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『海のはじまり』ほか2024年夏ドラマについて
(C)フジテレビ
生方美久脚本の『海のはじまり』(フジ・月曜21時)については、スタートした頃に1度感想を書いた(『海のはじまり』)が、最終回を迎えてまとめてみる。
「海は、どこから海?」という海(泉谷星奈)という6歳の少女からの海辺での母の水季(古川琴音)への問いで始まったこのドラマは、最終回を迎えて、水季から「夏(目黒連)くんへの手紙」で再びナレーションで触れられる。「はじまりは曖昧で、終
『青春シンドローム』セドリック・クラピッシュ~仲間と過ごした懐かしき日々
現代フランスの映画監督セドリック・クラピッシュは、『猫が行方不明』と『パリのどこかで、あなたと』ぐらいしか見ていない。1994年制作の本作は、長編第3作ということになるようだ。
1975年を舞台にした高校生たちの青春グラフティ。5人の悪ガキ高校生たちの青春物語である。4人の同級生のブリュノ(ジュリアン・ランブロシニ)、アラン(ヴァンサン・エルバズ)、モモ(ニコラ・コレツキー)、レオン(ジョアキム
『熊は、いない』イランの不屈の映画監督ジャファル・パナヒ~虚構の希望と抑圧と現実の狭間で~
画像(C)2022_JP Production_all rights reserved
イラン政府から映画制作を禁じられながらも映画を撮り続けている不屈の映画監督ジャファル・パナヒ作品。イランの巨匠アッバス・キアルスタミの助監督を務め、キアロスタミ脚本の『白い風船』(95)で長編映画監督デビュー。第 48 回カンヌ国際映画祭でカメラドール(新人監督賞)を受賞。『鏡』(97)で第 50 回ロカルノ
『クラウド Cloud』~膨らむ悪意・黒沢清監督のわからないことの魅力~
(C)2024 「Cloud」 製作委員会
つい最近、黒沢清の新作『蛇の道』が公開されたばかりなのに、この『クラウド Cloud』が公開され、さらに今年はもう1本『Chime』の公開も続く。1年間に3本もの黒沢清の新作が観られるなんて、なんという幸運な年だろう。早速公開初日に観に行ってきた。
<ネタバレありで書きますので、気になる方は鑑賞後にお読みください>
有名なジャン=リュック・ゴダール
『ピストルと少年』ジャック・ドワイヨン~姉弟と刑事3人の車の旅~
刑事をピストルで脅しながら、生き別れた姉に会いに行き、再会した姉と弟、そして刑事の3人のロードムービー的な物語。離婚した母はアルコール依存症。そんな母と二人暮らしをしている少年ジェラール・トマサンは、義父が家に残していったピストルを手にする。そのあたりのピストル入手経緯については、何も描かれていない。とにかく、孤独な少年はご都合主義的にピストルを持って、ドラッグストアを襲い、現金を強奪する。そんな
もっとみる「夜の外側 イタリアを震撼させた55日間」~複層的な視点で虚構と現実が交錯するマルコ・ベロッキオの演出~
画像(C)2022 The Apartment - Kavac Film - Arte France. All Rights Reserved.
前後編合わせて340分、5時間40分の長編である。2日に分けて映画館(シアター・キノ)で観た。マルコ・ベロッキオは2003年製作の『夜よ、こんにちは』(未見)では、犯人側の「赤い旅団」サイドから「アルド・モーロ誘拐事件」を映画化したそうだ。本作は誘拐さ
『リュミエール!』ティエリー・フレモー ~映画の原点と言えるワンショットの感動~
画像(C)2017 - Sorties d'usine productions - Institut Lumiere, Lyon
50秒ワンシーンワンカット、固定カメラ。カメラはパンなど動かすことは出来ない。50秒以上フィルムを回せない。そういう機械的な限界の中で、世界で初めて撮った映像たち。50秒のうちに何を記録できるか?とリュミエール兄弟は考え、映像を想像しながらカメラを置く場所を決め、回し
ホウ・シャオシェン初期オムニバス映画『坊やの人形』
画像(C)Central Motion Picture Corp.
「ステキな彼女」(80)で監督デビューしたホウ・シャオシェン。本作は1983年、ホウ・シャオシエン、ゾン・ジュアンシャン、ワン・レンの3人によるオムニバス映画。1981年『風が踊る』、1982年『川の流れに草は青々』、そして83年の『坊やの人形』があり、83年『風櫃(フンクイ)の少年』、84年『冬冬(トントン)の夏休み 』、85
『アンストッパブル』(2010)トニー・スコット監督の遺作~シンプルなサスペンス・アクション映画の傑作~
画像(C)2010 TWENTIETH CENTURY FOX
この映画はまぎれもないトニー・スコット監督の傑作である。暴走する無人列車の圧倒的な運動感。凝縮された時間のなかで、緊張感のあるサスペンスがリアルタイムで持続し、暴走列車を止めようとする様々なアクションや駆け引きや人間模様が描かれ、そして何よりもデンゼル・ワシントンとクリス・パインの二人の機関士によるドラマが見事に凝縮されている。大仕
話題作『ラストマイル』塚原あゆ子~大仕掛けの企画としての興行的な成功~
画像(C)2024「ラストマイル」製作委員会
一部ネタバレもありますので、映画をご覧になってから読むことをオススメします。
無駄に豪華なキャストである。それもそのはず。TBSドラマ『アンナチュラル』と『MIU404』のキャストが大集結しているのだ。プロデューサー新井順子、演出の塚原あゆ子、そして脚本家の野木亜希子の両ドラマスタッフチームが集結して、この映画が製作された。「両シリーズと同じ世界線
『猫が行方不明』セドリック・クラピッシュ~古きパリの街と人々への愛~
画像© 1996 Vertigo Productions – France 2 Cinéma. Tous droits réservés
セドリック・クラピッシュの長編第3作。セドリック・クラピッシュはこの作品を大ヒットさせ、ベルリン映画祭国際批評家連盟賞を受賞して一躍人気監督になったと言われている。タイトルだけ知っていたので、遅ればせながら見てみた。彼の作品は『パリのどこかで、あなたと』ぐらい
『サブウェイ123 激突』トニー・スコット~限られた時空間で対峙する二人の男のサスペンス~
トニー・スコット監督ということで観た。『マイ・ボディーガード』でもデンゼル・ワシントンとコンビを組んでいるトニー・スコット監督だが、『アンストッパブル』や『デジャヴ』、『クリムゾン・タイド』などでもデンゼル・ワシントンを使っている。この映画は、まさにデンゼル・ワシントンの魅力が詰まった映画だ。1974年製作のサスペンス・アクション『サブウェイ・パニック』の再映画化。
ニューヨークの地下鉄ペラム1