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読書日記『いま集合的無意識を、』(神林長平,2012)

神林長平作品2冊目。
「伊藤計劃を読んだならこれも」と『言壺』を勧めてくれた友人のおすすめ。

正直、『言壺』に感じたような衝撃的面白さは無かった。連作短編集ではなく、初出がバラバラの短編を集めたものだからだろう。

好きなのは「かくも無数の悲鳴」、次点で「切り落とし」「いま集合的無意識を、」かな。

「かくも無数の悲鳴」は量子力学的なお話で、物理は全然わからないけど、こういう話は大好き。

「切り落とし」は『言壺』にも似ている。ネット上の自分と現実の自分にどれくらい違いがあるのか?本当の俺はどっちだ?みたいな。死体描写から、DOMANI明日展での谷中佑輔の作品を連想した。なんでこんな死体になったのか、というのがキーになってくるのも好き。

表題作「いま集合的無意識を、」を読むと友人の言いたいことがわかった。後半は難解だけど、掴みがすごく良かったから引き込まれるし、応酬のテンポも心地よい。

ぼくらはいま、人類の集合的無意識を顕在化するテクノロジーを手に入れて、それを意識しようとしている。生まれたときからこのテクノロジーを空気のように当たり前に利用してきた若者たちにとっては、自分の体臭に気がつかないようにかえって意識しづらいのではないかと思ってしまう。伊藤計劃のあの難問に対するひとつの回答が、まさしく現実のものとしていま目の前にある、ということに彼は気がついていただろうか。

p219




読了日:2023/01/30


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