カスミ

自分のための日記

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記事一覧

【幸せ】名・形動〈し-あわせ〉

しずかな幸福がそこに横たわっていて、その傍らに不安が頭をもたげている。未だ道半ばの自分を恥じ、その間中もトラウマティックで確実な痛みが胸に差し込みつづける。 ふ…

カスミ
5か月前
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牧歌的な思い出/文化浴泉

昔書いたものの転載です。銭湯に行っていないなあ、とぼんやり思っていたら思い出した記事。 ――――――――― 大学生の頃、付き合っていた男性の一人暮らししていた家…

カスミ
5か月前
5

銚子にて

これまで、自分の誕生日は悲しい思い出ばかりだった。私の友人はきっと誘ったら快く祝ってくれる子たちなんだろうけど、ひとりで逃げ出したくなって、海を見に行った。銚子…

カスミ
9か月前
5

涙が出る時

最近めっきり泣くことが減った。ただそれは、向き合うと大変なことを頭の裏側に押し込めているだけ。そんな能力が最近身についたので、嬉々として使っているのだ。とはいえ…

カスミ
11か月前
4

自己像と香水の関係(canoma「4-10 乙女」)

香水をつけるようになって6年、愛用の銘柄はいくつか変わった。初めはChloe「ラブクロエ」。ティッシュのような粉っぽい感じが苦手になった。次がLANVIN「エクラドゥアルペ…

カスミ
2年前
10

【詩】水蜜桃

熱帯夜、氷を張った金盥の中で、柔い産毛の生え揃った桃を洗う。 かろかろと氷がぶつかり、痛いほど冷えた指先に血の色が滲んでくる。 指が沈むほどの桃の肌が、水滴を弾…

カスミ
2年前
5

オンライン自〇から始まる、私の自〇法エトセトラ

お久しぶりです。暑いみたいだね。今年は窓の外で勝手に季節が流れていくから、置いていかれる感覚に涙が出そうになります。 ここしばらくは、比較的健康な精神で生きてお…

カスミ
2年前
5

I love you.の訳し方

「月が綺麗ですね」。あまりにも有名な漱石の逸話だが、私はなんて訳せばいいだろう。文学の学士をとっておいて、ライティングを仕事にしておいて、よくもこれまで考える機…

カスミ
2年前
14

さようなら大嫌いな早稲田大学

春は、曙よりも夜がいい。桜のあとの、気怠げで、剣呑で、官能的な夜の中を歩いていると「綺麗に生きたい」と強く思う。あまりに強く思うから涙が出そうになるが、「綺麗」が…

カスミ
2年前
11

黒髪ロングしか勝たんかった

マッシュショート、ヨシンモリ、ネオウルフといった呪文の羅列、これは髪型についた名前で、どんな髪型にしようかという悩みは自己表現の一環として非常に一般的なものだろ…

カスミ
3年前
10

論理と正しさを盲信すること

あなたにとって、言葉はなんのためにありますか。 別になんでも「正しい」んだけど、わたしの言葉はたぶん自分のためにあるなと思う。鏡を見るように言葉を使っている感覚…

カスミ
3年前
12

容姿コンプレックスと生きた21年

「わたしの顔って、みんなと違うのかも」と、やりたかったキュアホワイト役を可愛いお友達に譲った幼稚園生時代。 「わたしなんかブスだから、男の子を好きになっちゃいけ…

カスミ
4年前
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【幸せ】名・形動〈し-あわせ〉

【幸せ】名・形動〈し-あわせ〉

しずかな幸福がそこに横たわっていて、その傍らに不安が頭をもたげている。未だ道半ばの自分を恥じ、その間中もトラウマティックで確実な痛みが胸に差し込みつづける。
ふと唇に冷えた雪が落ち、それがたちまち溶けて、自分の血が燃えるほど熱いことを知る。これは確かに歓喜で、しかし鬱々としていて、音もなく激しい。とりあえず今日まで生きた私は、この辺りでこれを幸せと呼んでいる。

屈託のない日々、ひとつの気がかり

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牧歌的な思い出/文化浴泉

牧歌的な思い出/文化浴泉

昔書いたものの転載です。銭湯に行っていないなあ、とぼんやり思っていたら思い出した記事。

―――――――――

大学生の頃、付き合っていた男性の一人暮らししていた家が文化浴泉に近く、よく行った。

近いといっても徒歩で20分はかかったろうか。ひとりならきっと煩わしい距離だったが、彼のダウンコートのポケットに手を突っ込める貴重な時間だったので、ちょうどいい散歩ルートのように思っていた。

ふたりして

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銚子にて

銚子にて

これまで、自分の誕生日は悲しい思い出ばかりだった。私の友人はきっと誘ったら快く祝ってくれる子たちなんだろうけど、ひとりで逃げ出したくなって、海を見に行った。銚子への1泊旅行。自分へのご褒美ということで、海沿いの小さな旅館を予約した。その旅で作った作品の一部(韻文系のみ)を放流。

「さみしいね」 生命が逃げてくような発音(8/5 深夜0時 寝つけず詠む)

街という言葉が好きだ 誰も彼も 自分の言

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涙が出る時

涙が出る時

最近めっきり泣くことが減った。ただそれは、向き合うと大変なことを頭の裏側に押し込めているだけ。そんな能力が最近身についたので、嬉々として使っているのだ。とはいえ、ほんとうに泣かない。大学時代に転けるまで、むしろ一年に一度泣くかどうかだった。それが「一日だけでいいから泣かない日がほしい」と思うような惨憺たる日々に変わり、少しずつ立ち直って、今日。

それでもたまに涙が出るが、それはもっぱらLINE

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自己像と香水の関係(canoma「4-10 乙女」)

自己像と香水の関係(canoma「4-10 乙女」)

香水をつけるようになって6年、愛用の銘柄はいくつか変わった。初めはChloe「ラブクロエ」。ティッシュのような粉っぽい感じが苦手になった。次がLANVIN「エクラドゥアルページュ」。この香りの人が街に溢れてて嫌になった。次がJO MALONE「ピオニーアンドブラッシュスエード」。これは気に入って何本も使った。私に似合っている気がして嬉しかったが、自殺以外のことを考えなかった時期に使っていて、ト

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【詩】水蜜桃

【詩】水蜜桃

熱帯夜、氷を張った金盥の中で、柔い産毛の生え揃った桃を洗う。

かろかろと氷がぶつかり、痛いほど冷えた指先に血の色が滲んでくる。

指が沈むほどの桃の肌が、水滴を弾いて清潔な感じだ。

いささかに薄い爪を引っ掛けて皮を剥くと、蜜に濡れた果肉が覗いた。

外はしずかな白い満月だ。

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去年の夏に書いた詩です。暑くなってきそうだから載せます。果物は、どうしても桃が一番

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オンライン自〇から始まる、私の自〇法エトセトラ

オンライン自〇から始まる、私の自〇法エトセトラ

お久しぶりです。暑いみたいだね。今年は窓の外で勝手に季節が流れていくから、置いていかれる感覚に涙が出そうになります。

ここしばらくは、比較的健康な精神で生きております。みなさんいかがお過ごしでしょうか?
心配した友達が代わる代わる家を訪ねて遊んでくれます。今年の誕生日は、怒る人は怒るでしょうが、福岡のよねつさんのご実家で過ごしました。よねつ母がもつ鍋を拵えてくれ、よねつ父がなにやら貴重な焼酎を

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I love you.の訳し方

I love you.の訳し方

「月が綺麗ですね」。あまりにも有名な漱石の逸話だが、私はなんて訳せばいいだろう。文学の学士をとっておいて、ライティングを仕事にしておいて、よくもこれまで考える機会がなかったものだな、と思う。

Twitterでバズるツイートは往々にして言い切り形だ。140文字でいかにインパクトを与えるかが勝負だからかな。そのせいか、主語が大きくなりがちで、喧々諤々の大議論が起きている。その分、深く共感する人々

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さようなら大嫌いな早稲田大学

さようなら大嫌いな早稲田大学

春は、曙よりも夜がいい。桜のあとの、気怠げで、剣呑で、官能的な夜の中を歩いていると「綺麗に生きたい」と強く思う。あまりに強く思うから涙が出そうになるが、「綺麗」がなんのことかは、まだ知らない。体を売らないことだろうか?体を売ることは汚いのだろうか?嘘をつかないことだろうか?自分に?

私が桜の中、初めて大学に新のスーツを着て行った数年前の晴れた日を思い出す。春の陽の淡い色調に、スーツの黒が眩し

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黒髪ロングしか勝たんかった

黒髪ロングしか勝たんかった

マッシュショート、ヨシンモリ、ネオウルフといった呪文の羅列、これは髪型についた名前で、どんな髪型にしようかという悩みは自己表現の一環として非常に一般的なものだろう。
自分らしいなんてものはよくわからんが、これが可愛いと思う、推しがこの髪型なので真似してみる。
髪型なんてなんでもいいんだけど、その悩む時間が楽しかったりする。

一昨日、友人から「どの髪型にしよう」と相談された。いつものことながら、こ

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論理と正しさを盲信すること

論理と正しさを盲信すること

あなたにとって、言葉はなんのためにありますか。
別になんでも「正しい」んだけど、わたしの言葉はたぶん自分のためにあるなと思う。鏡を見るように言葉を使っている感覚がずっとある。意図はなんにせよ(髪型が気になる、ちゃんと可愛いか確認したい、もしかして鼻くそがついているか?)、その時々の自分を見ることに目的があって、そういう意味で、「言葉は鮮度が命」とずっしり感じている。このnoteの下書きにも流産し

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容姿コンプレックスと生きた21年

容姿コンプレックスと生きた21年

「わたしの顔って、みんなと違うのかも」と、やりたかったキュアホワイト役を可愛いお友達に譲った幼稚園生時代。
「わたしなんかブスだから、男の子を好きになっちゃいけない」と泣いた小学生時代。
できるだけ顔を隠すために目を覆う長さまで前髪を伸ばした中学生時代、
「可愛い」「女の子」からできるだけ離れようと意識して過激なキャラクターを演じていた高校生時代、
鏡を割っては泣き、メスを入れた大学生時代……

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