宮崎本大賞

宮崎本大賞(みやざきほんたいしょう)の青は、文庫本と共にある静謐を表しています / 宮…

宮崎本大賞

宮崎本大賞(みやざきほんたいしょう)の青は、文庫本と共にある静謐を表しています / 宮崎本大賞とは…片手で持てる愛らしい「文庫」にこだわる本好き集団。書店、図書館、本に関わる私達が宮崎の将来を革命します / 大賞発表は3月8日(みやの日) / 合言葉「好きなページはありますか。」

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  • 宮崎の本好きたち

    宮崎本大賞に係るならなんでもまとめちゃうマガジンです。「宮崎本大賞」というワードを使ってくださるだけでも、嬉しくてまとめちゃいます📚(2023年3月開始)

  • ショートストーリー『好きなページはありますか。』

    一冊の本の、ひとつのページ。 好きなページが誰かと重なったなら、それは物語のはじまりだ。 「好きなページはありますか。」を合言葉に宮崎本大賞実行委員が紡ぐショートストーリー集…。大切な本を一ページずつめくるようにお楽しみください。

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第5回宮崎本大賞決選の時と、宮崎本大賞の「名称変更」について

2023年10月10日23:59をもちまして、第5回宮崎本大賞の決選投票募集を締め切ります! 📚第5回宮崎本大賞、決選はいま!実行委員長に小宮山剛が就任してから、慌ただしくも「好きなページはありますか。」のことばに忠実であれ!・・・と、走ってきました。 ↑もう一度「宮崎本大賞ってなんだ?」と考えてみたり。 ↑悲しいできごとがありながらも「きっかけを生む」ことに心燃やしたり。 そんな第5回宮崎本大賞も、いよいよ決選投票の締め切りです。5選の素晴らしい候補作から、大賞が選

    • 第5回宮崎本大賞は『うちの父が運転をやめません』

      いろいろとタイトルを考えた。考えて考えて、けっきょくはこのシンプルな事実に行きついた。 「第5回宮崎本大賞は『うちの父が運転をやめません』」という、2024年3月8日に発表されたすばらしい事実、結果、そしてこれからのはじまり。 そう、宮崎本大賞の「発表式」は始まりなのだ。 (↑発表式のようすです↑) 3月8日から宮崎県内の協力書店に並び始めた『うちの父が運転をやめません』宮崎本大賞オリジナルカバー。お店によっては垣谷美雨先生に書いていただいた数量限定サイン本もあります

      • 原田ひ香さんと、けんごさんと「宮崎最奥の村」でお話してみた。

        第5回宮崎本大賞実行委員長を務めております、小宮山剛です。 私は宮崎本大賞の一員であると共に椎葉村図書館「ぶん文Bun」のクリエイティブ司書でもあるわけですが、2023年の秋のこと、二つの立場をうまく組み合わせたイベントが実現しました。 第4回宮崎本大賞を『三千円の使いかた』で受賞された原田ひ香さんの再来宮・・・しかも県内最奥部である椎葉村までお越しくださる機会を創出できました。さらには「小説について語りつくすトークショーにしたい」ということでお招きしたのが、小説紹介クリ

        • 宮崎本大賞は「きっかけの問いかけ」をつづける(そして、ひとつの悲しいできごとについて)

          🖊キックオフミーティング開催と、ひとつの悲しいできごとについて2023年8月3日のこと、ぼくたちは第5回宮崎本大賞の「キックオフミーティング」を企画していた。第3回、第4回と宮崎本大賞に関わってきて第5回で実行委員長に就任したぼくだけれど、いわゆるリアルなミーティングとして実際に宮崎のどこかで集まったことは無い。ぼくたちはあまりにも長くコロナ禍という隔たりの時を過ごしてきたのだ。 ここ2年まるで自分のnoteのように宮崎本大賞のnoteを書いてきて、つい自分の記録を残すかの

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        第5回宮崎本大賞決選の時と、宮崎本大賞の「名称変更」について

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          第5回宮崎本大賞、走り始めます:宮崎本大賞の深いところ

          2023年7月、宮崎県の各地にて。例のごとく私たちはTeamsで集い「第4回宮崎本大賞」の締めくくりを語らった。 ・・・本当は「全員揃って毎回のミーティングの様子をスクショにとって、noteに毎度投稿していきましょう!」と開会と同時に宣言したのだけれど、第1回目のミーティングから撮り忘れ・・・。 (この記事のトップ画像は、最後にドタバタと残った人だけで撮影された) 第5回宮崎本大賞は、そんなミスをしながらも楽しく始まった。 📚宮崎本大賞実行委員は、基本的に愉快な本好きな

          第5回宮崎本大賞、走り始めます:宮崎本大賞の深いところ

          「好きなページはありますか。」クロニクル(時代設定まとめてみた)

          ご無沙汰しております。宮崎本大賞実行委員の小宮山剛です。 2023年3月8日の第4回宮崎本大賞発表からはや2ヶ月が経とうとしています・・・。皆さまいかがお過ごしでしょうか? ○あれから二ヶ月受賞作『三千円の使いかた』のご著者である原田ひ香さんにご来宮いただいての授賞式。ようやく著者さんをお迎えしてのくす玉ぱっかんに、歓喜した宮崎本大賞実行委員一同・・・。 そしてその思い出から時は運ばれ、原田ひ香さんの新作にも期待が高まるところです。 6月22日頃刊行予定とポプラ社さん

          「好きなページはありますか。」クロニクル(時代設定まとめてみた)

          第4回宮崎本大賞発表!その後…

          みなさまお世話になっております。宮崎本大賞実行委員のnote担当、小宮山剛(椎葉村図書館「ぶん文Bun」所属)です。 この宮崎本大賞noteでは、これまで第4回宮崎本大賞の発表(2023.3.8)に向けて「宮崎の本好きの『好き』が高まりすぎてつい書いてしまった」ショートストーリー『好きなページはありますか。』を連載してきました。 宮崎、福岡、東京を巡る時代を超えた物語が「一冊の文庫本」でむすばれていく短編集。苦心しながらも小説を書くなかで、もっともっと本が好きになりました

          第4回宮崎本大賞発表!その後…

          11.好きなページ、つぎのページ:「好きなページはありますか。」ショートストーリー集

          田園都市線の三軒茶屋駅の階段を上がり地上に出て、モバイル端末で目的地までのルートを呼びだす。サングラス型のインフォメーション・ビジョンに3次元地図がリンクして、住所としては太子堂にあたる地区の目的地まで導いてくれる。 「河野風美さんの平均徒歩速度の場合、美容室『つぎのページ』に到着するまでおよそ4分40秒、かかります」 「さっちゃん、取材までちょっと余裕ある。カフェとか入る?」 「2時の取材開始だから、あと15分かぁ。カフェ入るまでもないから、ここらへんぶらぶらして行こ

          11.好きなページ、つぎのページ:「好きなページはありますか。」ショートストーリー集

          10.夢みたい、夢じゃない:「好きなページはありますか。」ショートストーリー集

          「どうやってアポとったのって、企画を出すからには絶対に会いに行く覚悟で動きますよ。企画ポシャッたら困るのは御社じゃないですか~」 嫌味ととられないよう声色に気を配りながら、スマートフォン越しの相手に余裕を示す。本当は、なかなか苦労した案件だったけれど。 A新聞で文化部デスクを務めている反町さんは、電話向こうで「いや~、北野さんはやっぱり違うわ」と、聞こえよがしに漏らしている。彼とは長い付き合いだし何度も会食に行っている仲だけれど、どこがどのように誰と違うのかということは一

          10.夢みたい、夢じゃない:「好きなページはありますか。」ショートストーリー集

          9.エンドロール、リ・スタート:「好きなページはありますか。」ショートストーリー集

          待ちに待った日、わたしの日。 待望で不安な、わたしの日。 「あの『変身記』映画化作品が、米上映後まもなく2002年2月に映画化!」 そんな地下鉄の中吊り広告を見たとき、ちょっと心がざわついた。わたしの手にあった文庫本の中だけの幸せが、大勢の知らない人の手でまさぐられるような気がしたのだ。 わたしだけの本は、本当はみんなのものだった。 そりゃそうか。1968年に邦訳が発売されてから、日本でもずっと大人気な『変身記』。自分で買った文庫版が出たのはわたしが高校2年生のとき

          9.エンドロール、リ・スタート:「好きなページはありますか。」ショートストーリー集

          8.わたしたちの一冊、彼女だけの一生:「好きなページはありますか。」ショートストーリー集

          そんな不気味なまでに丁寧な文章で始まる手紙を受け取ったのは、今から6年前の冬だった。冬がいっそう深まるちょうどこの頃、1月の終わりだ。 実際のところその手紙は、かなり不気味だった。わたしが喫茶「ロンリイ」で時間働きをしていたのは手紙を受け取る10年以上も前のことで、たしかにお店でわたしに声をかけてくる男の人はたくさんいたけれど(手紙とか、寮の電話番号とか、いろんな贈り物とかをもらったっけ)、お店を離れてもなお間柄が続いた人はいなかった。 でも、冒頭に続く文章を読んでわたし

          8.わたしたちの一冊、彼女だけの一生:「好きなページはありますか。」ショートストーリー集

          7.沈黙するストーブ、踊るページ:「好きなページはありますか。」ショートストーリー集

          「河野先生、残業するんやったら無駄な電灯は消しとってくださいよ」 「ああ、はい。すみませんです。後藤先生もお疲れさまでした」 正月気分が抜けきらぬ気だるさが、目の前の紙の束をいっそう分厚く見せる。職員室に置かれただるまストーブが「キン」と音を立て、儚い金属音は誰の返事も待つことなく夜闇に消えていった。 ストーブは再び沈黙した。やはり、この街の冬は暗い。 後藤先生は私よりも二つ下なのだが、九大時代に2年の空白があった私よりも教師歴が長い。そしてこれはおまけだが、私よりも

          7.沈黙するストーブ、踊るページ:「好きなページはありますか。」ショートストーリー集

          6.名ばかりの革命、始まったばかりの物語:「好きなページはありますか。」ショートストーリー集

          この街の冬は暗い。 故郷の宮崎では、真冬の12月といえども穏やかで暖かい時間帯があった。快晴の青空が広がる日の昼間は陽気で心愉しかった。ところがこの福岡の冬は、毎日のように曇り続きだ。これが日本海側の冬なのだと言われればそれまでなのだが、気が塞いでしまう。 六本松の大学校舎に向かう足も、そんな曇り空の下では重い。11月に授業が半年ぶりに再開されたものの、同じく教養部に属する周りの学生たちも浮かれた顔はしていない。沈痛と言うほかない停滞した表情ばかりが並んでいる。もっとも宮

          6.名ばかりの革命、始まったばかりの物語:「好きなページはありますか。」ショートストーリー集

          5.彼女の噂、わたしの寒さ:「好きなページはありますか。」ショートストーリー集

          南国なんて言われちゃう宮崎にだって、秋もあれば冬もある。12月になれば室内でもカーディガンやセーターを着るし、最近ずっとテーケツアツ気味なわたしは何を着ていても寒い。 寒い、寒い、寒い。きっともう、わたしの人生はこれからずっと寒いんだ。 「ねぇ、寒くないと?」 この合宿で同室の堀ちゃんに訊いてみるけれど、ウォークマンで聴いている音楽に夢中なのか反応しない。漏れ出る音から『CAN YOU CELEBRATE?』だとわかる。そうか、わたしよりも安室ちゃんだよね。 毎年12

          5.彼女の噂、わたしの寒さ:「好きなページはありますか。」ショートストーリー集

          4.まだ十六、もう十六:「好きなページはありますか。」ショートストーリー集

          A1出口を出ると、神保町のビル風が冷たく堪えた。もうカーディガンだけじゃ寒さに耐えられない。冬なのだ。 さっきまでは地下鉄の中にいたし頭に血がのぼっていたしでカッカと暑かったけれど、いつもの「わたしの場所」へ行くまでに随分身体が冷えてしまいそう。もう、全てがあのおじさんのせいに思えてくる。地下鉄で目の前に立って人のことをじっと見つめてくる変態なんて、はじめて会った。しかもきっと、あの変態はわたしの胸のあたりをじっと見つめていた。サイテー。 溝の口の駅にもいたあのおじさんは

          4.まだ十六、もう十六:「好きなページはありますか。」ショートストーリー集

          3.硬い吊り革、柔らかい砂浜:「好きなページはありますか。」ショートストーリー集

          高校卒業から24年。ジェームズ・ディーンの人生一回分の時間を、黒木充は東京で暮らしてきた。 ラッシュアワーに人の心は存在しない。横でも前でも後ろでも、どこを見るでもなくただ眼を閉じ、目的地まで耐え抜く無心の境地が必要とされる。そうして無心で満員電車に揺られていると、彼は生まれてから18まで育った宮崎のことを無意識のままに思い出す。愛すべき故郷というのでもない、帰りたい場所というのでもない。ひたすらにだだっ広い海が広がりどこがその街の中心かもわからない、ただの寂れた地方都市と

          3.硬い吊り革、柔らかい砂浜:「好きなページはありますか。」ショートストーリー集