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宮崎本大賞の短編小説集「好きなページはありますか。」

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宮崎本大賞のnote( https://note.com/miyazakibon/ )で公開されているショートストーリー集「好きなページはありますか。」の執筆を小宮山剛が務めてい…
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#小説

6.名ばかりの革命、始まったばかりの物語:「好きなページはありますか。」ショートストーリー集

6.名ばかりの革命、始まったばかりの物語:「好きなページはありますか。」ショートストーリー集

この街の冬は暗い。

故郷の宮崎では、真冬の12月といえども穏やかで暖かい時間帯があった。快晴の青空が広がる日の昼間は陽気で心愉しかった。ところがこの福岡の冬は、毎日のように曇り続きだ。これが日本海側の冬なのだと言われればそれまでなのだが、気が塞いでしまう。

六本松の大学校舎に向かう足も、そんな曇り空の下では重い。11月に授業が半年ぶりに再開されたものの、同じく教養部に属する周りの学生たちも浮か

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4.まだ十六、もう十六:「好きなページはありますか。」ショートストーリー集

4.まだ十六、もう十六:「好きなページはありますか。」ショートストーリー集

A1出口を出ると、神保町のビル風が冷たく堪えた。もうカーディガンだけじゃ寒さに耐えられない。冬なのだ。

さっきまでは地下鉄の中にいたし頭に血がのぼっていたしでカッカと暑かったけれど、いつもの「わたしの場所」へ行くまでに随分身体が冷えてしまいそう。もう、全てがあのおじさんのせいに思えてくる。地下鉄で目の前に立って人のことをじっと見つめてくる変態なんて、はじめて会った。しかもきっと、あの変態はわたし

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2.薄いカーディガン、分厚い双眼鏡:「好きなページはありますか。」ショートストーリー集

2.薄いカーディガン、分厚い双眼鏡:「好きなページはありますか。」ショートストーリー集

あの日買うことができなかった薄手のカーディガンがそろそろ必要になってきた。

夏休みが終わり2週間が経とうとしている。夕暮れは空を染めるのを焦り、わたし達は急かされるように日々を畳んでいく。みんなが狭い出口に向かって押しかけているみたいな感覚をおぼえながらも「どこか」「何か」に向かわなければならないと言われるがままに日々を処理していく。

それでも、わたしだけの夏はまだ終わっていない。いやむしろ、

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ショートストーリー集「好きなページはありますか。」はじめます!

ショートストーリー集「好きなページはありますか。」はじめます!

宮崎本大賞実行委員の小宮山剛(椎葉村図書館「ぶん文Bun」所属)です。

この度「第4回宮崎本大賞」のnote運用担当を拝命しましたので、この記事にてご挨拶申し上げます。そしてこのnoteで始めるショートストーリー集「好きなページはありますか。」の文章創作をこれから頑張っていきますので「スキ」やシェアでの応援をよろしくお願いいたします!

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私が宮崎本大賞の実行委員に加入したのは「第3

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