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読書日記『オールアラウンドユー』(木下龍也,2022)

ジュンク堂で購入。木下龍也の第三歌集。木下さんの『天才による凡人のための短歌教室』を手に短歌を始めたせいもあると思うけれど、響いた歌集だった。

波ひとつひとつがぼくのつま先ではるかな旅を終えて崩れる

p6

またわたしだけが残った、そう言って花瓶は夜の空気を抱いた

p12

雪だったころにつけられた足跡を忘れられないひとひらの水

p17

かなしみは洗練されてゆくだろう胸にしまえる鈴のサイズに

p23

ページからこぼれる文字をひとつずつ拾うみたいに話してしまう

p27

たんぽぽに生まれ変わって繁栄のすべてを風に任せてみたい

p40

くちづけのあとも敬語を続ければあなたの森で迷わずに済む

p48

くちづけのたびに明度は低くなりあなたにはもうまぶしさがない

p63

宇宙服のなかではずっとほっぺたがかゆいまま水星を耕す

p94

つながったままでは腕の正確な重さは計れないね のこぎり

p108

もうすこしねむっててくれ目覚めたらきみを泣かせることばかりある

p110

食う者と食われる者をはっきりと隔てるために箸は置かれる

p113

詩はすべて「さみしい」という4文字のバリエーションに過ぎない、けれど

p123

生きなくちゃ 会う約束をしたために暗に生まれる会わない日々を

p125





読了日:2023/03/01


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