打越正行

研究分野:社会学、沖縄、参与観察。書いてきたものに『ヤンキーと地元――解体屋、風俗経営…

打越正行

研究分野:社会学、沖縄、参与観察。書いてきたものに『ヤンキーと地元――解体屋、風俗経営者、ヤミ業者になった沖縄の若者たち』(筑摩書房、2019年)などがある。

記事一覧

ルールの多い銭湯

 東京で生活するようになって、週に1、2回は風呂屋に行く。昨年まで、近いところにおしゃれなスーパー銭湯があったんで、そこに通ってたんだが、なぜか潰れちゃった。次に…

打越正行
2か月前
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Lifetime Blues #12
2022年6月26日
京都の大学生が沖縄を旅して聞いた「いちゃりばちょーでー」
https://onl.bz/ksk2wJq
10:43-

打越正行
11か月前
3

聞くことを共有する

 講義を勝手に開放して2年目になります。    学びなおしの機会をつくるとか、開放的な大学をめざすとかも大事なことですが、なにより和光の学生にとって学びが充実する…

打越正行
11か月前
37

ビアガーデン「どうしても、はらっぱ」

最初は学生2名で始めたのに、そのうち6、7名くらいで毎週火曜に企画会議し始めて、最終的に50名規模のイベントを自分たちでやってのけちゃった。毎年やってるわけでも、ど…

打越正行
1年前
14

ブックリスト

 昨日の図書館ゼミで配布した、ブックリストです。30分であれ以上しゃべれるのかというほど、話し続けてしまいました。本なんて下手に出会ってしまうと大変なことにな…

打越正行
1年前
67

ゼミでの自己紹介

 打越です。私はインタビューや実地調査をして人や社会について調べる社会学者です。私が人について調べるときに大切にしていることは、2つあって、それは長くみることと…

打越正行
1年前
61

シマ歩きの旅(抜粋)

本報告書について  本報告書は、1次データを収録した資料集です。解釈も考察もなされていないままのデータを可能な限り掲載しています。そのような編集方針をとったのは…

打越正行
1年前
11

「銭湯の行動学」論文から考えたこと

 昨年、京都に集中講義に行った時、大学の前に銭湯があった。旅人でも気軽によれ、地元のおっちゃんや学生らと同じ湯につかった。その時以来、大学(の近く)に銭湯があっ…

打越正行
1年前
31

大学で学ぶ前に――学ぶことは楽しい?

これから入試も始まりますので、高校生だけでなく、社会人や既卒生、そして今まさに大学で学んでいる学生さんに向けて、大学で学ぶということについて書いてみます。 学ぶ…

打越正行
1年前
19

生きつづける 沖縄の「アムラー」

 沖縄の繁華街であるR街には、キャバクラ店がひしめき合っている。  高級クラブが並ぶ那覇の松山とは異なり、おもに地元の建築作業員やヤンキーの男性たちを相手にした…

打越正行
2年前
37

始めるタイミング

 4月より和光大学、現代社会学科にて働くこととなりました打越正行と申します。40歳にして初めて専任の仕事に就くこととなりました。そのような私にとって、毎年4月はあま…

打越正行
2年前
55

新入生あいさつ

和光大学への入学、そして編入おめでとうございます。コロナで大変な中での新学期に不安なことも多かったと思いますが、この大学で大いに学んでもらえることをスタッフ一同…

打越正行
2年前
13

学生の皆さんへ

 社会学者の打越正行です。この動画は、学生の皆さんに向けて作成したメッセージ動画です。  学生の皆さんに投票してくださいとお願いはしません。あなたたちは投票す…

打越正行
2年前
10

革命のない大富豪

失業を恐れて保守的に  大富豪というトランプゲームがある。建設現場の昼休みや、週末の打ち上げなどで、仲間と盛り上がる定番のギャンブルだ。大富豪はゲームごとのあが…

打越正行
3年前
27

人の動きで場を制する

那覇とコザ  20kmほど離れた那覇とコザの2つの町は、車なら(渋滞がなければ)1時間程度で移動できる。2つの町で通勤、通学している人も多く、その距離はそんなに離れて…

打越正行
3年前
23

建設業からヤミ仕事へ――「現場号」からの風景

 沖縄の建設現場で働きながら社会調査をしてきた。建設現場で働く従業員は、朝の8時から、ずっと終業時刻の5時半を目指して働く。現場は暑く、資材は重く、そして時には痛…

打越正行
4年前
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ルールの多い銭湯

 東京で生活するようになって、週に1、2回は風呂屋に行く。昨年まで、近いところにおしゃれなスーパー銭湯があったんで、そこに通ってたんだが、なぜか潰れちゃった。次に通い出したちょっと遠いとこも閉店になって、やっと最近、近所にまたスーパー銭湯ができたけど、まあ普通なわりに値段はやや高め。

 ググると、そんな遠くないところに小さな銭湯があったんで行ってみた。受付にいたおばちゃんは、「お客さん初めて?」

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Lifetime Blues #12
2022年6月26日
京都の大学生が沖縄を旅して聞いた「いちゃりばちょーでー」
https://onl.bz/ksk2wJq
10:43-

聞くことを共有する

聞くことを共有する

 講義を勝手に開放して2年目になります。
 
 学びなおしの機会をつくるとか、開放的な大学をめざすとかも大事なことですが、なにより和光の学生にとって学びが充実するからやっています。講義アンケートをみる限り、和光の学生も学外からの参加者によって学びやすい雰囲気となり、有益だったと評価してくれているようなんで今後もやってくつもりです。
 今年も、講義内でおもろいことがありました。

 和光大学には障害

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ビアガーデン「どうしても、はらっぱ」

ビアガーデン「どうしても、はらっぱ」

最初は学生2名で始めたのに、そのうち6、7名くらいで毎週火曜に企画会議し始めて、最終的に50名規模のイベントを自分たちでやってのけちゃった。毎年やってるわけでも、どこかのバックや、教員が支援するでもない。巻き込み上手で、人に頼りながら形にする力、さすがやなあと思う。あとこういう学生たちをなんとか支えたいっていう大学の雰囲気も素晴らしかった。

そろそろ、昔の和光はとかってノスタルジーに浸るんじゃな

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ブックリスト




 昨日の図書館ゼミで配布した、ブックリストです。30分であれ以上しゃべれるのかというほど、話し続けてしまいました。本なんて下手に出会ってしまうと大変なことになるので、図書館にはその覚悟で寄ってってくださいという話をしました。結局、西原さんのと石岡さんの2冊しか紹介できませんでした。続きはまたどこかで、、。

■■■

 大学でものを考えるということは、私にとって孤独で苦痛をともなう営みです

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ゼミでの自己紹介

 打越です。私はインタビューや実地調査をして人や社会について調べる社会学者です。私が人について調べるときに大切にしていることは、2つあって、それは長くみることと、隣でみることです。上から目線で早急に決めつけるようなことはしないということです。

 先日、私の人の見方をアップデートする機会に恵まれました。和光大の坂の下に東和楼という街中華があります。おじさんとおばさんのおふたりで40年以上にわたり続

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シマ歩きの旅(抜粋)

シマ歩きの旅(抜粋)

本報告書について

 本報告書は、1次データを収録した資料集です。解釈も考察もなされていないままのデータを可能な限り掲載しています。そのような編集方針をとったのは、1年足らずの短期間で1次データを解釈、考察してまとめることより、(1)データについて考え続けること、(2)そして同じ場所で同じ現実をみても、私たち観察者は異なるものを異なった見方でみているその「ずれ」や「複数性」を残すことを重視したため

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「銭湯の行動学」論文から考えたこと

 昨年、京都に集中講義に行った時、大学の前に銭湯があった。旅人でも気軽によれ、地元のおっちゃんや学生らと同じ湯につかった。その時以来、大学(の近く)に銭湯があったらなあと考える。

 ある方の論文を読みたくて、手にとったテキストにたまたま載っていた以下の佐藤さんの論文がとっても印象に残ったので、以下メモ。

「公共浴場では、身体それ自体が究極的ななわばりとなる。ここではほかの人びとと居あわせながら

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大学で学ぶ前に――学ぶことは楽しい?

これから入試も始まりますので、高校生だけでなく、社会人や既卒生、そして今まさに大学で学んでいる学生さんに向けて、大学で学ぶということについて書いてみます。

学ぶことは、知らなかったことを理解できたり、できなかったことができるようになったりと、なにかと次のステージにたどり着くことができるので、とても楽しいことだと思います。現時点でそのことに気付いているのだとしたら、とっても幸運なことだと思います。

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生きつづける 沖縄の「アムラー」

 沖縄の繁華街であるR街には、キャバクラ店がひしめき合っている。
 高級クラブが並ぶ那覇の松山とは異なり、おもに地元の建築作業員やヤンキーの男性たちを相手にしたローカルな歓楽街だ。私は社会学者として、沖縄のヤンキーや建築作業員のフィールドワークをしてきた。彼らが通うR街のキャバクラにも、何度か連れて行ってもらった。深酒で酒癖の悪い彼らの飲み方は、お世辞にも上品なものとはいえなかった。
 そんな男性

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始めるタイミング

 4月より和光大学、現代社会学科にて働くこととなりました打越正行と申します。40歳にして初めて専任の仕事に就くこととなりました。そのような私にとって、毎年4月はあまり居心地のいい時期ではありませんでした。入学式や入社式、新しい土地での生活など、世間ではなにかを始める時期ですが、私はそういう流れに乗れずにいたからです。4月だからなにかを始めるとか、誰かと出会うとか、そもそも遊ぶにしろ、学ぶにしろ、大

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新入生あいさつ

和光大学への入学、そして編入おめでとうございます。コロナで大変な中での新学期に不安なことも多かったと思いますが、この大学で大いに学んでもらえることをスタッフ一同、心より願っています。
 私は、和光の学生には自身で人生をひらいていける力をつけて欲しいと考えています。既存の仕組みやルールも大事かもしれませんが、自身で考えてよりよいやり方を自分たちでつくっていって欲しいと強く願っています。

 そのため

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学生の皆さんへ



 社会学者の打越正行です。この動画は、学生の皆さんに向けて作成したメッセージ動画です。
 学生の皆さんに投票してくださいとお願いはしません。あなたたちは投票する責任があると考えるからです。

 まず学生の皆さんは自身のために投票してください。現在の日本社会の状況は、かつてと比較して大変なことになっていて、それを当事者として訴えなければなりません。コロナ禍、就職活動、また非正規雇用の増加など、皆
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革命のない大富豪

革命のない大富豪

失業を恐れて保守的に

 大富豪というトランプゲームがある。建設現場の昼休みや、週末の打ち上げなどで、仲間と盛り上がる定番のギャンブルだ。大富豪はゲームごとのあがる順番で順位が決まる。最下位の者は、次のゲームを始める前に勝者に有利なカードを渡し、その代わりに不要なカードを受け取る。強い者はより強くなり、弱い者はより弱くなるルールが、このゲームの醍醐味のひとつである。
 
 しかし格差が拡がるだけで

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人の動きで場を制する

人の動きで場を制する

那覇とコザ

 20kmほど離れた那覇とコザの2つの町は、車なら(渋滞がなければ)1時間程度で移動できる。2つの町で通勤、通学している人も多く、その距離はそんなに離れていない。

 他方でこの2つの町の文化に温度差を感じている人は多いのではないだろうか。それを感じるのは、使う言葉や人間関係の取り方の場面であったりする。ヤンキーの若者たちのなかにも、その違いは存在し、那覇では「コザは独特だよね」と言

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建設業からヤミ仕事へ――「現場号」からの風景

建設業からヤミ仕事へ――「現場号」からの風景

 沖縄の建設現場で働きながら社会調査をしてきた。建設現場で働く従業員は、朝の8時から、ずっと終業時刻の5時半を目指して働く。現場は暑く、資材は重く、そして時には痛みも伴う。このような感覚で働くため、仕事を終えた時の解放感は、他のどんな仕事よりも格別なものだ。帰りの現場号(建設会社の移動用の車両)では、運転手を尻目に従業員たちはサザンスターを飲み干す。この時間は、丸一日感じた苦痛から解放され、何も考

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