石井裕也の長編第1作『剥き出しにっぽん』~不器用な生き方をユーモラスに~

石井裕也監督の長年第1作ということで観た。PFFアワード2007グランプに輝いた作品だそうだが、まだ自主制作っぽい拙さが初々しい。

ダメダメでまだ何者でもなく、女性経験もない童貞の若者の人生の葛藤と混乱。高校を出た主人公の太郎(登米裕一)は、会社勤めではなく自給自足の生活を始めようと、畑付きの一軒家を借りる。かねてから思いを寄せていた女の子・洋子(二宮瑠美)を誘って新たな生活を始めようとするのだが、一緒にリストラされた父親もついてくる。想像以上の荒れ放題な土地と廃屋同然のボロ家に途方に暮れる太郎だったが、土づくりから農業を始め、オヤジも含めた3人のシンプルで奇妙な共同生活が始まる。

人生のままならなさ、女性扱いもできなくて、思いも伝えられない愚直さ。性へのエネルギーばかりを持て余し、太郎のマスターベーションを優しく見守っていた軍隊経験のある実家の祖父も死んでしまい、祖父の葬式後、思い通りにならない共同生活から太郎は家を出る。工事現場で働き出した父とボロ家に残る洋子。太郎は先輩カップルの家に居候しながら悶々とした日々過ごし、もう一度洋子への思いをストレートにぶつけるために戻ってくるのだが・・・。ダメな父親とダメ息子が少しずつ距離を縮め、先輩とセックスをしてしまった洋子へ太郎は怒りとともにぶつかっていくのだった。不器用なものたちのままならない人生を、どこかユーモラスで土着的な匂いもさせながら、踏ん張って生きていこうとする姿を描く。

2005年製作/91分/R15+/日本
配給:チャベス・シネマ

監督・脚本:石井裕也
撮影:松井宏樹
音楽:今村悠輔
キャスト:登米裕一、二宮瑠美、西薗修也、牧野エミ、磯西紀行、桂都んぼ

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