ルールの多い銭湯


 東京で生活するようになって、週に1、2回は風呂屋に行く。昨年まで、近いところにおしゃれなスーパー銭湯があったんで、そこに通ってたんだが、なぜか潰れちゃった。次に通い出したちょっと遠いとこも閉店になって、やっと最近、近所にまたスーパー銭湯ができたけど、まあ普通なわりに値段はやや高め。

 ググると、そんな遠くないところに小さな銭湯があったんで行ってみた。受付にいたおばちゃんは、「お客さん初めて?」「はい」「石鹸もってる?」「いいえ」「もってなかったら買って、風呂に入る前に必ず体を石鹸で洗ってから入ってよ」とわりと強めにつめてくる。

 仕方ないので石鹸を買って、男湯に入ると壁じゅうに注意書きがある。「サウナはタオル持参で」「鍵を持ち帰らないように」「場所取り禁止」「蛇口は足で操作しない」などなど。なんかめんどくさいとこに来ちゃったなと思って、次から近所の普通のとこに行くかと思いながら入浴した。

 しばらくすると、若い方からベテランまで、さまざまな刺青の入った方が次から次へと入浴してくる。注意書きはたくさんあったけど、「刺青、タトゥーの方お断り」って注意書きは確かになかった。

 またしばらくすると、髪も髭も伸び放題のおじさんが入ってきた。その方は浴槽に入ることなく入念に体と頭を洗って出て行った。大きなビニール袋を2,3個持参されてたので路上生活者かもしれない。

 サウナでは、若いにいちゃんが仲間たちの近況報告をしあっている。みんないろいろあるけど生きてるんだなあと感慨にふける。

 1回だけにするつもりだったけど、おもしろくなってきてその後は通ってる。いろんな人が集えるための注意書きだったんだなと、自身の浅はかさを思い知る。そろそろ10回くらい通ってるが、おばちゃんは相変わらず不愛想で、それは誰にも同じように不愛想だ。長くやってるにはそれなりにちゃんと理由があるんだな。スーパー銭湯は絶対に真似できん商売やな。

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