魔女の壺

 料理をした。私にしては珍しい、ただの天津飯。半熟に蕩けて黄色く照り輝く卵にかける餡を作ろうとして、私は鍋を火にかけた。
 そこに調味料を垂らしていてふと思う。
 魔女みたいだ。
 丁度オイスターソースの瓶がガラス製だったから、よくわからない液体を注いで薬を作る魔女みたいだと、そう思った。少し楽しい。母に正直にそう打ち明けたら、ただ笑ってくれた。
 案外物語の魔女もそんな感覚で毒薬を作っているのかもしれない。あの人に飲ませるために、どんな調合が良いのか。どんな材料を合わせてあげればいいのか。そんな心のこもったお手製の毒で死ねるなんて羨ましいと少し思った。ただそれだけの話。

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