けんぴ/香雪蘭

おもに読書と短歌の記録を綴っています。短歌を詠むときは香雪蘭の筆名を使うことがあります。

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読書日記『道化師の蝶 』(円城塔,2012)

2冊目の円城塔作品。やっぱり意味はわからなくて、でも少しわかりそう。その境界線で自分がぐらついているのが楽しい。 けれども、感想を書こうと思っても書けない。起きた瞬間に、「見ていた夢を忘れてしまった」と思うのと同じだ。 だから、コラージュをしてみようと思う。 自分たちの子孫がどこへ行ったか、自分たちの祖先はどこにいたのか、私たちは忘れてしまう。(p149) ヒト属の最初の言葉は歌だった。(p172) 松の幹へ”CROATOAN”と刻むべきかと一瞬浮かぶがやめにしてお

    • Uー25短歌賞応募作品「水があるはず」

      香雪 蘭 歴史上もっとも愛を受け継いだ人間として生まれてみたんだ 水中は宇宙に近いと教わってプールサイドでさざめく星たち 大人には気付けぬ速度で蔓延する黒板消しで消せない陰口 ひなたにあるカウンセリングルームから足早に出て涙を流す 水槽で不自由がない金魚たち 許せなくってエアーを止める 教科書をピンクのラインで汚したい 大人になれば忘れるように 地球から出てきた石で地球から出ていく夢を描く日本画 泣いたって部屋の湿度は変わらない 愛は冷たく白い光だ 本当に好

      • 読書日記『金子きみ短歌抄』(2002)

        先日のNHKスペシャルを観た方が、「短歌の子におばの歌集を渡して欲しい」と三笠山展望閣に置いていかれたそう。 「そんなドラマみたいなことあっていいんですか?!」って思いながら、展望閣の方から受け取り、その場で読んだ。 気に入った歌とそれについての感想を書いておく。 左右を「さゆう」か「ひだりみぎ」で読むか迷う。どっちにしろ、定型ではないからリズムが掴みにくいのだけれど、「〜ばかり」が新しいリズムを生み出していて好き。北海道の美しいけれど厳しい冬の感じも伝わって良いな。

        • 読書日記『君が前の彼氏としたキスの回数なんて俺が3日でぬいてやるぜ』(三代目魚武 濱田成夫,1994)

          図書館の「詩・俳句・短歌」のコーナーで見つけた。このタイトル凄すぎないか…???と思って借りた。 良すぎる。最後の「そしたらいっぱい くう」は、きんにくんの「パワー ハッ(笑)」を付けたいくらいに良い。良いなぁ。 短さも相まって、なんだか短歌みたいだ。「ソースのあるところ」は自分の家なのかもしれないし、恋人の家なのかもしれない。熱々の豚まんのほうが美味しいだろうに、それを少し我慢して、ソースをつけたい、という状況が独特だけど共感できて好きだ。 わかる〜!となった詩。あれ

        読書日記『道化師の蝶 』(円城塔,2012)

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          2023年5月 自選5首/香雪蘭

          他の方々がやっていて羨ましくなったので。続けるかどうかは未定です。 ワイパーの半径外に桜花 拭いきれないほどの春だね カーテンを束ねる-広げる-また束ねる 欠かさないよう豆苗を飼う         連作「新生活」より 燃えるゴミ用の袋が昼前の道路に黄色い影を落として          連作「新生活」より ひだまりが少し遠くて猫たちを代用品のように抱いて寝る 引き出しの中に詰め込むシーグラス さわれる海があるっていいね

          2023年5月 自選5首/香雪蘭

          短歌連作「新生活」/香雪蘭

          スランプというか、短歌わからない期というか、そんなものにはまってしまい、短歌から少し離れていたのですが、今朝、猛烈に作りたくなったので連作を作りました。リハビリです。ゆっくりでいいから、短歌と仲直りできるといいな。 「新生活」 燃えるゴミ用の袋が昼前の道路に黄色い影を落として カーテンを束ねる-広げる-また束ねる 欠かさないよう豆苗を飼う またねって誓いで別れた人のため初任給で買う来客布団 寂しさで殺されないからウサギじゃない 泣かない 白目は赤くならない これか

          短歌連作「新生活」/香雪蘭

          読書日記『小指の先の天使』(神林長平,2006)

          神林長平作品3冊目。 桜庭一樹の書評本でこの作品を知り、文庫本で購入してみた。単行本は2003年刊行。 神林長平の興味の対象は、「認知」「言語」「集合的無意識」なのかな〜と感じていて、それはこの作品にも通じている。その上で、今まで読んできた作品の中で、一番読者向け、というか大衆受けしそうなテーマの作品だった。 そして、やはり、短編連作を編むのが上手すぎる…!!時系列順ではないのだと考察するが、読み進めるうちにどんどん、舞台となっている世界について知見を深めて行けるようにな

          読書日記『小指の先の天使』(神林長平,2006)

          読書日記『オールアラウンドユー』(木下龍也,2022)

          ジュンク堂で購入。木下龍也の第三歌集。木下さんの『天才による凡人のための短歌教室』を手に短歌を始めたせいもあると思うけれど、響いた歌集だった。 読了日:2023/03/01

          読書日記『オールアラウンドユー』(木下龍也,2022)

          読書日記『水のために咲く花』(宮川聖子,2019)

          ジュンク堂で購入。タイトルに一目惚れして買ったけれど、意外とタイトルっぽい短歌は少ないような気がして、歌集としてはあまり響かなかった。しかし、良い短歌はかなりあった。 読了日:2023/02/25

          読書日記『水のために咲く花』(宮川聖子,2019)

          読書日記『百年後 嵐のように恋がしたいとあなたは言い 実際嵐になった すべてがこわれわたしたちはそれを見た』(野村日魚子,2022)

          帯には「この本は野村日魚子(かなこ)の第一歌集!」とある。そうなのだ、これは歌集だし、タイトルは短歌なのだ。 「ヒュー!日向 マッチング短歌」の日向市での交流会の際に、話題に上っていて、気になったので買ってみた。 予想以上によかった。半ギレしそうなくらいよかった。バイト中も頭から離れなかった。 この歌集については、千種創一(歌人・詩人)が評しており、その評も良かったので置いておく。 タイトルを含め、ほぼ全て好きな歌なのだが、10首だけしか選べないとしたらこれを選ぶね、

          読書日記『百年後 嵐のように恋がしたいとあなたは言い 実際嵐になった すべてがこわれわたしたちはそれを見た』(野村日魚子,2022)

          読書日記『静かな力 内向型の人が自分らしく生きるための本』(スーザン・ケイン,グレゴリー・モーン+エリカ・モローズ著,2018)

           『スピリチュアルズ』を読んだとき、私は極端に内向的なんだな、と把握した。外向的なほうが評価されやすい社会で、内向的な私はどう生きて行くのがよいのだろう。ヒントを得るために読んでみた。  興味深かったのは ・人口の約1/3が内向型である ・内向型は周りを配慮するリーダーシップをとれる ・「もの静か」と「勇気ある行動ができる」は共存できる ・無理に外向型のフリをして消耗するのではなく、内向型の洞察力や聞く力、思索力を伸ばせ という点。  本にもあるように、小学校〜高校で

          読書日記『静かな力 内向型の人が自分らしく生きるための本』(スーザン・ケイン,グレゴリー・モーン+エリカ・モローズ著,2018)

          読書日記『つくること、つくらないこと 町を面白くする11人の会話』(長谷川浩己・山崎亮・編著,2012)

          深く感銘を受けた『コミュニティデザイン』の山崎亮さんが編著者だと知り、図書館で借りた。 「公共空間は行政のものなのか?」 「コミュニティは閉じられがちだけど、排他的にならないほうがいい」 「仕事はその人のあり方から作られていく」 「デザインするってなんだ?デザインにできることってなんだ?」 みたいな話を山崎さん、長谷川さん、ゲストで鼎談する本。 最近、ドット道東の「面白い地域には面白いデザイナーがいる」という本(未読未購入)のトークイベントに参加し、計画やマネジメントなど

          読書日記『つくること、つくらないこと 町を面白くする11人の会話』(長谷川浩己・山崎亮・編著,2012)

          読書日記『ずっとお城で暮らしてる』(シャーリイ・ジャクスン,2007)

          桜庭一樹激推しの一冊。 たぶん高校生の頃に読んでるけれど、内容を覚えていなかったので買ってみた。 こんなに胸糞悪い小説だったっけ。 こんなに怖い小説だったっけ。 とんでもなくリアルな悪意を描いている小説だった。一番まともなのは主人公の飼い猫・ジョナスといえば胸糞悪さが伝わるだろうか。 後味が悪いし、他の人に読んで!と気軽に渡せないけど、静かに本棚の目立つところに置いておきたいような本だった。 読了日:2023/02/12

          読書日記『ずっとお城で暮らしてる』(シャーリイ・ジャクスン,2007)

          短歌「日向への旅」/香雪蘭

          ヒュー!日向 マッチング短歌 という企画で佳作を頂き、宮崎県日向市での観光旅行と交流会に招待して頂いた。この旅で詠んだ歌をまとめておこうと思う。ちなみに……Twitterで「#ヒュー日向ヒュー短歌」を検索すると、旅のお仲間たちが詠んだすてきな短歌が出てきます。 雪なかの街の光が線になる様を横目に「ルージュの伝言」 牧水の旅が僕らの旅になるそしていつかはあなたの旅に 早春の天敵スギの花粉さえ今日は許せる遠足のバス 三度目の宮崎県はまるい山まろい海色こころもまーるく ア

          短歌「日向への旅」/香雪蘭

          読書日記『生きる』(谷川俊太郎・詩,岡本よしろう・絵,2013)

          今回は絵本。有名な谷川俊太郎の詩「生きる」を絵本にしている。 オモコロの「本屋ダンジョン・バトル」(岡田悠,2023/01/31)にて紹介されていて気になったので図書館で借りた。 「生きる」という詩自体は小学生の頃に暗記させられていたし、その時から良い詩だと感動していたので特段言うことはない。 でも、それが絵本になったときに、また違った部分で感動できるようになっていた。 詩自体で好きな部分は 「すべての美しいものに出会うということ」 という一節だが、絵本では 「

          読書日記『生きる』(谷川俊太郎・詩,岡本よしろう・絵,2013)

          読書日記『いま集合的無意識を、』(神林長平,2012)

          神林長平作品2冊目。 「伊藤計劃を読んだならこれも」と『言壺』を勧めてくれた友人のおすすめ。 正直、『言壺』に感じたような衝撃的面白さは無かった。連作短編集ではなく、初出がバラバラの短編を集めたものだからだろう。 好きなのは「かくも無数の悲鳴」、次点で「切り落とし」「いま集合的無意識を、」かな。 「かくも無数の悲鳴」は量子力学的なお話で、物理は全然わからないけど、こういう話は大好き。 「切り落とし」は『言壺』にも似ている。ネット上の自分と現実の自分にどれくらい違いがあ

          読書日記『いま集合的無意識を、』(神林長平,2012)