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記事一覧

(59)新たな不穏

 ブログ「7人家族の真ん中で。」では愛猫しろ美(11歳)が脱走し、捕まえるまでの2ヶ月間を描きました。  しろ美が脱走したその日はダンナが会社の廃業手続きをした日…

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(58)1人より2人、2人より3人

▶︎要領は悪くいこう  ケンが通院しているのは総合病院の精神科だ。かれこれ10年くらい通っているベテラン患者だ。総合病院ならではの担当医の移動が2年に1回くらいあ…

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親子別姓だった夫の話・4(全4話)

 ぼくは美術大学を志望した。  おふくろからは大反対されたが、教員免許を取得することと予備校に通わずにおふくろが決めた家庭教師を受け入れることで許された。  お…

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親子別姓だった夫の話・3(全4話)

 親にも教師にも毎日減らず口をたたいていた。 しかし、友だちはたくさんいて高校生活は楽しかった。ただ、連絡を取り合う手段は固定電話しかなかった時代で、友人から電…

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親子別姓だった夫の話・2(全4話)

 おふくろは市役所に勤めていた。毎朝ぼくを見送ってくれるのは、おばあちゃんだった。学校から帰ってくると家はいつも留守で、どうしても寂しい時は、畑にいるおばあちゃ…

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親子別姓だった夫の話・1(全4話)

 私の夫(政夫)は実母と苗字が違う。産まれた時からずっと母親と一緒に暮らしているが親子別姓だった。  義母は政夫が2歳の時に離婚が成立している。当時、乳飲子の息…

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(57)大丈夫きっと

 ダンナは昔から病院嫌いで、体調不良になってもなかなか病院に行かない。年に1回の健診で「要精密検査」と診断されてやっと腰を上げる程度だ。なので、ダンナが 「精神…

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(56)お父さんと家族

 ダンナが「適応障害」と診断され、2週間が過ぎました。 当初より睡眠が取れるようになり、少しずつ声が出るようになりました。最初は何か話そうとすると涙が溢れてしま…

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(55)歩みが止まる

 「会社をたたむ。もう無理。」 ダンナが小さい声でゆっくり言った。正直寝耳に水だった。でも、ダンナの表情がいつもと違うので 「そうか、お疲れ様。」 とだけ伝えた。…

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(54)2人は28歳になりました!

 夜は1度寝てしまえば朝まで目が覚めないタイプです。しかし朝、目が覚めて立ち上がると急激な尿意に襲われ、トイレまで悶絶しながら駆け込む年齢になりました。間に合わ…

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(53)苦手は苦手

 お正月明けには 「今年こそ自分の作品を完成させる!」 と力強く語ってくれた2人だったが、製作は一向に進まず長い1日を持て余しながら過ごしている。  リュウからは…

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(52)夢と希望を小出しするひきこもり

今年の3月でケンとリュウは28歳になる。 ひきこもりに限らず30歳前後は人生のターニングポイントの1つではないだろうか。私だったら結婚出産、ダンナは脱サラし起業した…

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(51)ヒキコモリーズの1年

noteは今年最後の更新になります。 息子たちの様子を2023年粛々と描き続けましたが、特に大きな変化も不幸もなく静かに幕を下ろそうとしています。   「今年は1本漫画を…

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(50)強迫性障害の一例

最近、ケンが動くようになってきた。 「寒い寒い」と言いながら中庭を通って母屋と離れを行ったり来たりできるようになってきた。 そうなると、リュウとニアミスする危険も…

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「創作大賞」エッセイ部門入選しました!

10月27日(金)四ツ谷にあるnote placeにて「創作大賞」の授賞式があり、参列してきました。 その様子は、後日note公式サイトから記事が更新されると思います。   なので…

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(49)探る日々

ずっと母屋のリビングのソファの上で寝ているだけのケンが、最近私たちが過ごす離れのキッチンに来るようになった。   離れの入り口は3ヶ所あるが、猫が3匹いるので常…

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(59)新たな不穏

(59)新たな不穏

 ブログ「7人家族の真ん中で。」では愛猫しろ美(11歳)が脱走し、捕まえるまでの2ヶ月間を描きました。

 しろ美が脱走したその日はダンナが会社の廃業手続きをした日で、家に入ろうとダンナが開けたドアから脱兎のごとくしろ美が走り去っていった。ただでさえ不穏な空気の中しろ美の脱走に私は混乱し、ダンナはますます自分にストレスを溜め込み始めました。
 適応障害と診断されていたダンナは不眠に拍車がかかり、病

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(58)1人より2人、2人より3人

(58)1人より2人、2人より3人

▶︎要領は悪くいこう

 ケンが通院しているのは総合病院の精神科だ。かれこれ10年くらい通っているベテラン患者だ。総合病院ならではの担当医の移動が2年に1回くらいあり、脈々と医者は変われど病院は変わらない。ケンも私も病院に馴染んでいる。なので、ダンナの病院を決める時もここに白羽の矢がぶっ刺さった。

 そしてケンの通院の前日に、その予定をダンナに伝えた。すると…

 会社を退職し時間もたっぷりある

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親子別姓だった夫の話・4(全4話)

親子別姓だった夫の話・4(全4話)

 ぼくは美術大学を志望した。

 おふくろからは大反対されたが、教員免許を取得することと予備校に通わずにおふくろが決めた家庭教師を受け入れることで許された。

 おふくろは独身時代に教育大の事務をしていた。その教育大の教授との交友関係から美大を卒業後広告代理店に勤務していた林先生を紹介された。

 デッサンと色彩構成を中心にデザイン科の受験対策をマンツーマンで指導してもらった。残念ながら第1志望の

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親子別姓だった夫の話・3(全4話)

親子別姓だった夫の話・3(全4話)

 親にも教師にも毎日減らず口をたたいていた。
しかし、友だちはたくさんいて高校生活は楽しかった。ただ、連絡を取り合う手段は固定電話しかなかった時代で、友人から電話がかかってくると

「はい、鈴木でございます」

 と家族が出るので、だいたい

「すみません、間違えました」

 となっていた。母親と苗字が違うことなんか面倒くさ過ぎて誰にも説明していなかった。

 小学校から高校まで一緒だった幼なじみ

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親子別姓だった夫の話・2(全4話)

親子別姓だった夫の話・2(全4話)

 おふくろは市役所に勤めていた。毎朝ぼくを見送ってくれるのは、おばあちゃんだった。学校から帰ってくると家はいつも留守で、どうしても寂しい時は、畑にいるおばあちゃんのところまで1人で行った。
 
 その頃のぼくは、おふくろの言いつけを守り「神童」と呼ばれていた(笑)

 おふくろと遊んだ記憶はないが、一緒に暮らしていたおばさん(母の妹・未婚)が幼稚園教諭をしていてよく遊んでくれた。当時、おばさんから

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親子別姓だった夫の話・1(全4話)

親子別姓だった夫の話・1(全4話)

 私の夫(政夫)は実母と苗字が違う。産まれた時からずっと母親と一緒に暮らしているが親子別姓だった。

 義母は政夫が2歳の時に離婚が成立している。当時、乳飲子の息子を抱えて逃げるように実家に帰ってきたそうだ。そして離婚が成立した時、義母は旧姓の「鈴木」に戻したが息子は父方の戸籍に残し「竹之内」のままで母親と一緒に暮らすことになった。実は竹之内家は代々続く名家で政夫は、その竹之内家の長男だった。

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(57)大丈夫きっと

(57)大丈夫きっと

 ダンナは昔から病院嫌いで、体調不良になってもなかなか病院に行かない。年に1回の健診で「要精密検査」と診断されてやっと腰を上げる程度だ。なので、ダンナが
「精神科に行きたい」
と言った時は驚いた。20年くらい前にもダンナは1度「鬱」状態になったことがある。私が異変に気づき、病院に行こうと何度も手を引っ張ったが頑なに行かなかった。ダンナは
「病気ではない」
「わかっている、大丈夫」
を繰り返し、半年

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(56)お父さんと家族

(56)お父さんと家族

 ダンナが「適応障害」と診断され、2週間が過ぎました。
当初より睡眠が取れるようになり、少しずつ声が出るようになりました。最初は何か話そうとすると涙が溢れてしまって大変でしたが、日常会話は泣かずにできるようになりました。

 先日、ダンナの血圧の薬をもらうために私がかかりつけ医(内科)のところに行ってきました。その時、ダンナが精神科を受診したこと、ダンナの今の状況などを担当医に話し始めたら、私も涙

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(55)歩みが止まる

(55)歩みが止まる

 「会社をたたむ。もう無理。」

ダンナが小さい声でゆっくり言った。正直寝耳に水だった。でも、ダンナの表情がいつもと違うので
「そうか、お疲れ様。」
とだけ伝えた。
今年3月の誕生日で69歳になったダンナは、普通ならとっくに定年退職している年だ。

 今の会社は58歳の時に起業した。小さいながらも自分の理想と叶えられなかった夢の続きを形にするためだった。もちろん順風満帆ばかりではなかった。でも、と

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(54)2人は28歳になりました!

(54)2人は28歳になりました!

 夜は1度寝てしまえば朝まで目が覚めないタイプです。しかし朝、目が覚めて立ち上がると急激な尿意に襲われ、トイレまで悶絶しながら駆け込む年齢になりました。間に合わず漏れてしまうのも時間の問題かもしれません。そんなオーバー60歳の私ですが、息子たちが28歳になりました。

 3月22日ケンとリュウの誕生日の朝、メイが東京に遊びに行ってくるとでかけた。帰るのは日曜日。
「今日はケンとリュウの誕生日だよ」

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(53)苦手は苦手

(53)苦手は苦手

 お正月明けには
「今年こそ自分の作品を完成させる!」
と力強く語ってくれた2人だったが、製作は一向に進まず長い1日を持て余しながら過ごしている。

 リュウからは
「漫画の始まりと終わりだけできたんだけど、真ん中ができない」
となぞの相談を受け、その翌日にケンから
「ストーリーのオチができなくて、展開ばかり永遠に続いてしまう」
と悩みを打ち明けられた。
 
 ケンに
「リュウは最初と最後のオチだ

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(52)夢と希望を小出しするひきこもり

(52)夢と希望を小出しするひきこもり

今年の3月でケンとリュウは28歳になる。
ひきこもりに限らず30歳前後は人生のターニングポイントの1つではないだろうか。私だったら結婚出産、ダンナは脱サラし起業した頃だ。

ひきこもり生活も10年経つとさすがにベテランの域になってくる。朝ごはんを家族と一緒に食べるようになれば、それはもうプロと言っても過言ではない。
いよいよ脂が乗ってきて、標準では思いもつかないようなバカなことをやり始めるんじゃな

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(51)ヒキコモリーズの1年

(51)ヒキコモリーズの1年

noteは今年最後の更新になります。
息子たちの様子を2023年粛々と描き続けましたが、特に大きな変化も不幸もなく静かに幕を下ろそうとしています。
 
「今年は1本漫画を描きあげる」
と年頭にケンが宣言していたので、その結果を聞いてみたら
「100ページのネームを描いて全部消えて、その後80ページのプロットを書いたがまだそれは完成していない。」
とのこと。

父親から
「1年に漫画1本じゃなくて、

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(50)強迫性障害の一例

(50)強迫性障害の一例

最近、ケンが動くようになってきた。
「寒い寒い」と言いながら中庭を通って母屋と離れを行ったり来たりできるようになってきた。
そうなると、リュウとニアミスする危険も高まるがお互い相手の動向を遠くから観察しながら暗黙の了解で譲り合っている。
もはや、なんで顔を合わせられないのかわからないくらいに2人は気遣いあっている(笑)
 
強迫性障害のケンは自分のスマホを触れなくなって5、6年くらい経っている。そ

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「創作大賞」エッセイ部門入選しました!

「創作大賞」エッセイ部門入選しました!

10月27日(金)四ツ谷にあるnote placeにて「創作大賞」の授賞式があり、参列してきました。
その様子は、後日note公式サイトから記事が更新されると思います。
 
なので、授賞式の後の様子を少し

初対面の人でも話しかけられれば、どんだけでも心を開く自信はあるのですが、自分から声をかけることができない。自意識過剰。
 

「一緒に食べませんか!」 と、ナンパした。無我夢中だった。
 

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(49)探る日々

(49)探る日々

ずっと母屋のリビングのソファの上で寝ているだけのケンが、最近私たちが過ごす離れのキッチンに来るようになった。
 

離れの入り口は3ヶ所あるが、猫が3匹いるので常に施錠されている。母屋から来る人は、自宅とはいえノックをしないと入れない。

リュウが朝ごはんを食べて帰ったすぐ後にノックの音がした。
リュウが忘れの物をしたのかと、ドアを開けたらそこにはケンが立っていた。
めちゃくちゃ私は驚いた。
 

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