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芸術一般

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芸術について、なんでも書きます。はじめはヨーロッパ絵画をかなり題材にしていましたが、現在は映画評論・芸術論・文学論などが多くなっています。
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#サミュエル・ベケット

<書評>『悲劇の死』

<書評>『悲劇の死』

『悲劇の死 The Death of Tragedy』ジョージ・スタイナー George Steiner 喜志哲雄 蜂谷昭雄訳 筑摩書房 1979年 原書は1961年

 本書の内容は、もちろん本文が中心なのだが、スタイナーによる最後の解説的な第10章とそれを補足する訳者の解説は、最初に読むべきだと思った。最初に読んでいれば、本文の感じ方がかなり異なった気がする。

 アメリカ人ジョージ・スタイナ

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<書評>『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』

<書評>『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』

『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ Rosencrantz and Guildenstern are dead』 トム・ストッパードTom Stoppard 著 松岡和子訳 原著は1967年 翻訳は1985年 劇書房

 20世紀を代表する不条理を描いた劇作家の一人、チェコ人ながら英語圏で成長した英語作家のトム・ストッパードによる、シェイクスピアの『ハムレット』に名前だけ登場する人物二人

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<書評>『なぜベケットか』

<書評>『なぜベケットか』

『なぜベケットか』 イノック・ブレイター著 安達まみ訳 1990年白水社 原書は、1989年にロンドンのThames and Hudson社より出版。

 ベケットは1906年にダブリンのプロテスタントの上流階級に生まれ、1989年にパリで亡くなった、『ゴドーを待ちながら』で著名な劇作家・映像作家・小説家・詩人であり、1969年にノーベル文学賞を受賞したが、授賞式への出席やインタビューは断っている

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<書評>『白と黒の断想』

<書評>『白と黒の断想』

瀧口修造著 2011年 幻戯書房

 日本のシュールレリストの第一人者である瀧口修造が、評論家として、20世紀に活躍した写真家を中心に、ピカソやダリなどの著名な芸術作品も含めて、個々の作品とその短評(解説)をまとめたもの。そして、ところどころに瀧口が作った、それぞれの作家をモチーフにした、シュールレアリスムのイメージあふれる詩編が散りばめられている。

 書名となった「白と黒」とは、全ての写真や美

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<芸術一般>デュシャン、ベケット、キューブリック(チェスについて)

<芸術一般>デュシャン、ベケット、キューブリック(チェスについて)

 (もちろん、異論が多々あるだろうが)20世紀最高の芸術家マルセル・デュシャン、20世紀最高の劇作家兼小説家サミュエル・ベケット、20世紀最高の映画監督スタンリー・キューブリック。

 私の敬愛するこの偉大な3人の芸術家に共通するのは、チェスが好きだということだ。たぶん、その強さから言えば、キューブリック(映画の世界に入る前は、賭けチェスで生活していた)、デュシャン(フランスのチェス大会で優勝経験

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<芸術一般>三年目の『ゴドーを待ちながら』――あるペシミティックな芸術限界論――

<芸術一般>三年目の『ゴドーを待ちながら』――あるペシミティックな芸術限界論――

(注1:もう今から37年前の、まだ20代後半だった頃の心境です。当時の私は、仕事が社会貢献につながるとは考えられませんでした。私にとって最も大切な「自分自身のやりたいこと」を阻害するものだと認識しながら、生活のために止む無くやっているものが仕事でした。その不誠実さを反省することもなく、私はこの考えに従って、定年まで仕事をしました。その好悪について議論することは、既に停止していますので、ここで議論は

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