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日記じゃないもの

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日記以外をまとめたものです。
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#ショートショート

【ショートショート】藤川球児的な

【ショートショート】藤川球児的な

 私の名前は芥川。あの芥川龍之介と同姓である。そんな共通点から私は小説家を志し、しかし挫折した。

 そんな私にも来月男の子が産まれる。私はこの子に是非、この果たせなかった夢を託したい。

 思えば阪神の藤川球児は「球児」という名前であればこそ、あれほどの投手になれたのだと思う。理科のスペシャリスト柳田理科雄の名が本名だと知ったときに私は確信した。

 「賞」。賞という名前を付ければ否が応でも「芥

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【掌編小説】少年とラリアット

【掌編小説】少年とラリアット

 ワンルームの俺の部屋に少年が立っていた。その少年は子役でもやってそうな、そんな女の子のような見た目をしていた。それで僕の腰くらいの身長で上目遣いでこっちを見てニコニコする。

 非常に可愛らしい。しかしなぜか無性にムカムカする。

「気を遣ってんじゃねーぞ」

 その瞬間、カッとなった俺は今まで一度もしたことがないラリアットをすることにした。下手くそなラリアットは少年の首を手首のあたりで捉え、そ

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【掌編小説】二流の人

【掌編小説】二流の人

 同い歳におもむろに背中で語られると癪に障る。それは動物の本能がむき出しになるようで自分でも嫌になる。これが歳が一つ上だとか下だとかになると不思議なことに全く割り切って興味が失せる。 

 ここにひとりの天才がいる。全く正気なようだが、とはいっても常人のそれとは違って、私からすればイカれている。しかし人格が破綻しているわけでもなくて、それは実に緻密な芸術的つくりをしている。そして彼のせいで周りの人

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【掌編小説】いかさま師

【掌編小説】いかさま師

 私はここでトランプをして、人が来るのを待っている。蜘蛛が巣を張るようにただ静かに、それが迷い込んでくるのを待つ。 

 見えているものが全てではない。真っ暗闇まで隅々見えると安心するとき、どんな匂いでどんな音が鳴っているかは知らない。何かがおざなりになる。人間にはどうしても隙ができる。 

 そして人間は怠け者で、楽な方を好む。いつも神経過敏に不安がっていると疲れる。だからその苦労から解かれたい

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【ショートショート】新聞勧誘

【ショートショート】新聞勧誘

――アパートにて

勧誘A「すみませーん。あれ、いないのかな」

〈 住人B・ドアを開ける 〉

勧誘A「よかった、いらしゃったんですね。あの○○新聞なんですけど、うちの新聞とってみませんか?」

B「・・・」

勧誘A「社会情勢知るにはやっぱり新聞ですよ。勉強にもなります。損はさせません」

B「・・・」

勧誘A「もちろんそれだけじゃないです。野球の観戦チケットもつけますよホラ! 野球お好きで

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【ショートショート】記憶泥棒

【ショートショート】記憶泥棒

ーー交番にて

A「助けてください。盗まれました」

巡査「それは大変だ。なにを盗まれたの?」

A「え、忘れました」

巡査「なにか犯人の背格好とか覚えてる?」

A「忘れました。でも、あいつに盗まれたんです。あいつですよ。」

巡査「誰なのそれは?」

A「忘れました」

巡査「う〜ん。それだけ分からないとどうにもできないな」

A「お前、高校の後輩だろ。さっきからタメ口使ってんじゃねえぞ」

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【ショートショート】前略、ハワイにて

【ショートショート】前略、ハワイにて

 ハワイのアラモアナショッピングセンターの辺りを歩いていると、その隣に金閣寺があった。金閣寺はあいにく工事中だった。近くに作業着を着て缶コーヒーを飲んでいたトミーリージョーンズがいたので、「なんの工事ですか?」と聞いた。なるほど金閣寺を銀閣寺にするらしい。 

 「2つ目の銀閣寺ができる」。日本へ帰ってこのことを友だちの足利義政に教えてあげた。そのことで一通り盛り上がったあとに、彼は「銅閣寺を建て

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風が吹けば桶屋が儲かるRTA

風が吹けば桶屋が儲かるRTA

 新進気鋭のロックバンド「風が吹けば」のデビュー曲「桶さえあれば」が空前のミリオンヒット。これが若者のトレンドになり、桶が大流行。桶屋が儲かる。

風が吹けば桶屋が儲かる

風が吹けば桶屋が儲かる

〈遠い昔、まだお風呂がなかったころ…〉 

 風が吹いた。日本に移り住んだ人類は北風のあまりの寒さに頭を悩ませていた。そのなかの一部がトチ狂い、ヤケクソで入った池がなぜか温かいことに気づく。これが温泉のはじまりであった。そして、空前のお風呂ブームへ。 

 しかし、いきなり入ると熱くて体がビックリするという多くの苦情が全国から寄せられた。人々は入浴前にちょっと体にかけて、体を慣らせるようなものを渇

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風が吹けば桶屋が儲かる(2)

風が吹けば桶屋が儲かる(2)

 風が吹いた。北に位置するこの国には雪混じりのこごえる風が今日も吹き荒ぶ。北国ではその寒さゆえに、口をあまり開かず発音をする傾向にある。だから、この「OK」という外来語は、口を開かず、且つ内容を短く伝えるのに格好であり、瞬く間に庶民の間に広がっていった。 

 一方、この国の国王は英語を知らなかった。だから、巷では常識になっていた「OK」という言葉も知らずにいた。その間にも「OK」はさらに広がりを

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【掌編小説】Aの取り調べ調書

【掌編小説】Aの取り調べ調書

――ええ、私がやりました。こういうの「間違いありません」と容疑を認めています、ってよく聞きますよね。へへっ。あ、すいません。 

――あいつは高校の同級生でした。面白い奴だったんですよ、殺しましたけど。それが、社会人になって金の無心をするようになって…。周りはみんな断っていたらしいんですが、高校の頃のあいつを知っているだけにどうも嫌いになれなくて、でもそれがよくなかったんだ。あいつは僕の良心につけ

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【掌編小説】キュートアグレッション

【掌編小説】キュートアグレッション

 彼女は自分のことが大好きであった。本当の彼女は彼女自身にしか理解できない、真に自分のことを愛せるのは自分だけだと本気で信じていた。自分だけがこの寂しい世界の唯一の理解者だった。だから、誰からも見向きもされない日にも平気であった。彼女の心は、いつも自分を見てくれていたからである。 

 それと、鏡が苦手であった。鏡は心に映る現実から引き戻すからだ。素顔のままに鏡に立っていることは彼女の生きる自信を

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【掌編小説】サトゥルヌス

【掌編小説】サトゥルヌス

 仕事がようやく片付いたときには、職場は彼女ひとりだけになっていた。出社するべく、階段へさしかかると、そのすぐ下の踊り場で熊とも人間ともつかない大きな化け物が彼女の上司を鷲掴みにして、無我夢中で喰っていた。上司の方はピクリとも動かない。 

 すくんだままに、その様をじっと見ていた。左腕につけた時計。あの嫌みったらしい女上司に間違いなかった。 

「テメエのせいでこんな時間まで仕事をする羽目になっ

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【掌編小説】火事

【掌編小説】火事

 信号を無視して、一時停止を突っ切る。咎めるものは何もない。 

 この地区は3年ほど前に避難命令が出て、私以外にはだれも住んでいない。街全体がもぬけの殻なのである。 

 この地区の話を人づてに聞いたとき、彼はココこそが楽園だと信じた。そして、旅行がてらにノコノコやってきた招かれざる客であった。 

 しかし、1週間ほど経ち、「私のやりたいことって一体なんだっけ」と片隅にあった空虚な気持ちが当初

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