遺伝

 私の父ほど醜い人間は居ない。

 知らないことも知らないと言えない、愚かなペダントリー。

 そんな人間の血が、私にも流れていると思うと吐き気がする。

 言葉の端から、行動の端から、父の血肉が覗いている。

 昔は、父の子だからという理由だけで自殺を望んだものだった。

 今は死のうとまでは思わないけれど、そう望んでいた過去は後を引いている。

 私は子を残すことを望んでいない。

 所謂非出生主義者というのか。まあ他人の出産はどうでも良いけれど、私の子を残す、いや、子育てをすることも望まない。

 私はきっと、父と同じことをしてしまうから。

 子は私から溢れた父の血肉を喰らって、また次の世代に血肉を受け継ぐ。

 これは呪いだ。

 普通の家庭なら、それは祝福なのに。

 この世になんて、生まれたくなかった。

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