マガジンのカバー画像

11
運営しているクリエイター

#現代詩

詩|咲き永らう鳳仙花

詩|咲き永らう鳳仙花

最低点の計画で
小さな今朝の憶測で

君を歌えれば染まった
声だけ携えていた

屍の糸は準透明なら
消えないものが良かった

何も出来ないのに今日が終わる

最低点の計画で
小さな今朝の憶測で

点描を抱える逢引
愛など考えていた

屍の先は極楽苑
夜勤が見かねて後楽園

供えた狭間で覗いて群がる

彼は「めでたい」と笑うようになっていた

彼は「もういい」と咲き永らう鳳仙花

詩|酔い夜

詩|酔い夜

街灯に揺れる僕の化身は
ゆらりふわりと思考をさらい
醒めぬ頭で彷徨う言葉は熱を帯びる

酔っているのは酒のせいか

それとも、その瞳のせいか

詩|散る花一華

詩|散る花一華

卓上の茶封筒

右手に花束

左手に現実

今日は一等星が見える

今日は一等星しか見えない

いつも一等星しか見えない

散る花一華

詩|醜い塊

詩|醜い塊

青木待ちの少年少女

いいね狩りのインフルエンサー

目立てばそれでいいのだと

柔い自分を隠して蔓延る

銀色の折り紙で作った宝石を

愛でては捨ててを繰り返す

大袈裟な包帯を巻いたヒロインと

そこに群がる偽善者の猫

傷を舐めれば滲みていく

仮面を外せばのっぺらぼう

詩|屍の一歩前

詩|屍の一歩前

午後6時57分のホーム

透明の花びらが舞って

骨と魂が散った

仮面を剥いで

鎧を外して

衣服を脱いで

心臓をえぐり取る

マスクを取って

肩パッドを外して

プライドを捨てて

胸の奥をえぐり取る

真っ黒になった僕の右手は

正義に震えて

溢れる水滴と滲んでふやけた

真っ赤に染まった眼前の景色は

現実を映して

流れる幸福と混ざって溶けた

もう、いいや

さようなら世界

もっとみる
詩|「好き」と「嫌い」は表裏一体で不自由で

詩|「好き」と「嫌い」は表裏一体で不自由で

ついこの前まで好きだった人を

ほんの少しの違和感に気づいた瞬間から

あっという間に嫌いになったり

好きでいたい人のことは嫌いになってしまうのに

嫌いになりたい人のことは嫌いになれなくて

いっそ全てを壊したい衝動に駆られたり

本当は全ての人を愛していたいのに

世の中そんなに綺麗なものではなくて

他人への勝手な感情に踊らされている自分が

愚かに思えたり

悲しく思えたり

滑稽に思え

もっとみる
詩|今日の満月はあの日の君に似ている

詩|今日の満月はあの日の君に似ている

空の缶ビールを片手に散歩した夜の神楽坂

ふと夜空を見上げて淡く微笑んだ君

栗皮茶色の君の瞳は何を映すのだろうか

君が映す世界は何色なのだろうか

何が君の言葉を作るのだろうか

暗い夜空に穴を開けた満月と空き缶の凹み

今日の満月はあの日の君に似ている