見出し画像

サクラサク。ep7

吾輩は猫である。名前は朔(さく)。ニンゲン・サクラにもう一度会うために、グルグルと歩いて、ご主人様の家に帰ってきた。ずっと、ずっと帰りたかった家だった。

なのに、腑に落ちないのはどうしてだろう。サクラと出会ったことに、何か関係があるのだろうか。

とりあえず、落ち着こう。家には帰って来れたのだ。まずはご主人様の顔を見て、カリカリを食べて、それからまたサクラを捜すのでも遅くない。

吾輩は平静を保とうと、息を吸った。

しかし、予想外の問題が発生した。
ご主人様が帰って来ない。

この時間になったら戻ってくるはずなのだ。
シゴトとかいう、行きたくないところへ文句を言いながら出かけて、文句を言いながら帰ってくる。

今夜はお酒の日なのか?

そう思って待てど暮らせど、やっぱり扉は開かない。
どうして。どうしてなんだ。

吾輩はひたすら待ち続けていた。
が、本当は頭の中で別のことが頭によぎっていた。

近所の野良猫に聞いたことがある。
ムセキニンなニンゲンは、猫を捨てることもあるらしい。
自分から飼いたいと言っておきながら。

いや、でも吾輩のご主人様に限ってそんなことは。
ちゃんと、本当のご主人様になると宣言してくれた。

でも、ニンゲンは時々嘘をつく。吾輩を病院へ連れて行く日みたいに。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?