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読書日記『小指の先の天使』(神林長平,2006)

読書日記『小指の先の天使』(神林長平,2006)

神林長平作品3冊目。
桜庭一樹の書評本でこの作品を知り、文庫本で購入してみた。単行本は2003年刊行。

神林長平の興味の対象は、「認知」「言語」「集合的無意識」なのかな〜と感じていて、それはこの作品にも通じている。その上で、今まで読んできた作品の中で、一番読者向け、というか大衆受けしそうなテーマの作品だった。

そして、やはり、短編連作を編むのが上手すぎる…!!時系列順ではないのだと考察するが、

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読書日記『オールアラウンドユー』(木下龍也,2022)

読書日記『オールアラウンドユー』(木下龍也,2022)

ジュンク堂で購入。木下龍也の第三歌集。木下さんの『天才による凡人のための短歌教室』を手に短歌を始めたせいもあると思うけれど、響いた歌集だった。

読了日:2023/03/01

読書日記『水のために咲く花』(宮川聖子,2019)

読書日記『水のために咲く花』(宮川聖子,2019)

ジュンク堂で購入。タイトルに一目惚れして買ったけれど、意外とタイトルっぽい短歌は少ないような気がして、歌集としてはあまり響かなかった。しかし、良い短歌はかなりあった。

読了日:2023/02/25

読書日記『百年後 嵐のように恋がしたいとあなたは言い 実際嵐になった すべてがこわれわたしたちはそれを見た』(野村日魚子,2022)

読書日記『百年後 嵐のように恋がしたいとあなたは言い 実際嵐になった すべてがこわれわたしたちはそれを見た』(野村日魚子,2022)

帯には「この本は野村日魚子(かなこ)の第一歌集!」とある。そうなのだ、これは歌集だし、タイトルは短歌なのだ。

「ヒュー!日向 マッチング短歌」の日向市での交流会の際に、話題に上っていて、気になったので買ってみた。

予想以上によかった。半ギレしそうなくらいよかった。バイト中も頭から離れなかった。

この歌集については、千種創一(歌人・詩人)が評しており、その評も良かったので置いておく。

タイト

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読書日記『静かな力 内向型の人が自分らしく生きるための本』(スーザン・ケイン,グレゴリー・モーン+エリカ・モローズ著,2018)

読書日記『静かな力 内向型の人が自分らしく生きるための本』(スーザン・ケイン,グレゴリー・モーン+エリカ・モローズ著,2018)

 『スピリチュアルズ』を読んだとき、私は極端に内向的なんだな、と把握した。外向的なほうが評価されやすい社会で、内向的な私はどう生きて行くのがよいのだろう。ヒントを得るために読んでみた。

 興味深かったのは

・人口の約1/3が内向型である
・内向型は周りを配慮するリーダーシップをとれる
・「もの静か」と「勇気ある行動ができる」は共存できる
・無理に外向型のフリをして消耗するのではなく、内向型の洞

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読書日記『つくること、つくらないこと 町を面白くする11人の会話』(長谷川浩己・山崎亮・編著,2012)

読書日記『つくること、つくらないこと 町を面白くする11人の会話』(長谷川浩己・山崎亮・編著,2012)

深く感銘を受けた『コミュニティデザイン』の山崎亮さんが編著者だと知り、図書館で借りた。

「公共空間は行政のものなのか?」
「コミュニティは閉じられがちだけど、排他的にならないほうがいい」
「仕事はその人のあり方から作られていく」
「デザインするってなんだ?デザインにできることってなんだ?」
みたいな話を山崎さん、長谷川さん、ゲストで鼎談する本。

最近、ドット道東の「面白い地域には面白いデザイナ

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読書日記『ずっとお城で暮らしてる』(シャーリイ・ジャクスン,2007)

読書日記『ずっとお城で暮らしてる』(シャーリイ・ジャクスン,2007)

桜庭一樹激推しの一冊。
たぶん高校生の頃に読んでるけれど、内容を覚えていなかったので買ってみた。

こんなに胸糞悪い小説だったっけ。
こんなに怖い小説だったっけ。
とんでもなくリアルな悪意を描いている小説だった。一番まともなのは主人公の飼い猫・ジョナスといえば胸糞悪さが伝わるだろうか。

後味が悪いし、他の人に読んで!と気軽に渡せないけど、静かに本棚の目立つところに置いておきたいような本だった。

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読書日記『生きる』(谷川俊太郎・詩,岡本よしろう・絵,2013)

読書日記『生きる』(谷川俊太郎・詩,岡本よしろう・絵,2013)

今回は絵本。有名な谷川俊太郎の詩「生きる」を絵本にしている。

オモコロの「本屋ダンジョン・バトル」(岡田悠,2023/01/31)にて紹介されていて気になったので図書館で借りた。

「生きる」という詩自体は小学生の頃に暗記させられていたし、その時から良い詩だと感動していたので特段言うことはない。

でも、それが絵本になったときに、また違った部分で感動できるようになっていた。

詩自体で好きな部分

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読書日記『いま集合的無意識を、』(神林長平,2012)

読書日記『いま集合的無意識を、』(神林長平,2012)

神林長平作品2冊目。
「伊藤計劃を読んだならこれも」と『言壺』を勧めてくれた友人のおすすめ。

正直、『言壺』に感じたような衝撃的面白さは無かった。連作短編集ではなく、初出がバラバラの短編を集めたものだからだろう。

好きなのは「かくも無数の悲鳴」、次点で「切り落とし」「いま集合的無意識を、」かな。

「かくも無数の悲鳴」は量子力学的なお話で、物理は全然わからないけど、こういう話は大好き。

「切

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読書日記『言壺』(神林長平,1994)

読書日記『言壺』(神林長平,1994)

SFにハマってるんだ、と話したら、中学からの友人がおすすめしてくれた。友人曰く、「神林先生の作品の中では一番理解しやすく、書きたいことが明確なので初心者向け」らしい。

その後、『小説という毒を浴びる』(桜庭一樹)でもおすすめされていたので、期待値を高く読み始めた。

万能著述支援用マシン「ワーカム」を巡る9編の短編が収録されている。

「言語」と「認識している世界」の関係を描いているという点では

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読書日記『たんぽるぽる』(雪舟えま,2022)

読書日記『たんぽるぽる』(雪舟えま,2022)

雪舟えまの歌集『たんぽるぽる』(2011年,短歌研究社)に「地球の恋人たちの朝食」(2001〜2008年,ウェブ日記)を追加したもの。

『はーはー姫が彼女の王子たちに出逢うまで』(雪舟えま,2018)は私が初めて買った歌集だったが、『たんぽるぽる』は未読だったので買った。

表紙がたんぽるぽるしていてかわいい。春になったらピクニックに連れて行こう。きっとそうしよう。

雪舟さんの短歌には、衒いの

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読書日記『侵略少女』(古野まほろ,2022)

読書日記『侵略少女』(古野まほろ,2022)

中学生の頃から追っかけている古野まほろの最新作。

『終末少女』『征服少女』とともに天国三部作と呼ばれている通り、天国と人間と地獄のものがたり。
もちろん、本格ミステリで、古野まほろ節がゴリゴリだ。だから、予定調和的に女子校で、予定調和的に孤島であり密室で、予定調和的に読者への挑戦状がある。分厚さもいつも通りで、本を開くまでのタメの時間が必要だけれど、読み始めてしまえば貪るように読み進めてしまう。

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読書日記『コミュニティデザイン 人がつながるしくみをつくる 』(山崎亮,2011)

読書日記『コミュニティデザイン 人がつながるしくみをつくる 』(山崎亮,2011)

1、2年前に日本農業新聞にて掲載されていたコラムがきっかけで山崎さんを知った。ワークショップの手法や注意点、どんな効果があったのかを中心に書かれていた。もともと美術やデザインといったものに興味があったし、研究室の分野に近いこともあって、その連載を楽しみにしていた。

そんなきっかけで、本書に目をつけてはいたものの、読むのはこんなに遅くなってしまった。読んでから、「もっと早く読んでおけば良かった〜!

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読書日記『パーラ 上・下』(三ラルフ・イーザウ,2004)

読書日記『パーラ 上・下』(三ラルフ・イーザウ,2004)

ミヒャエル・エンデに設定が近くて、(ついでに置いてある棚も近くて、)詩が章扉に書いてあって、その詩が物語の鍵になっていく児童文学が好きだった。もう一度読みたかったけれど、タイトルも作者名も思い出せずにいた。一縷の望みを賭けて、地元図書館の児童文学コーナーで探したら、拍子抜けするほど簡単に見つかった。それがこの本。

これはパーラという想像力と創造力が豊かな少女が、町の人の「ことば」を取り戻すための

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