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フランス語(等の)方へ

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主にフランス語・フランス語学に関連する記事を放り込んでいます。
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2021年9月の記事一覧

【551】これくらい読めなきゃアウト? Finleyのイヤミを読みとろう

【551】これくらい読めなきゃアウト? Finleyのイヤミを読みとろう

ほんの一節の英文から(ごく禁欲的にやっても)これくらいは読むことになる、ということの実演であり、日本語においても、とりわけ然るべき著者によって力を入れて書かれているものについては似たような態度をとることになる、ということです。

■【母語なら読めるというわけではない】解釈をいちいち書き出すということは稀ですが、極めて大げさな言い方をするなら、一瞬で以下に示すくらいにわかることで、やっと文章を読むた

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【550】avoid、evite、もう一歩

【550】avoid、evite、もう一歩

昔英語の授業でプレゼンをしていたとき、avoidなる語がとっさに出てこず、éviter(仏語でほぼavoidと同義)と言おうとして思いとどまり、éviterから英語を作るならevite/ivait/だろうと思って自信たっぷりに発音したところ、これが(やや古めかしい表現であるとはいえ)実際に正しく存在する単語だった、という経験があります。

尤も、その場にいたネイティヴの先生しかeviteという語を

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【544】Bugenとはどこ?/訳では見えないエトセトラ/経営から職人の論理へ

【544】Bugenとはどこ?/訳では見えないエトセトラ/経営から職人の論理へ

さて、以下は18世紀中頃にフランスで書かれたディドロ&ダランベール『百科全書』第1版の項目のひとつです。何について書いているかわかりますか。

Bugen(地理)、Ximoの島に位置する、アジアの都市・王国であり、日本帝国に服している(BUGEN, (Géog.) ville & royaume d’Asie, dans l’île de Ximo, dépendant de l’empire d

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【541】固有名詞やアナグラムの「翻訳」は無理だが豊か

【541】固有名詞やアナグラムの「翻訳」は無理だが豊か

『ハリー・ポッター』シリーズ、読まれたことのある方も多いかと思います。私もメインの7巻は全て読みました。小学生の頃は日本語で、その後は度々英語で、更に後にはフランス語やドイツ語や、変わり種ではラテン語や古典ギリシャ語で色々読んだものです。

日本語から英語に行くときには言語的レヴェルを除けばさほど苦労しなかったのですが、仏語やイタリア語に飛ぶといろいろと問題が生じます。


日本語と英語だけで読

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【536】デカルトはそんなこと言ってません/あなたは全然読めていません

【536】デカルトはそんなこと言ってません/あなたは全然読めていません

世界的なデカルト学者であるドゥニ・カンブシュネルの『デカルトはそんなこと言ってない(Descartes n’a pas dit)』の邦訳が、今月末(2021年9月末)に出るようです。

デカルトに関するよくある誤解をとりあげ、それがどのような意味で間違っているか、ということが取沙汰されます。

タイトル(の訳)からも分かる通り、決して固い本ではなく、フランス語で読んでみた限りでは非専門家でもわかる

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【531】フランス語中級者のためのモンテーニュとたまねぎ

【531】フランス語中級者のためのモンテーニュとたまねぎ

ミシェル・ド・モンテーニュの名を聞いたことがある人は少なくないと思います。世界史の教科書にすら出てくるビッグネームですし、彼の『随想録(Essais)』は、実際に読むと骨が折れるとは言っても、枕元において少しずつ読むと豊かになるタイプのテクストです。  

(なお、フランス語初修の段階でモンテーニュを読もうと思うと爆死します。フランスの学生すら現代フランス語訳を要するテクストですし、そのハードルを

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