ヒデヨシ

札幌で暮らすオヤジです。テレビの仕事をしています。世界を彷徨うような映画や小説が好きで…

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札幌で暮らすオヤジです。テレビの仕事をしています。世界を彷徨うような映画や小説が好きです。映画レビューhttps://hideyosi719.blog.fc2.com/

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『なにごともなく、晴天。』吉田篤弘(中公文庫)~荒野のベーコン醤油ライスが食べたくなる~

吉田篤弘の小説はこれまでに好きで何作か読んでいる。『つむじ風食堂の夜』(本作は篠原哲雄によって映画化もされた)、『小さな男*静かな声』、『水晶万年筆』、『それからスープのことばかり考えて暮らした』などだ。漫画家で大好きな森雅之(北海道出身『ペパーミント物語』『散歩しながらうたう唄』)のような、余白がいっぱいあって、なんとなくホッとするような文章に魅せられる。 久々に読んだ吉田篤弘の文庫本。相変わらず余白がいっぱいで、日常の淡々とした物語の中に、人生への親愛なる思いが込められ

    • 映画『花腐し』荒井晴彦~幻想と幽霊と性と女~

      画像(C)2023「花腐し」製作委員会 男二人が過去の女を思い出しながら語り合ういじましい映画なのだが、最後のところに来て「おぉっ!」と驚いた。これは『雨月物語』なのかと。つまり幽霊譚なのだと。思えば、取り壊そうとしている古いアパートに一人だけ居残っている男(柄本佑)を説得するために乗り込んでいく綾野剛が、石階段を昇る場面で途中から雨が降っている。それは晴れた天気の中でいかにも降らせている人工的な雨で、その中を雨に濡れながら歩いて行く場面があった。つまり、あの雨の石階段から

      • 『ドライブアウェイ・ドールズ』イーサン・コーエン~バカバカしい痛快ガールズ・ロード・ムービー~

        (C)2023 Focus Features. LLC. 久々にクダラナイ映画を見た。本当にバカバカしてくクダラナイ。そのクダナラさが痛快だ。兄のジョエル・コーエンとともに数々の映画を制作してきたイーサン・コーエンの単独監督作品。妻のトリシア・クックと共同で製作・脚本を作り上げたのが本作。 女性同士の性とペニス!?ハチャメチャなガールズ・ロードムービーだ。性に自由奔放な女の子マーガレット・クアリーと堅物で真面目な友人のジェラルディン・ビスワナサン。二人でアメリカ縦断のドラ

        • 『バーナテッド ママは行方不明』リチャード・リンクレイター~南極への旅出せ!~

          画像(C)2019 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All rights reserved. リチャード・リンクレイター監督は、少年を12年間かけて撮影した『6才のボクが、大人になるまで』が有名だが、ジャック・ブラックの『スクール・オブ・ロック』、『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離』、『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』、『30年後の同窓会』など、私も好きでよく観ている多作な職人監督である。さて、本作もケイト・ブランシェット主演

        『なにごともなく、晴天。』吉田篤弘(中公文庫)~荒野のベーコン醤油ライスが食べたくなる~

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        • 『ドライブアウェイ・ドールズ』イーサン・コーエン~バカバカしい痛快ガールズ・ロード・ムービー~

        • 『バーナテッド ママは行方不明』リチャード・リンクレイター~南極への旅出せ!~

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          『違国日記』瀬田なつき~距離感と柔らかな空気感が気持ちいい~

          画像(C)2024 ヤマシタトモコ・祥伝社/「違国日記」製作委員会 居心地のいい映画だった。いつまで観ていても飽きないような居心地のいい空気感が広がっていた。その理由のひとつは映像が清々しく美しいのだ。四宮秀俊(『ドライブ・マイ・カー』『きみの鳥はうたえる』など)のカメラは、家と学校との間の道、歩道橋、鉄橋や線路沿い、学校の廊下やガランとした体育館、バスの中や海辺の彼女たちを適度な距離感とともに捉え、槇生の片付かない部屋や両親と暮らしていた部屋を片付けに行く場面の光の使い方

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          黒沢清のセルフリメイク『蛇の道』~引きずられる男たちの終わりなき反復~

          (C)2024 CINEFRANCE STUDIOS - KADOKAWA CORPORATION - TARANTULA 自身の作品をフランスでリメイク。主役も哀川翔から柴崎コウの女性に代え、柴崎コウはフランス語を喋る。事務的に感情を込めずに淡々と。棒読みのような台詞まわし。黒沢清の映画の登場人物は、いつだって何を考えているのか分からない人物ばかりが出てくる。内面がまったく見えてこない不気味さ。それが黒沢清の映画だ。これもまた奇妙な映画だ。98年版は未見。 娘を殺された

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          『メメント』~時間を自在に編集するクリストファー・ノーランは、人間の曖昧さを描く~

          画像(C)2000 I REMEMBER PRODUCTIONS,LLC クリストファー・ノーランの1998年のデビュー作『フォロウィング』とほとんど同じ構造。時間を未来から過去に遡って戻りながら、物語のネタばらしをしていく構造が同じで、今回は主人公を記憶障害のある男の設定としている。10分間しか記憶を保てない男ガイ・ピアースは、今自分がなぜここにいるのか、何をしようとしているのか、分からなくなる。だから身体にタトゥーとしてメモを刻む。そして妻を殺した犯人を追いかけるサスペ

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          カール・テオドア・ドライヤー『ミカエル』~芸術と同性愛的な禁断の愛と孤独

          画像(C)2016 Friedrich Wilhelm Murnau Stiftung 若妻と前妻の一人息子との禁断の愛を描いた『怒りの日』やドライヤーの遺作である愛に生きた貴婦人を描いた傑作『ゲアトルーズ』にも通じる初期の無声映画。退廃と禁断の愛の三角関係を描いた室内劇。室内セットしか出てこないし、絵画も入れ込んだ引きの映像を多用しており、同じ狭い室内劇の『あるじ』とは趣きが違う。『あるじ』では一部でカットバックするロケ映像もあったが、これは全編豪華な部屋の中で展開。調度

          カール・テオドア・ドライヤー『ミカエル』~芸術と同性愛的な禁断の愛と孤独

          孤高の映画作家カール・テオドア・ドライヤーのサイレント家庭劇『あるじ』

          画像(C) Danish Film Institute 世界的な数々の映画監督たちに影響を与えたデンマークの孤高の映画作家カール・テオドア・ドライヤーが1925年の作ったサイレント映画。普通の家庭を描いたオーソドックスなホームドラマで、フランスをはじめ世界的に大ヒットしたらしい。さまざまな実験的な映画も作っているドライヤーだが、本作はとてもユーモラスで市井の生活を描いた作品であり、こういう普通の映画も撮っていたのかと思った。このヒット作のおかげで歴史的名作『裁かるるジャンヌ

          孤高の映画作家カール・テオドア・ドライヤーのサイレント家庭劇『あるじ』

          クリストファー・ノーランのデビュー作『フォロウィング』~時間を前後させるスリリングな展開力がお見事~

          画像(C)2010 IFC IN THEATERS LLC 『オッペンハイマー』のクリストファー・ノーランの1998年モノクロ長編デビュー作。25周年・HDレストア版が劇場公開された。まぎれもなくクリストファー・ノーランの原点とも言える作品だ。過去と未来の時間を前後させ、観客を戸惑わせ混乱に陥れながら、最後に辻褄を合わせていくストーリー展開が見事だ。グイグイと観客を最後まで引っ張っていく作劇。時間が逆行する『テネット』にも通じるし、『ダークナイト』、『ダークナイト ライジン

          クリストファー・ノーランのデビュー作『フォロウィング』~時間を前後させるスリリングな展開力がお見事~

          映画『すべての夜を思いだす』~行き交う人々、踊り出す身体~

          画像(C)2022 PFFパートナーズ(ぴあ、ホリプロ、日活)/一般社団法人PFF 多摩ニュータウンの団地を舞台に描いたそれぞれの人々の行き交う物語だ。ある一日、何か事件が起きるわけでもない、どこにでもあるような普通の一日が描かれる。人と人とは関わりがあるようなないような、すれ違う程度だ。緑多き多摩ニュータウンという人々が住む場所に、さまざまな思いや記憶が漂っているような、そんな不思議な「場所」にまつわる映画だ。 まず早朝の団地の風景が映し出される。鳥のさえずり、緑も豊

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          NHKドラマの意欲作・問題作が続く      『燕は戻ってこない』と『パーセント』

          ◆NHKドラマ『燕は戻ってこない』  平安時代の女性たちの姿を描いた大河ドラマ『光る君へ』では、子供を  産むことが家の生存戦略に直結するため、女性は子供を産むことが大きな  使命となる。高畑充希演じる中宮・定子は父や兄から「帝の子を産め」と  呪いのような言葉を何度も投げかけられていた。  代理出産という日本では法的に認められていない最先端生殖医療を扱った  問題作が『燕は戻ってこない』だ。主演の石橋静河が「自分は子供を産む  機械」になったようだと述懐する。「子供を産む

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          『おい!ハンサム2』の見事なバラエティ・ドラマ

           『おい!ハンサム2』は、このクール、もっとも面白く楽しませて  くれたドラマだ。  日常の些細な細部にこそ、人間性が表れて、そのこだわりの面白味や  おかしさやバカバカしさや駄目さ加減が笑える。    最終回のハンサム吉田剛太郎のメッセージは、  朝日新聞の鷲田清一氏の「折々のことば」でも取り上げられた。  選んだ選択を正解にしていくための過程にこそ大切なものがある。  誰もが持っている先入観や偏見に惑わされたり、自分の選択に悩んだり、  聞かなかったことにする「心理学

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          テレビ春ドラマが終盤戦 感想あれこれ  『季節のない街』『光る君へ』『Destiny』『95』『からかい上手の高木さん』

          テレビ春ドラマについての感想をあれこれ ◆『季節のない街』企画・脚本・監督:宮藤官九郎 (テレビ東京)  「プールのある家」の回が印象に残っている。又吉直樹演じるインテリ   ホームレスが、息子に建築の知識を披瀝し続け、喋り続ける。息子を  死なせる原因になった「しめ鯖」だが、加熱して食べろと言われた忠告を  聞かずに、自分の知識を押し通した。息子に死が迫っていても、何も行動  できず、喋り続けることしか出来ないインテリの無力さが描かれていて  やるせなかった。子役を演じた

          テレビ春ドラマが終盤戦 感想あれこれ  『季節のない街』『光る君へ』『Destiny』『95』『からかい上手の高木さん』

          映画『メリちん』吉田恵輔~ダメ人間たちの愛すべき再会~

          『ミッシング』公開で話題の吉田恵輔監督の自主製作時代に手掛けた監督第2作をWOWOWで放送。有名な役者は誰も出ていない。それでも面白かった。人間の情けない弱い部分を描くのが得意な吉田恵輔監督の実力が感じられる。 幼い頃からの3人の微妙な関係がベースにある。暴力的ないじめっ子タラちゃん(仁志原了)が上京してから10年ぶりに故郷の田舎町に帰ってくる。ベンツに乗って。いかにもチンピラでガラが悪そうな装い。派手なシャツにヒゲとサングラスとネックレス。自転車に乗る女マチ(後藤飛鳥)に

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          映画「関心領域」ジョナサン・グレイザー~恐怖の音を感じない麻痺した家族の恐ろしさ~

          ※画像(C)Two Wolves Films Limited, Extreme Emotions BIS Limited, Soft Money LLC and Channel Four Television Corporation 2023. All Rights Reserved. 冒頭、何も映らない黒味で不安な音楽がしばらく続く。この映画は音の映画であることを告げているかのようである。川べりの草むらの上での家族のピクニックシーンから始まる。遠くに見える川でも誰かが泳い

          映画「関心領域」ジョナサン・グレイザー~恐怖の音を感じない麻痺した家族の恐ろしさ~