【掌編小説】少年とラリアット
ワンルームの俺の部屋に少年が立っていた。その少年は子役でもやってそうな、そんな女の子のような見た目をしていた。それで僕の腰くらいの身長で上目遣いでこっちを見てニコニコする。
非常に可愛らしい。しかしなぜか無性にムカムカする。
「気を遣ってんじゃねーぞ」
その瞬間、カッとなった俺は今まで一度もしたことがないラリアットをすることにした。下手くそなラリアットは少年の首を手首のあたりで捉え、それでも強引に吹き飛ばす。
そうして背後のドアを突き破って、彼は奥の台所の方まで飛んでいった。
ハッと我にかえる頃には少年は跡形もなく消えて、弾みで壊れたドアが横たわるばかりであった。
それを持てるものを持ってまだそんなフリをするのか。発端はそんな僕のおろかな嫉妬であった。
もっと可愛げのないヤツだったら、「いいよ。ゆっくりしててよ」と素直に言えたのに。俺はへそ曲がりをやめようと思った。
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