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風が吹けば桶屋が儲かる(2)

 風が吹いた。北に位置するこの国には雪混じりのこごえる風が今日も吹き荒ぶ。北国ではその寒さゆえに、口をあまり開かず発音をする傾向にある。だから、この「OK」という外来語は、口を開かず、且つ内容を短く伝えるのに格好であり、瞬く間に庶民の間に広がっていった。 

 一方、この国の国王は英語を知らなかった。だから、巷では常識になっていた「OK」という言葉も知らずにいた。その間にも「OK」はさらに広がりをみせ、城の者までが密かに使うようになっていた。 

 ある日、臣下が王に向かってうっかり「OK」と口走ってしまう。王は知らない言葉をひけらかされたと憤慨して、臣下は処刑され、国内には「OK使用禁止令」が施行された。それを知った人々は徐々に使うことを控えていった。が、それまで「OK」に頼り切っていたために、人々はすっかりそれに代わる言葉を忘れてしまっていた。 

 そこで、彼らはそれを使う代わりとして、とある合図を考えた。それは「OK」に発音の似た「桶」の底を相手に見せることで「OK」の意とするものだった。「OK」を使いたい国中の人々は我先にと桶を買い求めた。桶屋が儲かる。 

 そしてこの国では、誰もが桶をもって会話をするようになったとさ。めでたしめでたし。 

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