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hidesanspiral
読書日記『オールアラウンドユー』(木下龍也,2022)
ジュンク堂で購入。木下龍也の第三歌集。木下さんの『天才による凡人のための短歌教室』を手に短歌を始めたせいもあると思うけれど、響いた歌集だった。
波ひとつひとつがぼくのつま先ではるかな旅を終えて崩れる
またわたしだけが残った、そう言って花瓶は夜の空気を抱いた
雪だったころにつけられた足跡を忘れられないひとひらの水
かなしみは洗練されてゆくだろう胸にしまえる鈴のサイズに
ページからこぼれる文字をひとつずつ拾うみたいに話してしまう
たんぽぽに生まれ変わって繁栄のすべてを風に任せてみたい
くちづけのあとも敬語を続ければあなたの森で迷わずに済む
くちづけのたびに明度は低くなりあなたにはもうまぶしさがない
宇宙服のなかではずっとほっぺたがかゆいまま水星を耕す
つながったままでは腕の正確な重さは計れないね のこぎり
もうすこしねむっててくれ目覚めたらきみを泣かせることばかりある
食う者と食われる者をはっきりと隔てるために箸は置かれる
詩はすべて「さみしい」という4文字のバリエーションに過ぎない、けれど
生きなくちゃ 会う約束をしたために暗に生まれる会わない日々を
読了日:2023/03/01
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