阿部としみ

数秘術家です。コロナ禍に書き溜めた数秘術をモチーフにしたファンタジー小説を連載していき…

阿部としみ

数秘術家です。コロナ禍に書き溜めた数秘術をモチーフにしたファンタジー小説を連載していきます。猫とか料理とか旅行とか水彩画とか昭和の歌謡曲とか好きです。http://www.tsukiyomi8.com

記事一覧

自分が自分の世界をつくっている

「オイ、聞いてんのか⁉ ボーっとして!」 病院の待合室、後ろの席の老夫婦のご主人の怒鳴り声に胸がざわつく。 「なんだか疲れちゃって…」 ぼそっとつぶやく奥さんに…

阿部としみ
1か月前
10

母と娘の残された時間のなかで

施設に入居中の母はこの夏が越せるかどうか危うい。 もう寝たきり状態で、言葉もうまくしゃべることができなくなってきている。 訪ねたときは母はすやすや眠っていた。 …

阿部としみ
1か月前
11

老いの香り馥郁と

部屋のどこからか甘い柑橘系の香りがしてきた。 オレンジも買っていないのに? 何か洗剤か化粧品の匂いだろうか? 私は首をかしげて家人に匂いがするか聞いてみたがわから…

阿部としみ
5か月前
7

数秘術で読み解く2024年

衝撃的な幕開けとなった2024年。 いろいろ思うところが多く、毎年恒例のユニバーサルイヤーナンバーリーディングが遅くなりました。 あらためまして今年もどうぞよろし…

阿部としみ
7か月前
9

これを味わいたくて私は生きてる

久しぶりに近所の川辺を散歩。 水辺ってなんかホッコリする。 そこに集っているみんなからいいエネルギーが出てる気がする。 歩きながらいつも観察が楽しみ。 今日の第…

阿部としみ
8か月前
9

楽しいだけじゃダメなのか?

「アナタ! 楽しいだけじゃだめなのよ」 その言葉にずっともやもやしていた。 半年通った水彩画教室を諸事情でやめることにした。 教室のオーナーマダムにもご挨拶に行…

阿部としみ
8か月前
19

小説なんて書けるかいなと思っていた

あれは中学だったか、国語の授業で小説を書く、というのがあった。 少女漫画頭だった私は、萩尾望都先生の世界観を真似しようといさんで書き出したものの、結局最後まで仕…

阿部としみ
9か月前
9

0ゲートからの使者「44」

前回はこちら エピローグ いつものように6時30分にアラームがとげとげしく鳴り響き、布団からのそりと手が出て音が消された。 10分後に再び鳴り響いたスヌーズでよ…

阿部としみ
9か月前
17

0ゲートからの使者「43」

前回はこちら 秋と春の間に 玲衣の夢の中に彼らが現れたのは、ちょうど春分の日。 満月が美しい夜だった。 夢の中で、月明りだけの仄暗い場所にひとりで立っていると、 …

阿部としみ
9か月前
6

0ゲートからの使者「42」

前回はこちら クリスタルの守護者 朝、いつものように半分目を閉じながらベッドから起き上がった玲衣は、足を床についたとたん、イテテテと叫んだ。足も腰も打撲のような…

阿部としみ
9か月前
6

0ゲートからの使者「41」

前回はこちら 何人もの人が重なりあって倒れていた。 ドームの壁は熱にも風にも耐えられるものであったはずだが、空気は灼熱を帯びてきていた。 玲衣は必死で身を起こし、…

阿部としみ
9か月前
6

0ゲートからの使者「40」

前回はこちら コード 大きな扉が開かれ、大広間に人々がたくさん集まっているのが見えた。 皆、SF映画なのか古代ローマなのかわからないような服装をして口々に何かを…

阿部としみ
9か月前
7

0ゲートからの使者「39」

前回はこちら 0ゲート 「玲衣がどうやら記憶を取り戻してきているようよ」 玲衣の無意識である夢の世界を担当しているヤンがそう告げると、スーサが静かにうなずいた。…

阿部としみ
10か月前
6

0ゲートからの使者「38」

前回はこちら 第6章 0ゲート 魂の記憶 三寒四温とは言うものの、3月に入り寒い日々が続いている。その夜は凍てつく空に満月が冴え冴えと浮かんでいた。 玲衣は今、…

阿部としみ
10か月前
7

0ゲートからの使者「37」

前回はこちら 先週のことだった。 瀬田さんの快挙の報告からテラスたちとこんな話となった。 「占い嫌いと言っていたのに瀬田さん、私の数秘のちょっとしたリーディング…

阿部としみ
10か月前
6

0ゲートからの使者「36」

前回はこちら 十和子 「ねぇ玲衣、聞いてるの?」 十和子からの電話に適当に相槌を打ちながら玲衣は考え事をしていた。 あと一か月足らずでテラスとスーサのレクチャー…

阿部としみ
10か月前
7
自分が自分の世界をつくっている

自分が自分の世界をつくっている

「オイ、聞いてんのか⁉ ボーっとして!」

病院の待合室、後ろの席の老夫婦のご主人の怒鳴り声に胸がざわつく。

「なんだか疲れちゃって…」
ぼそっとつぶやく奥さんに向かい、また大声で
「もっと気を張れ!」と叱責の声が続く。

真後ろで突然繰り広げられた夫婦劇場になんとも居心地悪くて、
あーあ、嫌な場所に座ってしまった…と後悔した。

が、そのときふと
これも自分の思い込みなのでは?
自分のビリーフ

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母と娘の残された時間のなかで

母と娘の残された時間のなかで

施設に入居中の母はこの夏が越せるかどうか危うい。

もう寝たきり状態で、言葉もうまくしゃべることができなくなってきている。

訪ねたときは母はすやすや眠っていた。

起こすのもしのびないので半時間ほど側で母の寝顔を見つめていた。

まるで童女のような顔で母は眠っている。
どんな夢を見ているのだろうか。

寝顔を見ているとさまざまな感情が去来する。
母とはいろいろあった。

今では母のことも自分自身

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老いの香り馥郁と

老いの香り馥郁と

部屋のどこからか甘い柑橘系の香りがしてきた。

オレンジも買っていないのに?
何か洗剤か化粧品の匂いだろうか?
私は首をかしげて家人に匂いがするか聞いてみたがわからないらしい。

翌日もそのかすかな甘い香りが鼻腔に感じられる。
でもいったい何の匂いなんだろう?

キッチンの片隅に匂いの正体がひっそり鎮座していた。

しなびれた無農薬の国産檸檬。

使いきれずにそのまま冷蔵庫にいれてあったもので

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数秘術で読み解く2024年

数秘術で読み解く2024年

衝撃的な幕開けとなった2024年。

いろいろ思うところが多く、毎年恒例のユニバーサルイヤーナンバーリーディングが遅くなりました。

あらためまして今年もどうぞよろしくお願いします。

さて、本題の前に昨年2023年の振り返りを短く。



2023年、7の年を数秘で振り返る
昨年はユニバーサルイヤーナンバー(その年の普遍的な影響力をあらわす数字)7でした。

7は隠ぺい、疑惑、暴露、

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これを味わいたくて私は生きてる

これを味わいたくて私は生きてる

久しぶりに近所の川辺を散歩。

水辺ってなんかホッコリする。

そこに集っているみんなからいいエネルギーが出てる気がする。

歩きながらいつも観察が楽しみ。

今日の第一ホッコリ発見。

おじいちゃんが川向うのベンチにいる二人のおばあちゃんたちに向かい、

「元気ですかぁ?」と呼びかけた。

顔見知りの常連さんか。
するとおばあちゃんが、

「元気で~す!今おいしいもの食べてました~」と返事。

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楽しいだけじゃダメなのか?

楽しいだけじゃダメなのか?

「アナタ! 楽しいだけじゃだめなのよ」

その言葉にずっともやもやしていた。

半年通った水彩画教室を諸事情でやめることにした。
教室のオーナーマダムにもご挨拶に行ったときのこと。
マダムはおそらくご自身も芸術関係者と思われ。

やめることを告げてお世話になりました、というと、

「あなた上手なんだからもっと上を目指さなければ」、と言われた。
実はそこをやめても同じ先生のほかの教室にも通っていたし

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小説なんて書けるかいなと思っていた

小説なんて書けるかいなと思っていた

あれは中学だったか、国語の授業で小説を書く、というのがあった。

少女漫画頭だった私は、萩尾望都先生の世界観を真似しようといさんで書き出したものの、結局最後まで仕上げることができなかった。
出来の良し悪しは置いといてみんな提出してたのにね。

想定内(笑)

タイトルだけはカッコよく、ドーバーの白い鳥、だったような(笑)
中2病すぎる(笑)

本が大好きだったので、小説は昔からよく読んでいたが、そ

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0ゲートからの使者「44」

0ゲートからの使者「44」

前回はこちら

エピローグ

いつものように6時30分にアラームがとげとげしく鳴り響き、布団からのそりと手が出て音が消された。
10分後に再び鳴り響いたスヌーズでようやく玲衣は動き出す。

いつものように洗面所に行き、洗顔をすませてからキッチンへ行く。
いつものようにコーヒーを淹れ、リビングへ移動する。

テレビをつけ、その前のソファに座ってコーヒーを飲みながら、スマホをチェックする。それが玲衣の

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0ゲートからの使者「43」

0ゲートからの使者「43」

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秋と春の間に

玲衣の夢の中に彼らが現れたのは、ちょうど春分の日。
満月が美しい夜だった。

夢の中で、月明りだけの仄暗い場所にひとりで立っていると、
「玲衣、玲衣……」
と、どこからか自分を呼ぶ声が聞こえた。

「誰か私を呼んだ?」

きょろきょろとあたりを見渡すが誰の姿もなかった。
なぜかとても懐かしい、胸の奥が熱くなるような声だった。

目を凝らすと、遠くにぼんやりと光が見え

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0ゲートからの使者「42」

0ゲートからの使者「42」

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クリスタルの守護者

朝、いつものように半分目を閉じながらベッドから起き上がった玲衣は、足を床についたとたん、イテテテと叫んだ。足も腰も打撲のような痛みがあった。

「あれ、どうしたんだろ、嫌ねぇ、まだアラサーなのにおばあさんみたい。寝違えたのかなあ」

寝ぼけ眼で腰に手を当てながらよろけつつ洗面所に行き鏡を見ると、頭髪の中にキラリと光る白いものをいく筋か発見。

「ひぇえ、ショッ

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0ゲートからの使者「41」

0ゲートからの使者「41」

前回はこちら

何人もの人が重なりあって倒れていた。
ドームの壁は熱にも風にも耐えられるものであったはずだが、空気は灼熱を帯びてきていた。
玲衣は必死で身を起こし、よろけながら前方の玉座に向かった。

私の使命
私は責任を果たさなきゃ
私はやり遂げるんだ!

うわごとのようにそうつぶやきながら膝をついて階段を這い上っているときに、玉座両側それぞれにある大きな縦長の2枚のタペストリーに気づいた。

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0ゲートからの使者「40」

0ゲートからの使者「40」

前回はこちら

コード

大きな扉が開かれ、大広間に人々がたくさん集まっているのが見えた。
皆、SF映画なのか古代ローマなのかわからないような服装をして口々に何かを大声で話していた。

前列に白く細長いテーブルが置かれ、有識者らしい人物がすでに何人か着席していた。その三席開いたところに三人は慌てて腰を下ろした。
それを待っていたかのように議長らしき男性が話し出す。

難しい議論が続き、玲衣はなんの

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0ゲートからの使者「39」

0ゲートからの使者「39」

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0ゲート

「玲衣がどうやら記憶を取り戻してきているようよ」

玲衣の無意識である夢の世界を担当しているヤンがそう告げると、スーサが静かにうなずいた。

「いよいよ、でしょうか」

「いよいよね」

テラスとスーサはお互いを見つめたままうなずきあった。



その夜、夢かうつつかわからない状態で玲衣はベッドに横になっていた。
何者かの気配がベッドサイドにやって来たのを感じた。暗

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0ゲートからの使者「38」

0ゲートからの使者「38」

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第6章 0ゲート

魂の記憶

三寒四温とは言うものの、3月に入り寒い日々が続いている。その夜は凍てつく空に満月が冴え冴えと浮かんでいた。

玲衣は今、深い眠りの中にいて、ある夢を見ていた。

待合室と思しき白い部屋の一角に何人かの人が腰かけている。自分もその中で何かを待っていた。
ある契約に基づいて何かを一緒に果たすグループらしかったが、そこにいる人たちはまるでホログラムのよう

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0ゲートからの使者「37」

0ゲートからの使者「37」

前回はこちら

先週のことだった。
瀬田さんの快挙の報告からテラスたちとこんな話となった。

「占い嫌いと言っていたのに瀬田さん、私の数秘のちょっとしたリーディングは覚えてくれていたみたいなの。それで婚活するようになって未来の旦那様に出会えたなんて、瀬田さんすごいよね」

「前にも言ったけれど、人は信じたいように信じるものよ。瀬田女史の中で、変わりたいという気持ち、今が変わるチャンスではないかと

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0ゲートからの使者「36」

0ゲートからの使者「36」

前回はこちら

十和子

「ねぇ玲衣、聞いてるの?」

十和子からの電話に適当に相槌を打ちながら玲衣は考え事をしていた。

あと一か月足らずでテラスとスーサのレクチャーが終了してしまう。
数秘術や数を通じてのこの森羅万象への理解はまだまだほんの入り口で、二人が去った後、どうしたらいいかと考えを巡らしていたのだった。

インやヤンとも夢の中でおしゃべりができなくなってしまうかもしれない。そして本当は

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