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#030.楽譜を読むための基本 5「拍とリズムの関係 その2」

トランペットや音楽に特化したブログ「ラッパの吹き方:Re」は、ただいま数回に分けて「楽譜を読むための基本」を解説しています。シリーズになっているのでぜひ過去の記事もご覧ください。

僕はトランペットを始めた中学1年生の頃は楽譜があまり読めませんでした。特にリズムを楽譜から理解することができなかったので、これから演奏する音源を手に入れ、何度も何度も楽譜を見ながらそれを聴くことで、なんとか演奏できるところまで漕ぎ着けていました。

楽譜を読むのが苦手な方にこの方法を推奨するわけではありませんが、多くの方の場合「この楽譜を演奏するとこの曲になる」の発想に対して、私の方法は「音楽を楽譜に書き起こすとこうなる」という逆の視点になることで楽譜を機械的ではなく、音楽的に見ることができました。よくも悪くも楽譜に縛られすぎない演奏になっていたと思います。

実際の演奏というのは、アゴーギク(緩急)など、人間味のある演奏をすべきなので、決して楽譜に書いてある情報だけを正しく演奏すれば良いのではないと中学生の段階で音源から知ることができたので、「この楽譜を魅力的に演奏するにはどうしたらいい」という発想で楽譜を読んでいたことが、後々良かったと思えることのひとつです。

また、どんなに複雑なリズムであっても、ひとつのメロディ、ひとつの塊として覚えてしまうことで苦手意識を持つことがほとんどありませんでした。結局はすべて音楽になるのだ、という発想はやはり大切です。

ですので、僕が提案したいのは、もちろんこれまで解説してきた楽譜を読むための理論はきちんと学びつつ(中学生の僕にはこれが圧倒的に不足していました)、しかし楽譜を機械的に読むのではなく、あくまでも「音楽が楽譜に記されている」、という前提で読むこと。そのためには(これから演奏する楽譜以外も)演奏をたくさん聴くこと。できれば音源と楽譜をセットでたくさん聴くことが良いですね。さらに音源は同じものだけでなくいくつも聴き比べることをおすすめします。

本を読むためには単語を知っていることが必要ですが、出てくる単語をいちいち辞書をひいては片っ端から覚えるのは決して良い方法とは言えませんね。それよりも本をたくさん読むことで、出会うたくさんの単語を実用的に覚えていくべきです。楽譜も同様で、たくさんの楽曲と楽譜に出会うことで様々なパターンで書かれたリズムを理解することができるようになるのです。

スウィングを知らなかった音楽の先生の話

中学1年生の時、吹奏楽部でグレン・ミラーの「ムーンライト・セレナーデ」を演奏することになりました。当時は音楽の先生が顧問兼指導者(指揮者)で、たしか音大のピアノ科を出ている先生だったはずです。

ビッグバンドの定番作品。これまでお話していたようにこの頃楽譜が読めませんでしたから、下校途中にレンタルCD屋さんに行くという校則違反をして(常習)、この作品を手に入れました。そして、リズムを覚えて部活の個人練習でそれを再現。そうしているうちに合奏の日が来まして、そこで気づく。

あれ?何か違う。

スウィングのスタイルで誰も演奏をしていなかったのです。楽譜の冒頭に書かれている「Swing」を誰ひとりとして理解していない。『音楽の先生も含めて』

だから本番まで全員がイーブンのリズムで演奏していたという笑い話にもならないような悲惨な演奏をしていました。無知というのは恐ろしい、いや、知ろうとしないことは恐ろしいことです。

ちなみに、ムーンライト・セレナーデのトランペットは前半はずっとミュートで演奏します。Swingを誰も知らずにイーブンで演奏しちゃうくらいなので想像つくと思いますが、楽譜に書かれている「Mute」という文字について誰も知らないどころか、ミュートそのものを誰一人として知らなかった、という衝撃的な状態でした。
私は好奇心旺盛だったので、休日になれば楽器屋さんやらヤマハやらに無意味に通いつめていたので、ミュートという存在を知っていたし、勝手に自分用を手に入れて部活に持ち込んでいました。部室にひとつもなかったので、多分それ以前にミュートを知る人は誰もいなかったのだと思います。歴史の古い中学校だったのに。

「知ろう」とすることはとても大切です。

休符は音楽

そして最後に、楽譜を読む上でもうひとつ大切なことがあります。それは「休符」。特に、音符の間に存在している休符についてです。休符はどうしても「休む」を連想しがちですが、音楽においての休符は「音を出さなくていい」ではなくて「演奏の一部」と考えてください。

音楽は音が鳴っている状態が延々と続いているわけではありませんね。メロディの中でも、フレーズとフレーズの間でもちょっとした音の鳴らない瞬間があり、その「」とも言える休符が音楽の魅力になることが非常に多いのです。
楽譜に書かれた休符をどう演奏するか=魅力的な表現の一部として取り入れるかを研究すると、音楽はより一層引き締まって聴く人の心に届きます。

ぜひ今演奏している作品に出てくる音符と音符の間の休符について音楽的な魅力を表現するにはどうしたらよいか、考えてみてください。

ということで今回はここまでです。


荻原明(おぎわらあきら)

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