ヒデヨシ(Yasuo Kunisada)

札幌で暮らすオヤジです。テレビの仕事をしていました。世界を彷徨うような映画や小説が好き…

ヒデヨシ(Yasuo Kunisada)

札幌で暮らすオヤジです。テレビの仕事をしていました。世界を彷徨うような映画や小説が好きです。映画レビューhttps://hideyosi719.blog.fc2.com/

マガジン

最近の記事

『ぼくのお日さま』奥山大史~3人の美しき時間~

画像(C)2024「ぼくのお日さま」製作委員会/COMME DES CINEMAS 3人という単位は、映画にとっていいバランスなんだろう。壊れやすく脆くて美しいバランス。私は大好きな映画が3人単位であることが多い。アラン・ドロンとリノ・バンチュラ、ジョアンナ・シムカスの男2人女1人の三角関係の映画『冒険者たち』は大好きな映画だ。ジム・ジャームッシュの『ストレンジャー・ザン・パラダイス』も男2人、女1人の3人の映画だったし、『ダウン・バイ・ロー』は男3人の映画だった。『明日に

    • 「夜の外側 イタリアを震撼させた55日間」~複層的な視点で虚構と現実が交錯するマルコ・ベロッキオの演出~

      画像(C)2022 The Apartment - Kavac Film - Arte France. All Rights Reserved. 前後編合わせて340分、5時間40分の長編である。2日に分けて映画館(シアター・キノ)で観た。マルコ・ベロッキオは2003年製作の『夜よ、こんにちは』(未見)では、犯人側の「赤い旅団」サイドから「アルド・モーロ誘拐事件」を映画化したそうだ。本作は誘拐されたアルド・モーロ本人、内務大臣フランチェスコ・コッシーガ、教皇パウロ6世、赤い

      • 『リュミエール!』ティエリー・フレモー ~映画の原点と言えるワンショットの感動~

        画像(C)2017 - Sorties d'usine productions - Institut Lumiere, Lyon 50秒ワンシーンワンカット、固定カメラ。カメラはパンなど動かすことは出来ない。50秒以上フィルムを回せない。そういう機械的な限界の中で、世界で初めて撮った映像たち。50秒のうちに何を記録できるか?とリュミエール兄弟は考え、映像を想像しながらカメラを置く場所を決め、回した。工場の出口で、次々と工場から出てくる人々。最後に馬車まで出てくる。駅のホーム

        • ホウ・シャオシェン初期オムニバス映画『坊やの人形』

          画像(C)Central Motion Picture Corp. 「ステキな彼女」(80)で監督デビューしたホウ・シャオシェン。本作は1983年、ホウ・シャオシエン、ゾン・ジュアンシャン、ワン・レンの3人によるオムニバス映画。1981年『風が踊る』、1982年『川の流れに草は青々』、そして83年の『坊やの人形』があり、83年『風櫃(フンクイ)の少年』、84年『冬冬(トントン)の夏休み 』、85年『童年往事』、87年『恋恋風塵』、87年『ナイルの娘』と続いていく。 ホウ・

        『ぼくのお日さま』奥山大史~3人の美しき時間~

        マガジン

        • 映画レビュー(外国映画)
          155本
        • 映画レビュー(日本映画)
          109本
        • 演劇レビュー
          4本
        • テレビドラマレビュー
          10本
        • 読書レビュー
          23本

        記事

          『ナミビアの砂漠』河合優実の魅力~わからない自分、わからない人生~

          画像(C)2024「ナミビアの砂漠」製作委員会 最後の方にイメージでカナ(河合優実)が焚き火の上を飛び越えるシーンがある。森の中で出会った隣のお姉さん(唐田えりか)に「なんか大変そうだね」、「大丈夫だよ」と言われ、「キャンプだホイ!」(作詞・作曲:マイク真木)の曲が流れるなかで、二人の女性は子供のように焚き火を何度も飛び越える。少女が焚き火を飛び越えるシーンは、ビクトル・エリセの『ミツバチのささやき』を思い出す。あの映画を山中瑤子監督が意識してこのシーンを作ったのか分からな

          『ナミビアの砂漠』河合優実の魅力~わからない自分、わからない人生~

          『アンストッパブル』(2010)トニー・スコット監督の遺作~シンプルなサスペンス・アクション映画の傑作~

          画像(C)2010 TWENTIETH CENTURY FOX この映画はまぎれもないトニー・スコット監督の傑作である。暴走する無人列車の圧倒的な運動感。凝縮された時間のなかで、緊張感のあるサスペンスがリアルタイムで持続し、暴走列車を止めようとする様々なアクションや駆け引きや人間模様が描かれ、そして何よりもデンゼル・ワシントンとクリス・パインの二人の機関士によるドラマが見事に凝縮されている。大仕掛けな特撮やSFXなどなくても、彼らの命を賭した身体的な躍動と身振りのアクション

          『アンストッパブル』(2010)トニー・スコット監督の遺作~シンプルなサスペンス・アクション映画の傑作~

          話題作『ラストマイル』塚原あゆ子~大仕掛けの企画としての興行的な成功~

          画像(C)2024「ラストマイル」製作委員会 一部ネタバレもありますので、映画をご覧になってから読むことをオススメします。 無駄に豪華なキャストである。それもそのはず。TBSドラマ『アンナチュラル』と『MIU404』のキャストが大集結しているのだ。プロデューサー新井順子、演出の塚原あゆ子、そして脚本家の野木亜希子の両ドラマスタッフチームが集結して、この映画が製作された。「両シリーズと同じ世界線で起きた連続爆破事件の行方を描いたサスペンス映画」という触れ込みの映画だ。この二

          話題作『ラストマイル』塚原あゆ子~大仕掛けの企画としての興行的な成功~

          黒沢清『ニンゲン合格』~人間の謎と夢、その境界を踏み越えてくる現実の暴力~

          見たのにすっかり忘れてしまった黒沢清の映画『ニンゲン合格』を見直す。昏睡状態から10年ぶりに覚醒した男を演じる西島秀俊が若い。諏訪敦彦の『2/デュオ』(1997年)でも若い西島秀俊が見られるが、黒沢清の映画にも若い時から出ていたのだ。西島秀俊はフランスで撮った黒沢の新作『蛇の道』にも出ているし、『クリーピー 偽りの隣人』でも主演だった。 さてこの映画だが、ホラーサスペンス的要素はない。ただ不思議な夢のような奇妙な話だ。そもそも10年ぶりに昏睡状態から覚醒するという設定自体が

          黒沢清『ニンゲン合格』~人間の謎と夢、その境界を踏み越えてくる現実の暴力~

          『猫が行方不明』セドリック・クラピッシュ~古きパリの街と人々への愛~

          画像© 1996 Vertigo Productions – France 2 Cinéma. Tous droits réservés セドリック・クラピッシュの長編第3作。セドリック・クラピッシュはこの作品を大ヒットさせ、ベルリン映画祭国際批評家連盟賞を受賞して一躍人気監督になったと言われている。タイトルだけ知っていたので、遅ればせながら見てみた。彼の作品は『パリのどこかで、あなたと』ぐらいしか見ていない。 パリの下町を舞台に、迷子になった飼い猫グルグルを探す若い女性

          『猫が行方不明』セドリック・クラピッシュ~古きパリの街と人々への愛~

          『サブウェイ123 激突』トニー・スコット~限られた時空間で対峙する二人の男のサスペンス~

          トニー・スコット監督ということで観た。『マイ・ボディーガード』でもデンゼル・ワシントンとコンビを組んでいるトニー・スコット監督だが、『アンストッパブル』や『デジャヴ』、『クリムゾン・タイド』などでもデンゼル・ワシントンを使っている。この映画は、まさにデンゼル・ワシントンの魅力が詰まった映画だ。1974年製作のサスペンス・アクション『サブウェイ・パニック』の再映画化。 ニューヨークの地下鉄ペラム123号を乗っ取るという犯罪サスペンス。犯人グループは1時間の間に乗客を人質に身代

          『サブウェイ123 激突』トニー・スコット~限られた時空間で対峙する二人の男のサスペンス~

          『さかなのこ』沖田修一~「普通ってなに?」「好き」を貫く熱量~

          画像(C)2022「さかなのこ」製作委員会 さかなクンとは一緒に仕事をしたことがあるので、彼がいかにまわりに気を遣い、優しくて、気配りのできる才能豊かな人であるかをよく知っている。一緒にいたスタッフ全員に、スラスラと魚の絵を描いて配る気配りとその集中力、絵の丁寧さには驚かされた記憶がある。一方で、頑張りすぎでダウンする場面もあった。そのさかなクンをのんが演じた。孤立を恐れないアーティスト的人生という意味では、二人は似たようなところもある。 冒頭に「男か女かはどっちでもいい

          『さかなのこ』沖田修一~「普通ってなに?」「好き」を貫く熱量~

          『銀河鉄道の父』成島出~家族愛に支えられた宮沢賢治~

          (C)2022「銀河鉄道の父」製作委員会 宮沢賢治は好きなので観た。小説家・門井慶喜が宮沢賢治の父である政次郎を主人公に究極の家族愛をつづった直木賞受賞作「銀河鉄道の父」の映画化。監督の成島出は『八日目の蝉』が印象に残っているが、『ふしぎな岬の物語』や『ソロモンの偽証 前篇・事件/後篇・裁判 』などの作品がある。 キャストは豪華である。宮沢賢治に菅田将暉、父の政次郎を役所広司、賢治の妹トシに森七菜、賢治の母は坂井真紀、祖父が田中泯である。岩手県で質屋を営む宮沢家にあって、

          『銀河鉄道の父』成島出~家族愛に支えられた宮沢賢治~

          石井裕也の長編第1作『剥き出しにっぽん』~不器用な生き方をユーモラスに~

          石井裕也監督の長年第1作ということで観た。PFFアワード2007グランプに輝いた作品だそうだが、まだ自主制作っぽい拙さが初々しい。 ダメダメでまだ何者でもなく、女性経験もない童貞の若者の人生の葛藤と混乱。高校を出た主人公の太郎(登米裕一)は、会社勤めではなく自給自足の生活を始めようと、畑付きの一軒家を借りる。かねてから思いを寄せていた女の子・洋子(二宮瑠美)を誘って新たな生活を始めようとするのだが、一緒にリストラされた父親もついてくる。想像以上の荒れ放題な土地と廃屋同然のボ

          石井裕也の長編第1作『剥き出しにっぽん』~不器用な生き方をユーモラスに~

          『映画はアリスから始まった』パメラ・B・グリーン~世界初の女性監督のドキュメンタリー~

          (C)2018 Be Natural LLC All Rights Reserved ハリウッドで映画作りが確立する遙か前、エジソンやリュミエール兄弟、ジョルジュ・メリエスと並んで、様々な映画製作技法を生み出した女性監督アリス・ギイという人がいた。歴史から黙殺され続けてきた世界初の女性監督アリス・ギイにやっとスポットが当てられたドキュメンタリー。 スタジオで製作された『キャベツ畑の妖精』は世界初の劇映画と言われ、監督・脚本家・プロデューサーとして1000以上もの作品を手が

          『映画はアリスから始まった』パメラ・B・グリーン~世界初の女性監督のドキュメンタリー~

          『サマーフィルムにのって』松本壮史~映画作りの青春学園モノ~

          画像(C)2021「サマーフィルムにのって」製作委員会 このところちょこちょこテレビドラマで見かけるようになった伊藤万理華、すっかりメジャー女優になった河合優実が出演している学園モノ映画作りの話なので見た。伊藤万理華は元「乃木坂46」だそうだが、ちょっと個性的なしゃべり方をする。河合優実もクセがある女優だが、今後も伸びていって欲しい存在だ。学園モノのクラブ活動系の映画の佳作は多い。『バタアシ金魚』(1990・松岡錠司)、『ウォーターボーイズ』(2001・矢口史靖)、『スウィ

          『サマーフィルムにのって』松本壮史~映画作りの青春学園モノ~

          「アンダーカレント」今泉力哉~反復される道と人間の謎~

          画像(C)豊田徹也/講談社 (C)2023「アンダーカレント」製作委員会 豊田徹也の長編コミック「アンダーカレント」(未読)を実写映画化。今泉力哉は結構観ている。今の日本映画界では多作な映画監督だ。先日『情熱大陸』でも取り上げられていたが、若者たちの恋愛相談にも乗る現代の恋愛カリスマ映画監督なのだそうだ。押しつけがましいカット割りや劇的な作為が先行しない映画監督なので、わりと信用して観ている。この作品は原作モノと言うことで、少女期のトラウマを抱えている女性が主人公であり、や

          「アンダーカレント」今泉力哉~反復される道と人間の謎~