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#読書

いつまでも空を見上げていたい

いつまでも空を見上げていたい

また、空を見てしまう。
およそ意味があるとはいえない行動は、すでにやめることができなくなっていた。

僕が小学生の頃、父はパイロットだった。
いつでも優しく、顔を綻ばせながら僕の話を聞いてくれる父のことが、大好きだった。
あまり家に帰ることのなかった父は、当時の僕にとって、ピンチの時に現れる戦隊ヒーローのようで、いつも帰りを心待ちにしていた。

だから、家に帰って玄関先に黒くて大きい革靴があれば、

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青春は、内側からわからない。

青春は、内側からわからない。

真っ暗な玄関先、座り込んだ僕は結び目が2度と解けないようにきつく、きつく結ぶ。

締め付けられた足が痛みを覚えている。
けれど、その痛さは足元の一体感を感じられて、不思議と不快ではなかった。

ぽっかりと空いてしまった心とは対照的に、足元には充足感が漂っている。ただ、それは失ったものの大きさを強調するかのように、喪失感も共に連れてくる。

大学進学を決め、お祝いに買ってもらった、新しいナイキのシュ

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夜ふかしの理由。

夜ふかしの理由。

今日も、気付けば日付を跨いでいた。

ベッドに入り、YouTubeを見れば時間は過ぎていく。とっくに見たい動画なんてないはずなのに、今日という日を終わらせないように、次の動画を再生する。

俺は今日という日に一体、何を期待してたのだろう。

 

朝、iPhoneのアラームで目が覚める。寝不足のせいか、頭が重い。

12月の冷気が皮膚を刺し、乾燥した喉が痛くて、苛立ちを覚える。

今にも閉じそうな

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