けんぴ/香雪蘭

おもに読書と短歌の記録を綴っています。短歌を詠むときは香雪蘭の筆名を使うことがあります。

けんぴ/香雪蘭

おもに読書と短歌の記録を綴っています。短歌を詠むときは香雪蘭の筆名を使うことがあります。

マガジン

記事一覧

読書日記『道化師の蝶 』(円城塔,2012)

2冊目の円城塔作品。やっぱり意味はわからなくて、でも少しわかりそう。その境界線で自分がぐらついているのが楽しい。 けれども、感想を書こうと思っても書けない。起き…

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Uー25短歌賞応募作品「水があるはず」

香雪 蘭 歴史上もっとも愛を受け継いだ人間として生まれてみたんだ 水中は宇宙に近いと教わってプールサイドでさざめく星たち 大人には気付けぬ速度で蔓延する黒板消し…

5

読書日記『金子きみ短歌抄』(2002)

先日のNHKスペシャルを観た方が、「短歌の子におばの歌集を渡して欲しい」と三笠山展望閣に置いていかれたそう。 「そんなドラマみたいなことあっていいんですか?!」っ…

けんぴ/香雪蘭
10か月前
6

読書日記『君が前の彼氏としたキスの回数なんて俺が3日でぬいてやるぜ』(三代目魚武 濱田成夫,1994)

図書館の「詩・俳句・短歌」のコーナーで見つけた。このタイトル凄すぎないか…???と思って借りた。 良すぎる。最後の「そしたらいっぱい くう」は、きんにくんの「パ…

けんぴ/香雪蘭
11か月前
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2023年5月 自選5首/香雪蘭

他の方々がやっていて羨ましくなったので。続けるかどうかは未定です。 ワイパーの半径外に桜花 拭いきれないほどの春だね カーテンを束ねる-広げる-また束ねる 欠かさ…

けんぴ/香雪蘭
11か月前
3

短歌連作「新生活」/香雪蘭

スランプというか、短歌わからない期というか、そんなものにはまってしまい、短歌から少し離れていたのですが、今朝、猛烈に作りたくなったので連作を作りました。リハビリ…

読書日記『小指の先の天使』(神林長平,2006)

神林長平作品3冊目。 桜庭一樹の書評本でこの作品を知り、文庫本で購入してみた。単行本は2003年刊行。 神林長平の興味の対象は、「認知」「言語」「集合的無意識」なのか…

読書日記『オールアラウンドユー』(木下龍也,2022)

ジュンク堂で購入。木下龍也の第三歌集。木下さんの『天才による凡人のための短歌教室』を手に短歌を始めたせいもあると思うけれど、響いた歌集だった。 読了日:2023/03/0…

読書日記『水のために咲く花』(宮川聖子,2019)

ジュンク堂で購入。タイトルに一目惚れして買ったけれど、意外とタイトルっぽい短歌は少ないような気がして、歌集としてはあまり響かなかった。しかし、良い短歌はかなりあ…

読書日記『百年後 嵐のように恋がしたいとあなたは言い 実際嵐になった すべてがこわれわたしたちはそれを見た』(野村日魚子,…

帯には「この本は野村日魚子(かなこ)の第一歌集!」とある。そうなのだ、これは歌集だし、タイトルは短歌なのだ。 「ヒュー!日向 マッチング短歌」の日向市での交流会の…

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読書日記『静かな力 内向型の人が自分らしく生きるための本』(スーザン・ケイン,グレゴリー・モーン+エリカ・モローズ著,2018)

 『スピリチュアルズ』を読んだとき、私は極端に内向的なんだな、と把握した。外向的なほうが評価されやすい社会で、内向的な私はどう生きて行くのがよいのだろう。ヒント…

読書日記『つくること、つくらないこと 町を面白くする11人の会話』(長谷川浩己・山崎亮・編著,2012)

深く感銘を受けた『コミュニティデザイン』の山崎亮さんが編著者だと知り、図書館で借りた。 「公共空間は行政のものなのか?」 「コミュニティは閉じられがちだけど、排…

読書日記『ずっとお城で暮らしてる』(シャーリイ・ジャクスン,2007)

桜庭一樹激推しの一冊。 たぶん高校生の頃に読んでるけれど、内容を覚えていなかったので買ってみた。 こんなに胸糞悪い小説だったっけ。 こんなに怖い小説だったっけ。 …

短歌「日向への旅」/香雪蘭

ヒュー!日向 マッチング短歌 という企画で佳作を頂き、宮崎県日向市での観光旅行と交流会に招待して頂いた。この旅で詠んだ歌をまとめておこうと思う。ちなみに……Twit…

読書日記『生きる』(谷川俊太郎・詩,岡本よしろう・絵,2013)

今回は絵本。有名な谷川俊太郎の詩「生きる」を絵本にしている。 オモコロの「本屋ダンジョン・バトル」(岡田悠,2023/01/31)にて紹介されていて気になったので図書館で借…

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読書日記『いま集合的無意識を、』(神林長平,2012)

神林長平作品2冊目。 「伊藤計劃を読んだならこれも」と『言壺』を勧めてくれた友人のおすすめ。 正直、『言壺』に感じたような衝撃的面白さは無かった。連作短編集ではな…

読書日記『道化師の蝶 』(円城塔,2012)

2冊目の円城塔作品。やっぱり意味はわからなくて、でも少しわかりそう。その境界線で自分がぐらついているのが楽しい。

けれども、感想を書こうと思っても書けない。起きた瞬間に、「見ていた夢を忘れてしまった」と思うのと同じだ。

だから、コラージュをしてみようと思う。

自分たちの子孫がどこへ行ったか、自分たちの祖先はどこにいたのか、私たちは忘れてしまう。(p149)

ヒト属の最初の言葉は歌だった。(

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Uー25短歌賞応募作品「水があるはず」

Uー25短歌賞応募作品「水があるはず」

香雪 蘭

歴史上もっとも愛を受け継いだ人間として生まれてみたんだ

水中は宇宙に近いと教わってプールサイドでさざめく星たち

大人には気付けぬ速度で蔓延する黒板消しで消せない陰口

ひなたにあるカウンセリングルームから足早に出て涙を流す

水槽で不自由がない金魚たち 許せなくってエアーを止める

教科書をピンクのラインで汚したい 大人になれば忘れるように

地球から出てきた石で地球から出ていく夢

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読書日記『金子きみ短歌抄』(2002)

先日のNHKスペシャルを観た方が、「短歌の子におばの歌集を渡して欲しい」と三笠山展望閣に置いていかれたそう。

「そんなドラマみたいなことあっていいんですか?!」って思いながら、展望閣の方から受け取り、その場で読んだ。

気に入った歌とそれについての感想を書いておく。

左右を「さゆう」か「ひだりみぎ」で読むか迷う。どっちにしろ、定型ではないからリズムが掴みにくいのだけれど、「〜ばかり」が新しいリ

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読書日記『君が前の彼氏としたキスの回数なんて俺が3日でぬいてやるぜ』(三代目魚武 濱田成夫,1994)

読書日記『君が前の彼氏としたキスの回数なんて俺が3日でぬいてやるぜ』(三代目魚武 濱田成夫,1994)

図書館の「詩・俳句・短歌」のコーナーで見つけた。このタイトル凄すぎないか…???と思って借りた。

良すぎる。最後の「そしたらいっぱい くう」は、きんにくんの「パワー ハッ(笑)」を付けたいくらいに良い。良いなぁ。

短さも相まって、なんだか短歌みたいだ。「ソースのあるところ」は自分の家なのかもしれないし、恋人の家なのかもしれない。熱々の豚まんのほうが美味しいだろうに、それを少し我慢して、ソースを

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2023年5月 自選5首/香雪蘭

2023年5月 自選5首/香雪蘭

他の方々がやっていて羨ましくなったので。続けるかどうかは未定です。

ワイパーの半径外に桜花 拭いきれないほどの春だね

カーテンを束ねる-広げる-また束ねる 欠かさないよう豆苗を飼う 

       連作「新生活」より

燃えるゴミ用の袋が昼前の道路に黄色い影を落として  

       連作「新生活」より

ひだまりが少し遠くて猫たちを代用品のように抱いて寝る

引き出しの中に詰め込むシー

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短歌連作「新生活」/香雪蘭

短歌連作「新生活」/香雪蘭

スランプというか、短歌わからない期というか、そんなものにはまってしまい、短歌から少し離れていたのですが、今朝、猛烈に作りたくなったので連作を作りました。リハビリです。ゆっくりでいいから、短歌と仲直りできるといいな。

「新生活」

燃えるゴミ用の袋が昼前の道路に黄色い影を落として

カーテンを束ねる-広げる-また束ねる 欠かさないよう豆苗を飼う

またねって誓いで別れた人のため初任給で買う来客布団

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読書日記『小指の先の天使』(神林長平,2006)

読書日記『小指の先の天使』(神林長平,2006)

神林長平作品3冊目。
桜庭一樹の書評本でこの作品を知り、文庫本で購入してみた。単行本は2003年刊行。

神林長平の興味の対象は、「認知」「言語」「集合的無意識」なのかな〜と感じていて、それはこの作品にも通じている。その上で、今まで読んできた作品の中で、一番読者向け、というか大衆受けしそうなテーマの作品だった。

そして、やはり、短編連作を編むのが上手すぎる…!!時系列順ではないのだと考察するが、

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読書日記『オールアラウンドユー』(木下龍也,2022)

読書日記『オールアラウンドユー』(木下龍也,2022)

ジュンク堂で購入。木下龍也の第三歌集。木下さんの『天才による凡人のための短歌教室』を手に短歌を始めたせいもあると思うけれど、響いた歌集だった。

読了日:2023/03/01

読書日記『水のために咲く花』(宮川聖子,2019)

読書日記『水のために咲く花』(宮川聖子,2019)

ジュンク堂で購入。タイトルに一目惚れして買ったけれど、意外とタイトルっぽい短歌は少ないような気がして、歌集としてはあまり響かなかった。しかし、良い短歌はかなりあった。

読了日:2023/02/25

読書日記『百年後 嵐のように恋がしたいとあなたは言い 実際嵐になった すべてがこわれわたしたちはそれを見た』(野村日魚子,2022)

読書日記『百年後 嵐のように恋がしたいとあなたは言い 実際嵐になった すべてがこわれわたしたちはそれを見た』(野村日魚子,2022)

帯には「この本は野村日魚子(かなこ)の第一歌集!」とある。そうなのだ、これは歌集だし、タイトルは短歌なのだ。

「ヒュー!日向 マッチング短歌」の日向市での交流会の際に、話題に上っていて、気になったので買ってみた。

予想以上によかった。半ギレしそうなくらいよかった。バイト中も頭から離れなかった。

この歌集については、千種創一(歌人・詩人)が評しており、その評も良かったので置いておく。

タイト

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読書日記『静かな力 内向型の人が自分らしく生きるための本』(スーザン・ケイン,グレゴリー・モーン+エリカ・モローズ著,2018)

読書日記『静かな力 内向型の人が自分らしく生きるための本』(スーザン・ケイン,グレゴリー・モーン+エリカ・モローズ著,2018)

 『スピリチュアルズ』を読んだとき、私は極端に内向的なんだな、と把握した。外向的なほうが評価されやすい社会で、内向的な私はどう生きて行くのがよいのだろう。ヒントを得るために読んでみた。

 興味深かったのは

・人口の約1/3が内向型である
・内向型は周りを配慮するリーダーシップをとれる
・「もの静か」と「勇気ある行動ができる」は共存できる
・無理に外向型のフリをして消耗するのではなく、内向型の洞

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読書日記『つくること、つくらないこと 町を面白くする11人の会話』(長谷川浩己・山崎亮・編著,2012)

読書日記『つくること、つくらないこと 町を面白くする11人の会話』(長谷川浩己・山崎亮・編著,2012)

深く感銘を受けた『コミュニティデザイン』の山崎亮さんが編著者だと知り、図書館で借りた。

「公共空間は行政のものなのか?」
「コミュニティは閉じられがちだけど、排他的にならないほうがいい」
「仕事はその人のあり方から作られていく」
「デザインするってなんだ?デザインにできることってなんだ?」
みたいな話を山崎さん、長谷川さん、ゲストで鼎談する本。

最近、ドット道東の「面白い地域には面白いデザイナ

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読書日記『ずっとお城で暮らしてる』(シャーリイ・ジャクスン,2007)

読書日記『ずっとお城で暮らしてる』(シャーリイ・ジャクスン,2007)

桜庭一樹激推しの一冊。
たぶん高校生の頃に読んでるけれど、内容を覚えていなかったので買ってみた。

こんなに胸糞悪い小説だったっけ。
こんなに怖い小説だったっけ。
とんでもなくリアルな悪意を描いている小説だった。一番まともなのは主人公の飼い猫・ジョナスといえば胸糞悪さが伝わるだろうか。

後味が悪いし、他の人に読んで!と気軽に渡せないけど、静かに本棚の目立つところに置いておきたいような本だった。

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短歌「日向への旅」/香雪蘭

短歌「日向への旅」/香雪蘭

ヒュー!日向 マッチング短歌 という企画で佳作を頂き、宮崎県日向市での観光旅行と交流会に招待して頂いた。この旅で詠んだ歌をまとめておこうと思う。ちなみに……Twitterで「#ヒュー日向ヒュー短歌」を検索すると、旅のお仲間たちが詠んだすてきな短歌が出てきます。

雪なかの街の光が線になる様を横目に「ルージュの伝言」

牧水の旅が僕らの旅になるそしていつかはあなたの旅に

早春の天敵スギの花粉さえ今

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読書日記『生きる』(谷川俊太郎・詩,岡本よしろう・絵,2013)

読書日記『生きる』(谷川俊太郎・詩,岡本よしろう・絵,2013)

今回は絵本。有名な谷川俊太郎の詩「生きる」を絵本にしている。

オモコロの「本屋ダンジョン・バトル」(岡田悠,2023/01/31)にて紹介されていて気になったので図書館で借りた。

「生きる」という詩自体は小学生の頃に暗記させられていたし、その時から良い詩だと感動していたので特段言うことはない。

でも、それが絵本になったときに、また違った部分で感動できるようになっていた。

詩自体で好きな部分

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読書日記『いま集合的無意識を、』(神林長平,2012)

読書日記『いま集合的無意識を、』(神林長平,2012)

神林長平作品2冊目。
「伊藤計劃を読んだならこれも」と『言壺』を勧めてくれた友人のおすすめ。

正直、『言壺』に感じたような衝撃的面白さは無かった。連作短編集ではなく、初出がバラバラの短編を集めたものだからだろう。

好きなのは「かくも無数の悲鳴」、次点で「切り落とし」「いま集合的無意識を、」かな。

「かくも無数の悲鳴」は量子力学的なお話で、物理は全然わからないけど、こういう話は大好き。

「切

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