ゼミでの自己紹介

 打越です。私はインタビューや実地調査をして人や社会について調べる社会学者です。私が人について調べるときに大切にしていることは、2つあって、それは長くみることと、隣でみることです。上から目線で早急に決めつけるようなことはしないということです。

 先日、私の人の見方をアップデートする機会に恵まれました。和光大の坂の下に東和楼という街中華があります。おじさんとおばさんのおふたりで40年以上にわたり続けられてきた店です。3月のある日、和光大の学生が飲食後に所持金がなくて支払いができないという場面に遭遇しました。おばさんはお困りのようでしたが、結局その学生に名前も連絡先も聞かずに、「いいですよ、今度持ってきてくだされば、あなたを信じてますから」と伝えて帰しました。40年で3件ほどこの手の出来事があったそうです。そして今まですべてお金はもってきてくれなかったようです。それでも、おばさんは「40年で3件しかないんですよ」と話してくれました。長きにわたり隣で和光大をみてこられた方の言葉として重く受けとめました。

 ちなみに後日訪れてみると、4件目で初めてお金を持ってきてくれたそうです。長く隣でみるということは、時間の長さや距離感の遠近の話ではなく、それらを通じて体に染みついたどっしりとした身構えのことだと教わりました。

 昔の和光大はよかったとノスタルジーに浸りがちですが、今の方がなんぼかまともだといいたくなります。大手のチェーン店ならまだしも、あの手のこじんまりとした街中華で無銭飲食するなんて、なにを学んでいたのでしょう。まあこんなことを言ってたら、「学生たちは今も昔も変わりませんよ」と言われそうです。焦らずに目の前の人びとからじっくり学びつづけること、いまこそとっても大切なことのように思います。1年間よろしくお願いします。


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