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学生の皆さんへ
社会学者の打越正行です。この動画は、学生の皆さんに向けて作成したメッセージ動画です。 学生の皆さんに投票してくださいとお願いはしません。あなたたちは投票する責任があると考えるからです。 まず学生の皆さんは自身のために投票してください。現在の日本社会の状況は、かつてと比較して大変なことになっていて、それを当事者として訴えなければなりません。コロナ禍、就職活動、また非正規雇用の増加など、皆さんが日々感じている生きづらさは、決してあなたに原因があるわけではなく、日本社会の政治や社会構造に起因することです。それらを訴えるために、まずはあなたのために投票に行ってください。 他方で、私は(いつも口うるさく学生たちに言ってることなんですが)、大変な状況にいますがそれでも皆さんは特権階級にいる人たちであることに変わりはありません。社会問題を認識し、それに対し声を上げることができる環境にあります。どうかあなたと誰かのために投票してください。 いまだ在日コリアンの方は制度的に投票できません。また路上で生活するホームレスのおっちゃんや、私が調査で出会った沖縄の建設現場で働く若者たちの多くはどこかの市町村に投票権はありますが、住む場所を転々としてきたため投票はがきを受け取れない方もたくさんいます。はがきはなくても投票できますがそれほど投票行動と遠い世界を生きているということです。ぜひあなたと誰かのために投票してください。 最近、民主主義がぶっ壊れ、非正規の不安定就労が多くなってきました。その通りです。しかし沖縄ではずっと前からそのような状態が続いてきました。辺野古のことをご存じですか。米軍基地建設に対して、現在の辺野古の立場はどのようなものかご存知ですか。条件付き容認です。このようなことをいうと、だったらはやく基地建設をすすめようと考える人もいるかと思います。 しかし、辺野古に住む人びとは20年反対してきたのです。赤ちゃんは大学生になり辺野古を出て、運動の中心として活動してきた方々も異なる人生のステージにいます。その結果、出した答えが「基地容認」なのです。社会学者の熊本博之さんは、そのような辺野古の人びとを「決定権なき決定者」と言い表しました。そもそもここ20年、辺野古住民に決定権はなかったのです。反対の時は無視され、容認に転じると条件交渉が始まる。これがこれまでもずっと沖縄に民主主義はなかったということの意味です。 もちろんだからといって、本土の人びとが、そして若者がいまになって声を上げることを冷笑するつもりはありません。むしろ、ぜひその声をあげることをためらわないでください。そして自分と誰かのために投票に行ってください。 このくそみたいな社会を、まずはおおいに愚痴りましょう。そしてそこにはまろうとするだけでなく、少しずつ一緒にそんな社会を変えましょう、そしてクソおもろい社会をつくりましょう。ぜひ自分と誰かのために投票に行ってください。