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「平成最後の大恋愛」失恋成仏話

まず、この話を語る上で、上記の「平成最後の大恋愛」と言ってもいい、長文ケータイ小説を読まなければこの物語は始まらない。

2022年のこの令和時代。世間はパンデミックに戦争と物騒な世の中であり、どこか心苦しく感じる。

そして、僕自身、先天性のコミュニケーション能力の欠如と後天性の人間不信により、多くの知り合いと関係が切れてしまった。

関係を結ぶということは、とても難しいのに関係を切るという行為は、蜘蛛の糸のように簡単に切れてしまうわけだ。

そんな中、とある日の真夜中の1時30分頃に学生時代、北野さんと本当に仲が良かった人物とビデオ通話をした。

新型コロナウイルスによる緊急事態宣言により、北野さんにも八谷にも出会えるはずだった結婚式に行けなかったのは僕だ。パラレルワールドでは何を話していただろうか。

ただ、裏を返せばこんな時代だからこそ、互いに会うことも無く、卒業式で止まっていた僕らの時計の秒針は、約5年ぶりにまた、動き出したのである。

「僕って八谷(はちや)さんのこと苗字呼びしてるけど、もし結婚したら何て呼ぶといいの?」

初っ端、先手に質問を投げかけたのは僕だった。

急に質問をされた同じクラスの女子、八谷雪は少々驚きながらも
「今のところ結婚する気も、親が離婚をする気配もないけど…どうかな。この苗字、気に入ってるから旧姓で呼んでも良いよ」
そう言った。

八谷という人は僕のありとあらゆることを広く浅く知っていて、でも意外と知らないこともあった。

それが今回の話になる。

「学生時代、同じクラスの人に恋をしてて、ほぼ毎日5〜6時間電話したり、ラーメン食べに行ったり散歩したりしてた人が居てさ」

八谷と特に仲が良かった「北野さん」ということをあえて隠し、今までの北野さんとの思い出話をした。

「なんだろう…何でそれで付き合わなかったの?」

間違いない。多分そう言われるだろう。

でも僕は純粋に自信が無かった。

「多分その人に僕の好意が伝わったとしても、僕はその人に“友達だよね”って押しつけたんだ。」

「告白しないまま終わったの?」

「いや、告白はした…。卒業式と謝恩会が終わった後に“お礼状”なんて実習地に送るような手紙に最終的に赤裸々に書いたんだ。」

「また、何で手紙を…?」

八谷はすかさず理由を聞いてくる。だから僕は当時の思いを全てに乗せて返した。

「渡す口実はサプライズ…。だけど、実際、僕には語彙力が無いんだ。きっと、言葉で伝えると
“好き”だけしか伝わらない気がした。でも僕が本当に伝えたかったのは、“その人を好きになって一緒に勉強やご飯や買い物や連絡をしながら国家試験で合格して卒業することが出来たことに感謝したかったんだ。だから、卒業式の前に二人で恋愛の神社とかあるけど、そこで祈ったのはその人が幸せになることだったんだ」

思ったことを言った。当時と全く変わらない感情を未だに持ち続けていた。だから何年経過しようが、手紙で伝える理由を答えることは僕にとって容易だった。

「これをただ一言で言い表すのは難しくて、若者言葉というか、こんな言葉だけで済ませたく無いけど…エモいね…。愛じゃん。ちなみにその後の展開って何かあったの?」

「告白をすると、多くは気まずくなるはずで、スルーされる覚悟はあった。逆にLINEがいつものようにきたらビックリするくらい。でも違った。僕の好きな柴犬の封筒と便箋に”友達で良かった“って書いてくれてた。僕の家の住所をわざわざ探し出して郵送で手紙の返事が届いた。便箋をわざわざ選んでくれたところや、この返信をするために僕に時間を割いてくれたことがありがたかった。」

そもそも何故八谷とビデオ通話でこの話をしたかというと、北野さんは八谷と仲が良いからこそこの件は知っているだろうと思っていた。

しかし、”あの“八谷でさえ知らなかったのだ。

「それでだけど、八谷さんの近くにいる人で、こういう事やってそうで、僕が恋しそうな人…誰だと思う?」

八谷が目線を上にやりながら、右手の指を折り曲げながらも、出した候補の中には5人ほど居た。
「絶対西野だと思う」
全く違う方向性の答えが来た。
「西野は絶対に違うよ。アレは推しみたいなもので、でも第三者がいる所だけでは好き好き言ってるネタ枠なだけで。実際、2人きりになれば真面目に語り合ってるから」
「そこの境界線は何なの」

八谷は少し笑いながらツッコミを入れてきた。

「推しとガチ恋はちょっと違うね」
僕は少し困った顔と微笑みを入れながらそう答えた。

「ちなみに、さっきの5人の中にその人はいる?」

八谷からの質問に対して、僕は改めて聞かれると緊張が凄く、声は震えていて、落ち着かせるように、床の冷たい換気扇下で落ち着くためにタバコをイッキに吸いながらもやはり声は震えていた。
だから僕は、声を出さず、ビデオ通話ということもあり、iPhoneの内カメラに対して目を閉じて軽く数回頷いた。
そして、その落ち着かずも震える声で、その人の名前を言った。

「北野さんだよ。」

北野さんと仲が良かった八谷が一瞬、自身のiPhoneをベッドに落とす程に驚いていた。
だから僕は多くの謎と共に
「正直に言うと八谷さんは北野さんから聞いて、知ってると思ってた。仲が良いから伝わってるって思ってた。」

それぐらい漏れても僕の恋に支障は無い。
何故なら会えていないからだ。

「違うんだよ斎藤くん。北野はさ、最強秘密主義者で…。彼氏が出来ても1ヶ月後にしか言わないし、秘密の話とか噂話はしない。だから私は北野と近くに、友達として居て欲しいって思ってるんだよ」

「なるほど、じゃあ僕は最高の恋をしたんだね!だって幸せ過ぎる恋だった。幸せ過ぎる失恋だった気がする。あれは北野さんの優しさと芯のある性格だったのか!改めて北野さんに恋して良かったー!出会えて良かった!」

「改めて人の良さに気付かされるよね。」
八谷は少し微笑んで言った。

「てか、そもそも何でこの話を教えてくれたの?」
八谷はテレビ電話先の内カメラに顔をドアップにして聞いてきた。

「八谷さんは知ってるだろうなって思って。でも知らなかったから、自分が最高に良い人に恋をしたって事を伝えたくなったからかな。同級生の誰にも話してなくて、八谷さんなら話しても問題なくて、逆に話すことで一旦心を落ち着けて…簡単に言うと成仏したかった感じかな。」

最初の目的からまさかの事態で、僕の精神は浄化というか成仏された気がした。

「でも一番相談したかったことは、僕は北野さんのことをずっと北野さんって呼んでたから、結婚をした今、どう呼べば良いか分からなくて相談しちゃった」

そう、この冒頭note記事のラストを今までずっと悩んでいた。だから相談したのだ。

「私は変わらず今も北野って呼んでるし、周囲も北ちゃんって呼んでるよ。急に新しい苗字って慣れないからみんなそんな感じだったよ!」

見えなかった答えは急にやってくる。
北野さんは結婚をしたし、僕はそもそも付き合っていない。

僕に嫉妬をする権利は無い


しかし、これからも僕は北野さんと呼べるのだ
その時は、友人として。同級生として。

僕は今日、この恋を成仏させた。





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