしたくない』

『誰も私を見てくれない』

『敷かれたレールを歩くつまらない

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Date

私の感性が死んで何年になっただろう。

早く葬式をあげてくれと泣いている。

『ののはな通信』三浦しをん

※本書のネタバレを含みます

 こういった想いを抱いたことがあるという人は多いのではないだろうか。

『私があの人の一番なのに』

 勿論恋愛感情が多いのだろうが、思春期にこう思ったことは無いだろうか。

同性の相手に。

この本はすべて「のの」と「はな」の手紙のやりとりだけで構成されている。会話がほとんど無いのに会話しかない、ものを多少書く人間(私がいうとほんと烏滸がましいが)からすれば、これが

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2021/7/19

 私が腐る前に、どうか余さず食べて欲しいのです。

 こんな季節では、私は指や足の先から蕩けていってしまうのです。もしそうなって、あなたに嫌われてしまったら、私はきっと悲しくて泣いてしまいます。

 だから、そうなる前に、早く。

 食べ方はきっとお任せします。煮ても、焼いても、揚げても、蒸しても。酒、塩……どんなものにまみれても構いません。ああ、そうだ。薬草やスパイスも、私の棺桶に入れておきまし

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HOKUSAI

「絵は世の中を変えられる」

 この映画にカタルシスは無い。けれど、静かに人の心を揺れ動かす。

 かの世界的に有名な浮世絵師「葛飾北斎」の一生を描いた作品。この作品にカタルシスは無い。人の人生なんて、物語のような出来事なんてそうそう無い。だから、この作品は分かりやすく面白い娯楽では無いのだろう。けれど、人の心にしっかりと残る作品だと感じる。

一章

「何故絵を描くのか」

 蔦谷重三郎に見初め

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2021/5/17

 何もかもが嫌になる時がある。駄々をこねる子供みたいだ。どうしようもなく、下らない。

 泣きたい。

 死んでしまいたい。

 そう思っては何もできずにただ時間が過ぎるのを待つだけ。

 本当に下らない。

 もう生きていたくない。

宮沢賢治『注文の多い料理店』

『わたしたちは、氷砂糖をほしいくらいもたないでも、きれいにすきとおった風をたべ、桃いろのうつくしい朝の日光をのむことができます』

 頁を捲った一行目の言葉で、読者は一気に宮沢賢治の世界へと引き込まれる。私たちが大人になるにつれて失っていった何かを、彼は大切に大切に拾い上げて、それを紡いで物語にしているのだと感じる。だから私はこの一行だけで、「どうしてそんなに泣きたくなるような言葉を書くのだろう」

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