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苦しくて眠れない夜、漫画「チェンソーマン」をブッ読んでからアニメ主題歌「KICK BACK」を聴いたら良過ぎて涙が止まんない

昔から私には「ストレスには、それを超える『刺激』をぶつけて打ち消す」みたいなところがあって、この刺激というのは、楽しいことや好きなこと、素晴らしいと思うものの場合もあれば、もっと辛いこと、仕事や、「過去にあった『もっと辛かったこと』を思い出す」などがある。

最近、前者はともかく後者はあまりよろしくないということが解ってきたし、前者についても、コロナ禍のように娯楽が制限されてしまったり、何らかの理由で自分が「そう思えなくなった」時、対処する手だてがなくなって詰むということに気づいてきたのである。

それでもこの生き方はなかなか辞められない。
その日は、数年ぶりに熱を出した。
発熱したら、薬を飲んで寝るしかないのだが、苦しくて眠れないのだ。
この辛さから手っ取り早く逃れたくて、「この苦しみに対抗できる何かを摂取しなければ」と思った。
でも、夜中だし起き上がれないし、私ができることは目を開けていることくらいだったので、スマホのアプリで「チェンソーマン」(原作:藤本タツキ)を読むことにした。

この漫画は、以前一度読んだことがあった。
しかし内容はほとんど覚えておらず、私は知っているはずのマキマさんの正体さえすっかり忘れてしまっていた。
「この人が…何なんだっけ?」と、かなり新鮮な気持ちで読むことができた。
苦しさは消え去った。

漫画は、痛さとか音とか、想像してもいいけど、自分のキャパに合わせて脳内で調節できるのが良い。
そしてこの作品の場合、全体的にグロいけど、それよりも漫画の上手さの方に目が行く。
たまに映画のワンシーンみたいなのが入ってきて、10秒で泣かせに来る。
アキくんのとこなんか読みながらずっと泣いてた。

最近のジャンプ漫画は、キャラをみんな殺しちゃうでしょう?
読者の中で立派に育ったキャラを、育ち切ったところで殺す。
愛させておいて殺すから、まるで人質をとられているようで、あまり好きじゃない。
でも、「死」の事実や悲しみよりもっと別の感情を残すキャラクターもいて、そういうのを見せられると、ストーリーテリングの上手さに思わず唸ってしまう。
そういう漫画は好き。

そんなわけで、発熱の苦しみから逃れるために読んだ「チェンソーマン」はとても面白かった。
「映画の悪魔」が描いた漫画だと思った。

そういえば、アニメにもなっていたよなと思って、YouTubeでノンクレジットOP・ED集を視た。
こんなのが無料で、いくらでも視れるなんて、いい時代だ。
特にOPは、公開当時「何を見せられているんだ」と話題になったので、視たことがあった。
映像(アニメーション)もすごかったが、特筆すべきはやはり米津玄師が手掛けた曲の良さだ。
圧倒的「主題歌力」とでも言うべきか。
他のED曲も十分に主題歌をはれるくらい良かったが、やはり「KICK BACK」が頭一つ抜きんでていた。

ニコ動でMMDを視るのが大好きだった私にとって、米津玄師はずっと「『マトリョシカ』の人(ハチ)」だった。
その人が作ったまごう事なき「チェンソーマンの主題歌」が、原作を最新話まで読んだ私に、刺さりに刺さりまくった。
ベッドの上で仰向けになり、目を閉じ、泣きながら朝の4時まで聴いた。
「なんでハロプロなんだ」とも思ったが、チェンソーマンは所謂「努力・友情・勝利」の王道ジャンプ漫画ではないし、デンジくんもそういう主人公ではない。
好きな人のおっぱい揉みたいから生きることにした、フツーの幸せを願うデンジくんのお話なのだ。
ジャンプの王道からは外れている。
だが、もともと原作が好きだった米津は、本能や衝動で生きてるデンジくんだからこそ面白い、そこから面白さが生まれていると言っている。
「死ぬより楽しみなことあるから生きてる」とか言ってくる、そんな主人公だからいいんじゃないか。
乗り越えなくていい。
お行儀良くなんかしてなくていい。
ただひたすら「うれしー」とか「たのしー」の連続で生きていけばいいという歌なのだ。
生きる理由が、ほんのちょっと目先の楽しみとか、誰かに「何それ、しょーもな」と言われるようなことだったとしても、刹那的なことでも、なんだっていい、絶望せず生きることの素晴らしさを高らかに歌い上げている。
なんだこれ、カウンセリングか?
自分にも「それでいい」と言ってあげたい。

辛いことがあっても、生きていくために、曲はラスサビへと疾走する。
諦めもある。
曲の大部分はマイナーで、「全部は手に入らない」と感じられる。
どこか醒めていて、そこがイマドキな感じ。
欲しいものほど、手に入れるのが難しい。
マキマさんですらそうだった。
そこがどうにも苦しいところだけれど、それでも人間は、生きられるようにできている。
それが救いでもある。

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