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サクラサク。

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吾輩は猫である。名前は朔(さく)。ご主人様がいる家の帰り道を忘れて、ニンゲン・サクラと出会う。ニンゲンとネコは、生きるスピードが違うのだ。それでも、神様に飼われるその日まで、相手…
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#猫

サクラサク。ep16

サクラサク。ep16

夜と朝が挨拶を交わす。特別だと思っていた金色の世界。
だけど、お日さまはどんどんと登り、景色はあっという間に見慣れた色へと移ろいゆく。

「帰ろうか」

サクラが、自分に言い聞かせるようにつぶやく。
人間と猫による愛の逃避行は、あっという間だった。金色の世界に包まれているときから、きっとサクラはそう言い出すだろうと、名残惜しい気持ちもあるが、何処かではわかっていた。

仕事へと向かう人の波に逆らっ

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サクラサク。ep15

サクラサク。ep15

ガタン、ゴトン。
生まれて初めて乗った電車は、人間に抱きしめてもらった時の、鼓動のリズムと何処か似ている気がした。
全ての生き物は、生まれた時から死ぬまでに胸打つ鼓動の数が同じだと聞いたことがある。ただ、音の速さが違うのだ。

ネズミは早いから寿命も早く訪れるし、カメはとてもゆっくりだそうだ(ご主人様が言っていたことだから、本当かは微妙だ)。

吾輩は猫であるが、人間の心臓の音は、猫より少しゆっく

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サクラサク。ep14

サクラサク。ep14

『銀河鉄道の夜』みたいだ。
--黒猫である吾輩・朔(さく)は、生まれて初めて乗る電車を見てそう思った。何しろ、人生(ネコだから猫生だろうか?)の大半を、ご主人様の家で過ごしてきたのだ。
ご主人様が語ってくれる電車なんて乗り物は、小説の中でしか存在しない空想上のものだと思っていた。
それなのに、吾輩は人間•サクラと電車に揺られている。ご主人様の知らないところで。

「電車の中に入ったら、大人しくして

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サクラサク。ep13

サクラサク。ep13

「クロ、起きてる?出かけよう」

吾輩は猫である。そんな毎度お決まりの挨拶をする暇もなく、サクラは空が明るくなる前に、吾輩をカバンの中に押し込んだ。

思い返せば、サクラは昨晩から様子が不自然だった。
「ただいま」
いつものように玄関まで迎えに行ったが、サクラはしゃがみ込んでしばらく動かなかった。
顔を隠して、何も言葉を発しない。
お腹でも痛いのだろうか。ミャーと鳴いて声をかけてみる。サクラはやっ

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サクラサク。ep12

サクラサク。ep12

吾輩は猫である。名前は朔(さく)。ご主人様と離れて人間・サクラと暮らし始めた。なお、サクラと一緒にいる間はクロと呼ばれている。

お互いが、お互いのいる生活に慣れ始めた。
「ただいま、クロ」
玄関まで迎えに行くと、靴をきれいに揃えるサクラが、吾輩の頭に触れる。吾輩は甘んじて受け止める。

一緒に暮らし始めた当初、サクラは慌てたように帰って来ていた。吾輩のことが心配だったらしい。サクラは今まで猫を飼

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サクラサク。ep11

サクラサク。ep11

吾輩は猫である。名前は朔(さく)。ご主人様が行方不明の今は、サクラというニンゲンにクロと呼ばれている。

「クロ、ごはんだよ!」

朝、サクラの凛とした声が響く。
ご主人様は朝、ぼんやりとしていたことが多かったけれど、サクラはとても元気だ。

美味しそうなスープとパンの焼ける匂いがする。吾輩はカリカリで充分だが、パンにジャムを塗るサクラは幸せそうだ。

“お前は可愛いから、いつか飼ってくれるヤツが

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サクラサク。ep10

サクラサク。ep10

吾輩は猫である。名前は朔(さく)。ご主人様を見失った矢先、ニンゲン・サクラと再会した。
そして、サクラの部屋にいる。

「ほら、クロ。まずは足を綺麗にしようね」

さっき「朔」って呼ばれた気がした。
だけど、サクラは相変わらず「クロ」と呼んでいる。
あれは空耳だったのだろうか。
吾輩がそう呼んでほしくて、聴こえてしまったのだろうか。

サクラの部屋は、花の良い匂いがした。
ご主人様と部屋のサイズは

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サクラサク。ep9

サクラサク。ep9

吾輩は猫である。名前は朔(さく)、のはずだった。ご主人様がくれたと思っていた名前も、呼んでくれる者がいなければ、何の価値もない。

この家は本当にご主人様と吾輩の家だったのだろうか。 

もうあきらめよう。
いくら待っても、ご主人様とは会えないのだ。

ご主人様に捨てられたなんて認めない。

ご主人様と吾輩は、この家に見捨てられたのだ。そして、知らないオジサンの家になった。

だから、ご主人様はこ

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サクラサク。ep8

サクラサク。ep8

「人間とネコではね。生きるスピードが違うんだ」
また始まった。ご主人様の独り言タイム。
可哀想なので、吾輩が話し相手になってあげることにした。

「猫は、人間なんかよりずっと賢くて良いヤツだ」
そんなの、当たり前だろう。
吾輩は胡乱な目で、酒の匂いがする缶を持つご主人様を見つめる。
「だから、神様は人間よりも先に猫を連れて行ってしまう。神様は良い子が好きだからね」

カミサマの話、好きだな。また言

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サクラサク。ep7

サクラサク。ep7

吾輩は猫である。名前は朔(さく)。ニンゲン・サクラにもう一度会うために、グルグルと歩いて、ご主人様の家に帰ってきた。ずっと、ずっと帰りたかった家だった。

なのに、腑に落ちないのはどうしてだろう。サクラと出会ったことに、何か関係があるのだろうか。

とりあえず、落ち着こう。家には帰って来れたのだ。まずはご主人様の顔を見て、カリカリを食べて、それからまたサクラを捜すのでも遅くない。

吾輩は平静を保

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サクラサク。ep6

サクラサク。ep6

吾輩は猫である。名前は朔(さく)。ニンゲン・サクラを捜しに、ご主人様の元へ帰る前に寄り道することを決めた。

しかし、困った。吾輩はただ小川のほとりで待っているだけで、サクラに会えていたのだから、全く手がかりがない。

そういえばこの前、“病院"とか言っていたような。
この近くに病院があるのだろうか。

吾輩は、グルグルと歩いた。
知らない路地や、車道や、庭を歩いた。

何時間も、何日も歩いた。

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サクラサク。ep5

サクラサク。ep5

吾輩、黒猫・朔(さく)にはたくさんの兄弟がいた。
「なぁ、頼むよ。一匹もらってくれないか」
生まれたばかりで、目がまだぼんやりとしか見えていないころ、二人の男の声が聴こえた気がする(定かではない)。

「え、でも俺は独り身だし、動物を育てたことはないよ」
「でも、可愛いだろう?うちはもう手一杯なんだ。頼む。どの子でも良いから」
こうして、吾輩はご主人様に選ばれた。

「いいかい。お前は“預かる”だ

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サクラサク。ep4

サクラサク。ep4

吾輩は猫である。名前は朔(さく)。好き勝手にクロと呼ぶニンゲン・サクラをこの小川で待っている。ご主人様の家への帰り道は、未だ思い出せない。
ある日、サクラはいつもよりたくさんのカリカリを袋ごと渡してきた。
何事かと、吾輩は訝しそうな目つきでサクラを見る。

「しばらく、病院へ行くのはお休みするね」

ビョウインって、あれだろう。
知らないニンゲンに尖った針で、刺されるところだろう。
ご主人様もよく

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サクラサク。ep3

サクラサク。ep3

吾輩は猫である。名前は朔(さく)。それなのに最近、サクラというニンゲンに「クロ」という不本意な名前を付けられた。吾輩、未だ納得していない。

しかし、このニンゲン、知恵をつけて誘惑してくるようになった。
「ほら、クロ。ごはんだよ」
カリカリだ。ご主人様がよくくれた味。

ネコはネズミを食べるなんて聞くが、吾輩は生まれたときから家ネコだ。
動物を狩る勇気は持ち合わせていない。
ネコジャラシには目がな

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